2026年01月08日

2025年 ドキュメンタリー映画ベストテン

1位から3位まであり、後は順位なし

1位『104歳、哲代さんのひとり暮らし』山本和宏監督/94分/作品賞

尾道の山あいの町にある大きな一軒家で、100歳を超えてもひとり暮らしをしている
石井哲代さん。

小学校の教員として働き、退職後は民生委員として地域に溶け込んでいる。

83歳で夫を見送ってからは、子に恵まれなかった哲代さんは、姪や近所の人たちに見守られて過ごしている。

年齢を重ねて思うようにいかないことが増えても、哲代さんは一人自由な暮らしを続けていく。

あやかりたい老後ドキュメンタリー(もう老後だけど)。大きなお声ではっきりお話できてユーモアがあって……人と付き合うのの好き、でも一人も寂しくない。

リリー・フランキーさんのナレーションが良かった。


2位『六つの顔』犬童一心監督、脚本/82分/監督賞

日本で650年以上も受け継がれてきた伝統芸能・狂言の第一人者で、芸歴90年を超えて現在もなお舞台に立ち続ける野村万作。現在93歳。

2023年には文化勲章を受章し、翌24年6月には受章記念公演を開催、ライフワークとして磨き上げてきた珠玉の狂言「川上」を上演した。

本作では、その公演が行われた日に、万作が自身の過去に対して思い浮かべる「六つの顔」をアニメーションで表現して彼の芸境に迫る。

93歳の野村万作の杖も使わず一定に速度で歩く姿に感動した。東京の坂道もリズムを変えず、す、す、と歩いていた。ゆっくりでも早くもない……このシーンだけで万作の修行の確かさ、深さが伺い知れた。

鉛筆書きのような画(アニメ)もナレーション(オダギリジョー)もよかった。

3位『佐藤忠男、映画の旅』寺崎みずほ監督/日本/98分/ナレーション賞

独学で60年にわたる評論家人生を送り、後年にはライフワークとしてアジア映画を発掘、日本に紹介した功績から、映画評論家として初めて文化功労者に選出されたことでも知られる佐藤忠男。

アジアとの映画交流や後進の育成にも尽力したが、2022年3月に91歳で逝去した。

佐藤が学長を務めた日本映画学校(現日本映画大学)の教え子だった寺崎みずほの初監督作品。

一番最初に選んだのがこれ。佐藤先生=福岡アジアフォーカス。遠くからお見受けしていて、ちょっと近寄り難いイメージだったが、このドキュメンタリーでとってもお優しい方であったと知った。

奥様に宛てたプロポーズのお手紙も公開されているが、これを読んで断れる女はいないだろうと感動した。

ミッキーは福岡の映画祭の終わりのニュースにはショックを受けたが、基を作られた佐藤先生はいかばかりだったのか、想像しきれない。



🎬『農村住宅改善』野田真吉監督/20分/1941年

1940年、民家研究の専門家でもあった建築学者の今和次郎は、「住宅は生活の容器である」という視点から、東北地方の農村住宅の実態調査を実施。本作ではその調査隊に随行し、苛酷な自然環境のなかで暮らす東北地方の民家の様子を追い、農村の生活改善の必要性を提示している。


東北の地方の農村住宅を建築家や役所が問題点を見つけながら改善していく様子を写したもの。ミッキーの生まれる前の農村住宅。間取りが映されて家事の担い手の妻が1日午前中で家の内外でどういう動きをするか、動線で示していた。

外に便所、井戸に水汲み、煮炊きはいろり……明け方4時に起きて朝ごはんを作るのに500メートル以上歩くなど、わかりやすい内容で、昔の暮らしの様子が手に取るようにわかった。


🎬『みらいのうた』エリザベス宮地監督/137分/音響賞

ロックバンド「THE YELLOW MONKEY」のボーカルの吉井和哉に、2022年より取材を開始。その数カ月後、吉井が初期の喉頭がんを患っていることがわかり、予期せぬ「未来」が描かれていく。

闘病の日々、2024年に感動的な復活を遂げた東京ドーム公演「THE YELLOW MONKEY SUPER BIG EGG 2024 “SHINE ON”」のライブパフォーマンス、その公演までの濃密な3年間を記録したドキュメンタリー。


男性歌手で好きなのは吉井さんと布施明。お二人ともビブラートのないまっすくなお声。それに感情の盛り上げ方が上手い。いつも聞き惚れている。

吉井さんの幼い時からのことが詳しく知れて嬉しかった。幸せとは言えない生い立ちかもしれないが、それ(不幸)に負けない明るさが吉井さんにあったように思う。その明るさがいろんな人を惹きつけたり「行く道」を歩ませてくれたのだと感じた。

「2年ぶりに本格的に歌った感じはどうだった?」と仲間から聞かれた吉井さん、「2年ぶりに、セ○クスしたようなヒリヒリした感じ」と言って、笑わせてくれた。


🎬『よみがえる声』朴壽南、朴麻衣監督/日本、韓国/148分/親子監督賞

1935年3月、三重県に生まれた在日朝鮮人2世の朴壽南は、1958年に起きた小松川事件の在日朝鮮人2世の少年死刑囚・李珍宇(イ・ジヌ)との往復書簡「罪と死と愛と」で注目を集め、その後も、植民地支配による強制連行や、広島と長崎で被爆した在日朝鮮人の声を掘り起こした証言集を出版。

さらにカメラを持ち1986年に朝鮮人被爆者のドキュメンタリー映画「もうひとつのヒロシマ」で初監督を務めた。

その後も『アリランのうた オキナワからの証言』『ぬちがふぅ(命果報) 玉砕場からの証言』『沈黙 立ち上がる慰安婦』といったドキュメンタリーを送り出してきた。

そんな朴壽南が約40年前から撮り続けていた16ミリフィルムを基に本作を娘と一緒に製作したドキュメンタリー。

2025年に90歳の在日朝鮮人2世の映画作家・朴壽南(パク・スナム)と娘の朴麻衣の共同監督。

90歳の酢ナムさんのお声がエネルギーに溢れていて、語られる言葉も明確。娘との喧嘩(?)で始まる撮影シーンも物おじせず、自分の想いをはっきりと言っていた。

この一本で日本と韓国にある過去の悲しい出来事のほとんどが入っていると感じた。


🎬『うしろから撮るな 俳優織本順吉の人生』中村結美監督、撮影/82分/女性監督賞

日本映画に欠かせない存在として、約70年にわたり2000本以上ものテレビドラマや映画に出演。脇役を演じ続けた織本順吉。

しかし家族とともにうまく生きられない気難しい一面もあった。

そんな父への復讐心からカメラを向けはじめた娘である中村監督は、老いて身体の自由が利かなくなり、セリフ覚えが悪くなり、感情を抑えられず妻や娘に怒鳴りつけたり、子どものように泣きわめく晩年の父の姿を、4年間にわたり撮り続けてきた。


恥ずかしいが織本順吉さんとお顔が一致しなくて、今年3月公開時に見逃していた。監督さんのお名前が女性だったので会場に入った。

お顔とお名前が一致したのはもちろんだが、70年の俳優人生だからこそ、それもほとんどが脇役だったからこその「俳優哲学」もあって満足した。

 
🎬『デリカド』カール・マルクーナス監督/アメリカ、フィリピン、イギリス、オーストラリア、香港/98分/新人監督賞

北西に南シナ海、南東はスールー海に面していているアジア屈指のリゾート地・フィリピンのパワラン島が映画の舞台。

 この島の森林の多くは手つかずの自然で、海は透明度が高く魚介類の宝庫だ。気候も温暖で世界中から観光客やダkイバーたちが押し寄せてくる。

静かで緑豊かな森に鳥のさえずりが聞こえてきて楽園そのものの情景だ。ところが森の奥からチェーンソーの音が響いてきた。 すると草陰に身を隠していた土地の男たちが、違法伐採の現場に近づき、登録されていないチェーンソーを没収。

一方、海で不審なボートを発見。魚を爆発物で一網打尽にする違法漁業を取り締まっている。

こうして島の生態系を守るのは地元の環境保護団体・パラワンNGOネットワーク(PNNI)。代表の環境弁護士ボビーは仲間たちとともに、経済発展のために見境なく島の生態系を破壊する政治家や実業家を相手に命懸けで闘い続けている。

これが初の監督作品であるジャーナリストのカール・マルクーナス氏は、この島の環境活動家が射殺された事件をきっかけに長編ドキュメンタリーを製作。

日本から遠く離れた島の自然破壊だが、決して「他人事」ではなく、危険(デリカド)は地球全体に波及していくことを教えてくれる。


🎬『僕と時々もう1人の僕 トゥレット症と生きる』柳瀬晴貴監督、撮影、ナレーション/90分

意思に反して声が出たり、体が動いてしまうチックの症状が重い「トゥレット症」はフランスの神経科医によって138年前に報告されたが、今も治療法はない。

取材の始まりは2022年2月。仕事終わりの記者の自宅に出前を運んでくれたのが番組主人公でウーバー配達員の男性患者で、アプリに送られてきたメッセージには「声が出てしまうが許してほしい」と記されていた。

取材を進めるとトゥレット症患者は全国に多くいることがわかった。 体が動いてしまい面接を突破できない就活生。 治療のために海を渡った女性など、その多くが人の目が気になって家に閉じこもっている実態も見えてきた。

治す手立てのない病と闘いながら自立を目指す若者たちを追ったドキュメンタリー。


 ミッキーのまわりの子にもチックの人がいたが、成長とともに治っていた。このドキュメンタリーを見るまで奇声

や体がチックになるのや、それをトゥレット症と言うなどは知らなかった。

子ども時代からいじめを受けたり、奇異な目で見られたりして成長した彼らも、就職、いやバイトさえもなかなか就くことができないでいる。

そんな中でも、ウーバーイーツで働く男性、ネットで自分自身を紹介したり、得意なパソコンでやっと就職が決まった方を映し出していた。


🎬『彼女が選んだ安楽死 たった独りで生き抜いた誇りとともに』 西村匡史 監督/68分

2022年、迎田良子さん(64)は、安楽死するためにスイスに渡った。パーキンソン病の彼女は死の直前、立ち会った記者に語りかけた。

「安楽死することは悲しいことではない。やり残したことは何もないし、本当に幸せな人生だった。やっと夢が叶うのよ」と。

幸せとは言えない幼少期を経て、たった独りで人生を切り拓いてきた迎田さん。難病の老後を誰かに頼って生きるのは嫌だ」という彼女は、なぜ安楽死を選んだのか……。


長い間、映画を見続けてきたが、実際の「死に際」をスクリーンで見たには初めてだ。見終わってからも(今も)なかなか平静にはなれないでいる。

内容もショックだったが、ミッキーの30代から35年間、おつきあいのあった美容院の先生が晩年にパーキーソン病で苦しんでいたこともあったのを思い出した。

迎田さんの明確な受け答えや生活の仕方を見ていると、介助者がいればなんとかやれそうなのに……と思うが彼女の強い意志、迷いのない表情などをみると、他人にはクチが挟めない「死」の覚悟を感じた。
posted by ミッキー at 08:28| Comment(0) | ベストテン | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2026年01月05日

2025年 アジア映画ベストテン

1位から3位あり、その後は順位なし

1位『年少日記』ニック・チェク監督、脚本/香港/95分/作品賞、撮影賞

高校教師のチェン(ロー・ジャンイップ)が勤める学校で、自殺をほのめかすような遺書がゴミ箱にから見つかった。

そこに書かれていた「私はどうでもいい存在だ」という言葉は、少年時代のチェンが日記につづったものと同じだった。

遺書を書いた生徒を探すなかで、チェンは自身のつらい記憶をよみがえらせていく。

厳格で怒ると暴力を振るう父のもとで育った、出来の悪い兄と優秀な弟。親の期待に応える弟とは違い、勉強もピアノもできない兄は、いつも叱られ、体罰を受けていた。


中国、韓国は日本とは比べようがないほど「教育」「学歴」熱が高い。大学名だけで国の津々浦々までレベルが知れ渡っていて、その上アメリカ留学で一層「箔」をつけて一流企業、公務員で上がり、となる。

弟くんが教師だから勝ち組だが、ゴミ箱に捨てられていたメモに兄の短い人生を重ねていくのだ。

人間の幸不幸は学歴出ないことは重々よくわかっているが、中国(香港)のこの時代に、ミッキーが子を育てていたら、綺麗事では済まされないな……と思った。

★街の風景(特に大画面)の角度が良く新鮮に感じた。


2位『来し方 行く末』リュウ・ジャイン監督、脚本/中国/119分/脚本賞、主演男優賞

大学院まで進みながら、脚本家として商業デビューが叶わなかったウェン・シャン(フー・ゴー)は、寡黙な同居人シャオイン(ウー・レイ)と暮らしながら、葬儀場での「弔辞の代筆業」のアルバイトで生計を立てていた。

丁寧な取材をして作る弔辞は評判が良く、生活も贅沢しなければ暮らしていける。

だがもうすぐ40歳のウェン・シャンは、このままで良いのかと自問自答する今日この頃だった。


余韻のある作品。邦題も良い。映画中の音楽は効果音のようにも聞こえる独特な「音」が多く興味を持った。

有名な俳優さんも出ないし、美男美女もいない。でも人間ドラマが静かに丁寧に描かれていた。

主人公は脚本家になれず食うために死んだ人の弔辞を代筆して生活している男。死んだ人の聞き取りを家族や友人に協力してもらい文を書いていくのだが、同じ家族でも見方が違ったり、文を見て「書き直して……」と詰め寄ってくる人もいる。

そんな人間模様を見ていて、自分自身を顧みることもあって、自分はこのままでいいのかと思い悩む時もある。

もっと深い彼自身の悩みなどもあるが、これ以上のことは書かないでおく。

★弔辞などありきたりの文でいいのにと思っていたミッキー。この作品で中国のお国柄などが伺えた。

3位『デビルズ・ゲーム』キム・ジェフン監督、脚本/韓国/105分/監督賞

韓国で凶悪な連続殺人事件が起こり、世間を恐怖に陥れていた。

犯人のジニョク(ドンユンが)は、好みの音楽を聴きながら無差別殺人を楽しんでいた。

一方、必死に捜査をする刑事ジェファン(オ・デファン)は、犯人とその共犯者たちを追うが、捜査中に後輩刑事を失ってしまう。

悲しみのなか、ついにジニョクを追い詰めたジェファンは格闘の末に一緒に森の中へ転がり落ちるが、病室で目を覚ますとなぜか2人の身体が入れ替わっていた。

刑事ジェファンの姿となった殺人鬼ジニョクは、体が入れ替わったなど夢にも思わないジェファンの家族を人質にとって、彼を脅迫しはじめる。

面白い設定で楽しませてくれた。親と娘が入れ替わったり、男と女が入れ替わったりするのはあったが、凶悪殺人鬼と熱血刑事が入れ替わるのは初めて。

仲間内しか知らないことや家族の思い出などを犯人は「お前の奥さんや娘の命を守るから 事細かく教えろ」と脅迫されたので、誰にも入れ替わったことを信じてもらえないもどかしさが、見ているこちらに伝わってきてイライラした。

イケメンが悪者を演じると凄みが出て、魅力が倍増。


🎬『鯨が食えた入り江』エンジェル・テン監督/台湾/101分

香港の若手人気作家のティエンユー(テレンス・ラウ)は、新作小説に盗作疑惑が持ち上がり、世間から激しいバッシングを浴びてしまう。

心に深い傷を負った彼は、かつて文通していた少年が教えてくれた天国につながるという「鯨が消えた入江」を探すため、ひとり台湾へと向かう。

台北の繁華街で酔い潰れてしまったティエンユーは、地元のチンピラであるアシャン(フェンディ・ファン)に助けられる。

ティエンユーが旅の目的を打ち明けると、「鯨が消えた入江」を知っているというアシャンは彼を連れていくと約束。バイク2人乗りで旅が始まるが……。

後からわかったことだが、これNetflixで配信されていた。きっと知っていたらNetflixで見たと思うが、台湾の海岸線や山々の緑の美しさは見ることができなかったと思う。

盗作疑惑もところどころに散りばめられた ?も後から ! に変わって、ほのぼのとした雰囲気が伝わってきた。

★『アニタ』に続き、レスリー・チャン絡みの物語が展開するテレンス・ラウ主演作。


🎬『無言の丘』ワン・トン監督/台湾/175分/シネマスコーレにて

大正末期から昭和初期の日本統治下の台湾。小作人の兄弟チュウとウェイは、両親の葬儀費用を支払うために、長期労働契約を結ばされていた。

そんなある日、ゴールドラッシュの噂を耳にした兄弟は、村をでて金瓜石(キンカセキ)へと向かう。2人は未亡人ズーの家に間借りをして、劣悪な環境の日本人が管理する鉱山で金採掘をする。

やがて兄チュウは強かに生きるズーにひかれ、弟ウェイは九份の娼館で下働きする日本人の少女・富美子に恋心を抱く。

久しぶりにシネマスコーレに行った。約3時間の映画。内容は予想通りの日本軍の横暴さと台湾の人を人とも思わない扱いの連続でげんなり。

時代の流れに翻弄される庶民の悲しみに焦点を当てられていて、その生きざまをまざまざと見せてもらった。


🎬『満ち足りた家族』ホ・ジノ監督/韓国/109分

弁護士の兄ジェワン(ソル・ギョング)と医師の弟ジェギュ(チャン・ドンゴン)。ジュワンは物質的な利益を優先し、2人目の若くて美しい妻ジス(クローディア・キム)、先妻の子娘、生まれたばかりの赤ちゃんの4人で豪華なマンションに暮らしている。

一方、常に道徳的なの弟のジェギュは年長の妻ユンギョン(キム・ヒエ)と10代の息子と暮らし、痴呆気味の兄弟の母の介護もしている。

兄弟でありながら正反対な信念を持つ2人は、それぞれの妻とともに4人で月に一回ほど高級レストランで会食をしている。

その会食の夜、思いがけない事件が発生。この出来事によって、4人は目前に迫った家族の危機に直面していく。


医者、弁護士の優秀兄弟を名優男優さんが演じている。絶対見逃せない作品。

面白い!と思うが、いつ我が身に 我が子に、降りかかって来てもおかしくない「出来事」に「あなたからどうしますか」と聞かれているようで居心地は良くなかった。

ミッキーなら秘密にしておくが…‥なんて思ってしまった。

正義を通す難しさ、嘘をつく罪悪感、今までの生活がどんなふうに変わるかの不安。どちらにしても勇気が必要なことだ。

あの家族たちはどうなったのだろう、興味ある題材だったけど後味は悪かった。


🎬『トワイライト・ウォリアーズ 決戦!九龍城砦』ソイ・チェン監督、谷垣健治アクション監督/香港/125分

1980年代。香港に密入国した青年チャン(ルイス・クー)は、黒社会のルールを拒んだために組織から目をつけられてしまう。

追い詰められた彼は運命に導かれるように、九龍城砦に逃げ込み、そこで出会った3人の仲間たちと深い友情を育んでいく。

だが、九龍城砦を巻き込む抗争は激化の一途をたどり、チャンたちはそれぞれの信念を胸に命をかけた戦いに挑んでいくが……。


久しぶりに香港映画の底力を味わった。香港映画お馴染みのスターたち、九龍城砦の再現シーンの見事さ、大写しのアクションシーンなどで食い入るように見入った。

男たちの顔や体の特徴に特色があってすんなりと話に入ることができた。


🎬『強くなるとき』ナムグン・ソン監督/韓国/100分

スミン(チェ・ソンウン)、テヒ(ヒョン・ウソク)、サラン(ハ・スコン)は済州島に旅行に行くが、サランはスーツケースをバスに忘れたり、お店で食事中に客と喧嘩をしたりして、旅の予定が狂ってしまう。そのために金欠になってミカン畑でアルバイトをする羽目になった。

スミンは、精神的に不安定なサランを心配で、同級生だったテヒとは互いに競争心を持っていた。

そんな三人がかつてK-POPアイドルだったこと、それぞれに心の傷を抱えていることが次第に明らかになっていく。

映画の舞台は済州島。この映画祭ではもう一つ済州島の作品がある。それは『済州島四・三事件 ハラン』今から約80年前の事件で島全体が戦地になったという悲しい出来事を描いている。

そして『強くなるとき』は今現在の観光地化された済州島だ。3人はアイドルの時に行けなかった修学旅行地に来たのだ。

そこで過ごす数日はみかんの収穫バイト、今撫でに溜まっていた不満や不安が少しずつ出てきて、最後には……。

いろいろな出来事の中で浮き彫りにされる韓国芸能界の危うさは、世界に通じること。

3人の人生はこれから、めげずに頑張ってと声をかけたくなった。

🎬『ハルビン』ウ・ミンホ 監督、脚本/韓国/114分

1908年、参謀中将アン・ジュングン(ヒョンビン)が率いる大韓義軍は、日本軍との戦闘で大きな勝利を収めた。

アン・ジュングンは万国公法に従い、戦争捕虜である日本陸軍少佐・森辰雄らを解放するが、これをきっかけに大韓義軍の間ではアン・ジュングンに対する疑いとともに亀裂が生じる。

1909年、アン・ジュングン、ウ・ドクスン(パク・ジョンミン)、キム・サンヒョン(チョ・ウジン)、コン夫人(チョン・ヨビン)、チェ・ジェヒョン(ユ・ジェミョン)、イ・チャンソプら、祖国奪還のために強い絆で結ばれた同志たちがウラジオストクに集まった。

彼らは伊藤博文(リリー・フランキー)がロシアとの交渉のためハルビンに向かうことを知る。一方、日本軍は大韓義軍の密偵から、ある作戦についての情報を得る。


伊藤博文が安 重根に暗殺されたことは知っていたが、詳しいことは子に映画で知ることができた。日本ではテロリスト、朝鮮、韓国では英雄である安 重根だが、公平な考えや強い意志を持つ男として描かれていた。

一方の伊藤博文のセリフにも頷ける点もあった。伊藤に仕える日本人役を韓国俳優がやっていたが、無名でもいいから日本の俳優さんを使って欲しかった。


🎬『ラブ・ライス』ホー・ミウケイ監督/香港/112分/主演女優賞

離婚目前に夫と死別し、過去に区切りをつけられずにいる52歳の婦人科医ベロニカ(サンドラ・ン)は、25歳のナースと偽りアプリに登録。

ロマンス詐欺集団が仕掛けた外国人実業家(マイケル・チョン)と出会い、恋のやりとりを重ねるが……。

香港発のロマンチックコメディ。内容が「ロマンス詐欺」だから興味津々で見てしまったが、意外やツボにハマった。
posted by ミッキー at 19:37| Comment(0) | ベストテン | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2026年01月02日

2025年洋画ベストテン

2025年 洋画ベストテン(甲乙つけ難し、順位なし)

🎬『サムシング・ハプンズ・トゥ・ミー』アントニオ・メンデス・エスパルサ監督、脚本/スペイン、ルーマニア/112分/音楽賞

病身の父親とマドリードで暮らす独身女性ルシア(マレーナ・アルテリオ)は、勤めていた会社が給料未払いで突然倒産したので、訴訟しながらタクシー運転手へと転身した。そこで彼女は個性豊かな乗客たちと出会った、

ルシアは、転職前に隣からもれてくるオペラ「トゥーランドット」のアリア「誰も寝てはならぬ」に聴きほれていた。

そのオペラが縁で謎めいた隣の男性と出会う。彼は自分を「トゥーランドット」に登場する王子になぞらえて「カラフ」と名乗り、こつ然と姿を消してしまった。

ルシアはいつか彼が自分のタクシーに乗り込んでくることを夢見るが……。

『パリタクシー』『TOKYOタクシー』の次は「マドリードタクシー」かと思いきや、痛い展開が待っているサスペンス映画。痛いのが好みのミッキーには印象に残る作品。

★主人公ルシアを演じたマレーナ・アルテリオは、本作でスペイン版アカデミー賞ともいわれるゴヤ賞で主演女優賞を受賞。歩き方がおばさん風で好感が持てた。

🎬『さよならはスローボールで』カーソン・ランド監督/アメリカ、フランス/98分

地元で長く親しまれてきた野球場「ソルジャーズ・フィールド」が、中学校建設のため取り壊されることになった。

地元の草野球チームの仲間たちは、週末ごとに通い続けた球場に別れを告げるために集まり、最後の試合を始める。

折りたたみ机と双眼鏡を持って一番いい場所に満足顔の記録係、ビールやピザを片手にヤジを飛ばす者など田舎のオヤジさんたちは個性豊かに野球を楽しんでいる。

野球のこと 何も知らないミッキーだが、これは面白かった。地元野球チームのほぼ全員が最後の1試合を思いっきり楽しく思いっきり長くやろうと、言葉がけはしないが気持ちが一致する。

まあ中には途中で帰る者、審判も4時までの約束だと言って帰ってしまうが、みんなその度にワイワイと相談する。

そんな中で、今後のこと、家族のことがチラチラとわかってくる。

場面は野球場のみ。夕暮れ、夜になっても工夫して……味わい深い面白みがあって幸せな気分になった。


🎬『アメリカッチ コウノトリと幸せな食卓』マイケル・グールジャン監督、脚本、主演/アルメニア、アメリカ/121分/主演男優賞

幼い頃にオスマン帝国のアルメニア人迫害から逃れ、一家でアメリカに移住したチャーリー(マイケル・グールジャン)は、1948年、自分のルーツを知るため祖国アルメニアを訪れる。

そこはソ連統治下でも理想の故郷のように思えたが、チャーリーは身に覚えのないスパイ容疑で逮捕・収監されてしまう。

悲嘆に暮れるなか、牢獄の小窓から近くのアパートの部屋が見えることに気づいた彼は、そこに暮らす夫婦の生活を観察しはじめる。

チャーリーは想像力を研ぎ澄ませ、まるで夫婦と同じ空間にいるかのように彼らと一緒に食事をし、歌を歌い、会話を楽しむようになる。

しかし夫婦仲がこじれて部屋には夫だけが残され、時を同じくしてチャーリーのシベリア行きも決まってしまう。

移送の日が近づく中、チャーリーは夫婦を仲直りさせる作戦に乗り出す。

見終わった後の至福感は最高❗️

コウノトリは赤ちゃん(幸せ)を運んでくる鳥と言われている。この作品の中で2回ほど、羽ばたきや鳴き声で思いがけない展開の発端になっている。

どんな境遇になろうと身の回りの小さな幸せを見つけて、心を慰めていくチャーリー。彼こそ周りの者にとって「コウノトリ」だった。


🎬『テルマがゆく! 93歳のやさしいリベンジ』ジョシュ・マーゴリン監督/アメリカ、スイス/99分/主演女優賞

夫を亡くし寂しさの中だが、気楽なひとり暮らしをする93歳のテルマ(ジューン・スキッブ)。

ある日、よく尋ねてくる仲良しの孫ダニエル(フレッド・ヘッキンジャー)が事故を起こし刑務所にいると電話が入った。

愛する孫を助けようと保釈金1万ドルを送金するが、それは典型的な詐欺の手口だった。

犯人を突き止めてお金を取り返すことを決意したテルマは、施設に入っている旧友の老人ベン(リチャード・ラウンドトゥリー)を巻き込んで、施設にあった電動スクーターに乗って、リベンジ大追跡に出る。


『ネブラスカ ふたつの心をつなぐ旅』でアカデミー助演女優賞にノミネートされたジューン・スキッブが、93歳にして初の主演。オレオレ詐欺に引っかかっても、泣き寝入りせず、立ち向かうおばあちゃんの奮闘を描いたコメディドラマ。

テルマ婆ちゃん❗️頑張った❗️

内容が込み入っていて騙す方もお見事!と言いたいぐらいだったが、テルマのは本当に単純なオレオレ詐欺。自分のお金を取り戻そうと行動するエネルギーが半端ではなく、夢中になって応援した。


🎬『リー・ミラー 彼女の瞳が映す世界』エレン・クラス監督/イギリス/116分/女性監督官

1938年、南フランスでアーティスト仲間たちと休暇を過ごしていたリー・ミラー(ケイト・ウィンスレット)は、芸術家ローランド・ペンローズ(アレクサンダー・スカルスガルド)と出会い恋に落ちる。

ほどなくして第2次世界大戦の脅威が迫り、日常のすべてが一変。写真家の仕事を得たリーは、アメリカ「LIFE」誌のフォトジャーナリスト兼編集者デイヴィッド・シャーマン(アンディ・サムバーグ)とチームを組む。

1945年、リーは従軍記者兼写真家として次々とスクープをつかみ、ヒトラーが自死した当日、ミュンヘンにあるヒトラーのアパートの浴室で自らのポートレイトを撮影して戦争の終わりを伝える。


トップモデルから20世紀を代表する報道写真家へと転身した実在の女性リー・ミラーの数奇な人生を映画化。

『エターナル・サンシャイン』の撮影監督
エレン・クラスの初長編映画監督作品。

ウィキペディアで調べて、リー・ミラーの実像を見た。すごい美女だった。行動力も即座の機転も、時代を読む力も備わった女性報道カメラマンということがわかった。

終盤にいくに従って映画に旨みが増していき、映画チラシの写真にたどり着く……あの場所で裸になって写真を撮らすなど、並の女性ではない。ゾクゾクした。


🎬『KIDDO キドー』ザラ・ドビンガー監督、脚本/オランダ/91分/脚本賞//

オランダの児童養護施設で暮らす11歳の少女ルー(ローザ・ファン・レーウェン)に、離ればなれになっていた母カリーナ(フリーダ・バーンハード)から突然の連絡が入る。

自分はハリウッドスターだというカリーナは、喜ぶルーを無断で施設から連れ出し、ポーランドに住むおばあちゃんのところへ行くと言う。

カリーナにはルーとずっと一緒に暮らすための、ある計画があった。

そんな母の型破りな言動に戸惑いながらも、一緒にいたい一心で、母に着いていくルーだったが……。

いい映画だった。終わりは幸せなものではなかったけど、これで良いんだと納得した。もう一本見る予定だったけどやめて家まで「あれからどうするのかな」と考えながら歩いた。

常識なしのいい加減な母親(でも行動力だけはある)、無断で施設を抜け出してきてその事が頭から離れない女の子だが、お互いに強く強く愛していることがわかる。

2人の1週間ぐらいの濃密な思い出が「宝物」になるような気がする。


🎬『ゲッベルス ヒトラーをプロデュースした男』ヨアヒム・A・ラング監督、脚本/ドイツ、スロバキア/128分/作品賞

1933年のヒトラー首相就任から1945年にヒトラー(フリッツ・カール)が自死刷るまでの間、宣伝大臣として、国民を扇動してきたヨーゼフ・ゲッベルス(のロベルト・シュタットローバー)。

彼は初め平和を強調していたが、ユダヤ人の一掃と侵略戦争へと突き進もうとしていたヒトラーから激しく批判され、ゲッベルスは信頼を失う。

愛人との関係も断ち切られ、自分の地位を回復させるため、ヒトラーが望む反ユダヤ映画の製作、大衆を扇動する演説、綿密に計画された戦勝パレードを次々と企画。

国民の熱狂とヒトラーからの信頼を勝ち取るゲッベルスは、独ソ戦でヒトラーの戦争は本格化し、ユダヤ人大量虐殺はピークに達する。

スターリングラード敗戦後、ゲッベルスは国民の戦争参加をあおるが、しかし、状況がますます絶望的になっていく……。

2018年に公開されたオーストリアのドキュメンタリー映画『ゲッベルスと私』を思い出した。

第二次世界大戦中の1942年から終戦までの3年間を、ナチス宣伝大臣ヨーゼフ・ゲッベルスの秘書として働いていた女性で103歳。

彼女の見たゲッベルスは「どこから見ても完璧な紳士で、物腰も穏やかなものだったが、一旦、演説をすると途端に何百、何千人の心をとらえる力があった」と語っていた。

その時に感じたゲッベルスの印象と今回の映画の印象にかなりの隔たりがあった。

置かれた立場によっての違いはあると思うが……。

ヒトラーの印象も変わった。ゲッベルス夫婦には宮お互いに浮気相手がいたが、離婚させては国民の手前まずいと思ってか気を使っていたし、マグダ夫人(フランツィスカ・ワイズ)には特に敬意を持って接していた。

最期の決断は彼自身の覚悟の選択であった。わけもわからない罪にない子どもらの映像(当時のフィルムだったと思う)が可哀想でならなかった。

★2024年ミュンヘン映画祭で観客賞を受賞


🎬『エミリア・ペレス』ジャック・オーディアール監督、製作、脚本/フランス/133分/メイキャップ賞、ゾーイ・サルダナに助演女優賞

メキシコシティの若き女性弁護士リタ(ゾーイ・サルダナ)は、麻薬カルテルの!ボスであるマニタス(カルラ・ソフィア・ガスコン)に拉致されてアジトに連れて行かれ「女性としての新たな人生を用意してほしい」という極秘の依頼をお金の糸目をつけない条件を提示されてやむなく承諾する。

リタは完璧な計画を立て、マニタスが性別適合手術を受けるにあたって生じる、さまざまな問題を解決して、マニタスは無事に過去を捨てて姿を消すことに成功する。

それから4年後、イギリスで新たな人生を歩んでいたリタの前に、エミリア・ペレスという女性として生きるマニタスが現れるが……。

★カンヌ国際映画祭ではアドリアーナ・パス、ゾーイ・サルダナ、カルラ・ソフィア・ガスコン、セレーナ・ゴメスの4人が女優賞を受賞。特にエミリア・ペレス/マニタス役を演じたカルラ・ソフィア・ガスコンは、カンヌ国際映画祭において初めてトランスジェンダー俳優として女優賞を受賞した。


🎬『ジェリーの災難』ロー・チェン監督/アメリカ/75分

長年アメリカで暮らしてきた69歳の中国人男性ジェリーは、妻と離婚した後に、定年退職。3人の息子たちとも離れて、独り暮らしを送っていた。

そんなある日、彼のもとに中国警察から電話がきて、自分が国際的なマネーロンダリング事件の容疑者になっていると告げられる。ジェリーがフロリダに持つ銀行口座を通して、128万ドルが違法に移動されているというのだ。

逮捕して中国に強制送還すると言われたジェリーは、中国警察のスパイとして捜査に協力することにした。

その後、数週間にわたり、銀行を監視して写真を撮ったり、極秘の送金をしたり、さらには隠しマイクを着けて窓口係を探ったりと、中国警察の指示通りに捜査を手伝うジェリーだったが……。

定真面目に慎ましく過ごしてきた男性が1本の電話で、スパイに仕立てあげられ、違法行為に加担させられた実在の事件を、被害者本人であるジェリー・シューが自ら脚本・主演を務めて映画化した。

自分は絶対、詐欺には引っかからないと思っている人に是非見ていただきたい。ミッキーの知人も騙されそうになった人がいて、10円でも損するとぐちぐち言うぐらい慎ましく暮らしているのに、まんまと騙される寸前で助かった。

この映画に出てくる詐欺グループのやり方がお見事としか言えないやり方。改めて詐欺に注意と自分にいい聞かせた。


🎬『Playground 校庭』ローラ・ワンデル監督、脚本/ベルギー/72分/新人監督官、マヤ・バンダービークに子役グランプリ

父子家庭で育つ7歳の内気な少女ノラ(マヤ・バンダービーク)は3歳上の兄アベル(ガンター・デュレ)が通う小学校に入学する。

なかなか友だちができなかったが、やがて同じクラスの女の子2人と仲良くなったノラは、ある日、兄が大柄な少年にいじめられている現場を目撃しショックを受ける。

ノラは大好きな兄を助けたいと願うが、兄から拒絶されてしまう。

その後もいじめは繰り返され、一方的にやられっぱなしの兄の気持ちを理解できないノラは……。

ノラを演じたマヤ・バンダービークちゃん名演技で出ずっぱり❗️スクリーンにはノラの大写しがなん度も出てくるが物怖じしない表情に圧倒された。

小さな学校を舞台に子どもたちの世界を「駆け引き」なしで正直に描き切っていた。。

★監督は、これが長編デビューとなるベルギーの新鋭ローラ・ワンデル。
★第74回(2021)カンヌ国際映画祭で国際批評家連盟賞を 受賞
posted by ミッキー at 21:11| Comment(0) | ベストテン | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする