1933年のヒトラー首相就任から1945年にヒトラー(フリッツ・カール)が自死刷るまでの間、宣伝大臣として、国民を扇動してきたヨーゼフ・ゲッベルス(のロベルト・シュタットローバー)。
彼は初め平和を強調していたが、ユダヤ人の一掃と侵略戦争へと突き進もうとしていたヒトラーから激しく批判され、ゲッベルスは信頼を失う。
愛人との関係も断ち切られ、自分の地位を回復させるため、ヒトラーが望む反ユダヤ映画の製作、大衆を扇動する演説、綿密に計画された戦勝パレードを次々と企画。
国民の熱狂とヒトラーからの信頼を勝ち取るゲッベルスは、独ソ戦でヒトラーの戦争は本格化し、ユダヤ人大量虐殺はピークに達する。
スターリングラード敗戦後、ゲッベルスは国民の戦争参加をあおるが、しかし、状況がますます絶望的になっていく……。

2018年に公開されたオーストリアのドキュメンタリー映画『ゲッベルスと私』を思い出した。
第二次世界大戦中の1942年から終戦までの3年間を、ナチス宣伝大臣ヨーゼフ・ゲッベルスの秘書として働いていた女性で103歳。
彼女の見たゲッベルスは「どこから見ても完璧な紳士で、物腰も穏やかなものだったが、一旦、演説をすると途端に何百、何千人の心をとらえる力があった」と語っていた。
その時に感じたゲッベルスの印象と今回の映画の印象にかなりの隔たりがあった。
置かれた立場によっての違いはあると思うが……。
ヒトラーの印象も変わった。ゲッベルス夫婦には宮お互いに浮気相手がいたが、離婚させては国民の手前まずいと思ってか気を使っていたし、マグダ夫人(フランツィスカ・ワイズ)には特に敬意を持って接していた。
最期の決断は彼自身の覚悟の選択であった。わけもわからない罪にない子どもらの映像(当時のフィルムだったと思う)が可哀想でならなかった。
★2024年ミュンヘン映画祭で観客賞を受賞。