2024年01月02日

2023年 洋画ベストテン

元旦は東中野の娘と大須の『路地裏のマタハリ』さんに遅いランチを食べに行ってから、センチュリーシネマで『欲望の翼』を観に行った。最近になってレスリー・チャンのファンになった娘もたっての希望で行った。

随分前に観た作品だったが、思い出すシーンが多く、改めて味わい深い作品と感じた。娘はレスリー・チャンの横顔がステキだった…‥と帰り道に何回も言っていた。

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洋画

1位

🎬『生きる LIVING』オリバー・ハーマナス監督/イギリス/103分

1953年、第2次世界大戦後のロンドン。仕事一筋に生きてきた公務員ウィリアムズは、自分の人生を空虚で無意味なものと感じていた。

そんなある日、彼はガンに冒されていることがわかり、医師から余命半年と宣告される。手遅れになる前に充実した人生を手に入れたいと考えたウィリアムズは、仕事を放棄し、海辺のリゾート地で酒を飲んで馬鹿騒ぎするも満たされない。ロンドンへ戻った彼はかつての部下マーガレットと偶然に再会し、バイタリティに溢れる彼女と過ごす中で、自分も新しい一歩を踏み出すことを決意するが……。

黒澤明監督の名作映画「生きる」を、ノーベル賞作家カズオ・イシグロの脚本によりイギリスでリメイクしたヒューマンドラマ。主演はビル・ナイ。マーガレット(日本版では小田切みき)を演じるエイミー・ルー・ウッドが秀逸!

★ビル・ナイに主演男優賞
★エイミー・ルー・ウッドに助演女優賞


2位

🎬『6月0日 アイヒマンが処刑された日』ジェイク・パルトロウ監督、脚本/イスラエル、アメリカ/105分

1961年。ナチス・ドイツの戦争犯罪人であるアドルフ・アイヒマンに死刑の判決が下された。リビアから一家でイスラエルに移民してきた少年ダヴィッド(ノアム・オヴァディア)は、授業中に、ラジオから流れるそのニュースに聞き入る先生や同級生たちを、不思議そうにただ見つめているだけだった。

放課後、ダヴィッドは父に連れられて中規模の鉄工所に連れて行かれた。ゼブコ社長(ツァヒ・グラッド)が狭い煙突型の炉の掃除ができる少年を探していたのだ。貧しい父のために熱心に働くダヴィッドだったが、社長室にあった金の懐中時計を盗んでしまう。それは社長がイスラエル独立闘争で手に入れた大切な戦利品だった。

そんなダヴィッドだったが機転がきき、すばしっこいので社長に気に入ってもらい、学校より鉄工所に入り浸るようになった。

鉄工所には、左腕に囚人番号の刺青が残る板金工のヤネク(アミ・スモラチク)、技術者のエズラ、鶏型のキャンディがトレードマークのココリコたちが、ダヴィドをかわいがってくれた。

そんな時、ゼブコの戦友で刑務官のハイム(ヨアブ・レビ)が、極秘のプロジェクトを持ち込んできた。アウシュビッツで使われたトプフ商会の小型焼却炉。燃やすのはアイヒマン。工員たちに動揺が広がって……。

過去に『オペレーション・フィナーレ』『アイヒマンを追え! ナチスがもっとも畏れた男』があったが、視点を変えて描かれていた。

題名の6月0日とは 5月31日の真夜中で、6月1日になろうとする その瞬間に処刑されたこと。

★作品賞 


3位

🎬『キリング・オブ・ケネス・チェンバレン』デビッド・ミデル監督、脚本/アメリカ/83分

2011年11月19日、早朝のニューヨークの下町。心臓疾患と双極性障害を患うケネス・チェンバレン(フランキー・フェイソン)は、寝ている時に医療用の通報装置を誤作動させてしまった。

医療センターから機器を通じて、異常がないから確認してきたが、起きたばかりの頭で的確な返答ができなかったので、センターが警察に連絡。すぐに安否確認にやって来た地元の3人の警官に、ケネスはドア越しに通報は間違いだと伝えるが信じてもらえなかった。


最初は普通に対応していた警官たちは、確認するためにドアを開けるのを絶対いやだと言い張るケネスに不信感を募らせて、次第に威圧的な態度や差別用語を口走っていく。

無実の老黒人が白人警官に殺害されるまでの90分間を、リアルタイムで描かれている。もちろん実話。

なかなかドアを開けて確認させないのを「悪事をやってる」「他に誰かいる」などと思い込んだ警官が執拗に鉄の玄関ドアを叩きまくる。男の元には家族から電話も入っていて近くに住む姪がアパートまでくるが、どんなに説明してもドアのそばにも来させない警官たち。

事件後、有罪判決にはならなかったらしいが、それなら今でもニューヨーク州の警官をしているのか。

★脚本賞


🎬『対峙』フラン・クランツ監督、脚本/アメリカ/111分

アメリカのとある高校で生徒による銃乱射事件が発生し、多数の同級生が亡くなり、実行犯の少年も校内で自ら命を絶つ。

6年後、事件で息子を殺されたペリー夫妻(ジェイソン・アイザックス、マーサ・プリンプトン)はいまだにその死を受け入れられず、事件の背景に何があったのか知りたいという思いを募らせていた。そんな時、二人はセラピストの勧めで、事件を起こした加害者の両親(リード・バーニ アン・ダウド)と対面することになって……。

最初の話し合いの部屋をセッティングしている人が落ち着かない様子だった。あまりこのシーンは必要でないと思ったが後からとてもいい始まりだったと感じた。

加害者、被害者も気持ち、6年の月日でどんな生活があったのか、どんな思いで過ごしてきたのか、そんなことが対話の中で浮かんできた。一言ひと言を「相手を傷つけないように、労わるように」発していくが、燻っていた怒りが時々抑えきれなくなる瞬間もあった。

6年の月日は当事者以外は「忘れてしまう」頃、だがこの2組のご夫婦は、夫婦という形態が変わっても、生活が変わっても、ずっと6年、同じ繰り返しの日々だったろう。夫婦のあり方を問うているような面が強く感じられた。

俳優である監督さんが脚本も手がけているが、初監督作品の見事な会話劇に脱帽した。4人の俳優さんも見事だった。

★新人監督賞


🎬『ソフト/クワイエット』ベス・デ・アラウージョ監督、脚本/アメリカ/92分

郊外の幼稚園に勤めるエミリー(ステファニー・エステス)は「アーリア人団結をめざす娘たち」という白人至上主義グループを結成。教会の談話室で開かれた初会合には、多文化主義や多様性を重んじる風潮に不満を感じている6人の女性が集まった。

日頃の怒りや鬱憤をそれぞれ経験談を語り盛りあがった彼女たちだったが、教会の牧師に「そんな話題なら即、出て行ってほしい」と言われ、急遽、2次会をエミリーの家にした。

その途中に立ち寄った食料品店でアジア系の姉妹と口論になってしまう。腹を立てたエミリーたちは、悪戯半分で姉妹の家を荒らしに行くが……。

マイノリティへの偏見を持つ白人女性たちがあるトラブルをきっかけに取り返しのつかない事態になって行く、「全編ワンショット&リアルタイム進行」と描いている。

この6人は中流以下の貧しい白人たち。方やアジア系の姉妹が住んでいるところは一軒家で高級とまではいかないが彼女たちよりうんといい家で、ピアノや電気製品が揃っている。

「パスポートを無くせば、あいつらは困るから、それを探せ」とばかりに、家中をぐちゃぐちゃに……、アホな女たちだ。1人ひとりならできないが団結すると歯止めが効かない。それからの顛末は書かないでおこう。


🎬『それでも私は生きていく』ミア・ハンセン=ラブ監督、脚本/ フランス、イギリス、ドイツ/112分

シングルマザーのサンドラ(レア・セドゥ)は、同時通訳の仕事をしながら8歳の娘とパリの小さなアパートで暮らしている。サンドラの実父ゲオルグ(パスカル・グレゴリー)はかつては哲学教師として生徒たちから尊敬されていたが、現在は病によって視力を失い、記憶も失いつつあった。

サンドラは母フランソワーズ(ニコール・ガルシア)と協力して父の介護をしていたが、父の変化を目前にして無力感にさいなまれていた。

仕事と子育てと介護に追われ、自分のことは後回しにしてきた彼女だったが、旧友クレマン(メルビル・プポー)と再会し恋に落ちるが……。

『未来よ こんにちは』や『ベルイマン島にて』のミア・ハンセン=ラブ監督が、父の病への悲しみと新たな恋への喜びという相反する感情に直面したシングルマザーの心の動きを、自身の経験を基に描いた

レア・セドゥの腰からお尻、太もものたっぷりした身体の線が目に焼き付いて離れない。服を来ている時はそう感じなかったが、子どもを一人か二人産んだような色気のある線だった。

ボケが進んだ父親は母親とは離婚している。父親には愛人がいて、愛人が世話しにくると、娘が行って世話するときには見せない嬉しがりようで落ち込んだり、クレマンが妻と自分の間を行ったり来たりする苛立ちを「自分の中でおさめよう」「大人の判断をしよう」と気持ちを沈めている様子を見事に演じていた。

レア・セドゥに主演女優賞


 🎬『エリザベート 1878』マリー・クロイツァー監督、脚本/オーストリア、ルクセンブルク、ドイツ、フランス/114分

16歳でオーストリア皇妃となりヨーロッパ宮廷一の美貌と言われていたエリザベート(ビッキー・クリープス)は、1877年のクリスマス・イヴで40歳の誕生日を迎えた。

ヨーロッパ宮廷の美しい皇妃のイメージを保つために身体をコルセットでキツく締めたり、体重を気にかけたりして民衆の目を気にしていた。形式的な公務にますます嫌気を覚えていた。

そんな気持ちを紛らわすように、イングランドやバイエルンを旅し、かつての恋人や古い友人を訪ねていく中で、誇張された自身のイメージに反抗し、誇りを取り戻すために、ある計画を思いつく……。

皇妃エリザベートのことはいろいろいろな説があって興味深々だった。この作品では大胆な行動の女性としての部分と、若さ、美貌の衰えを我が身に感じて不安になる両面が、女優ビッキー・クリープスが見事に演じていた。最後の決断は意外なもので打ちのめされたが、あのシーンは忘れられない映像だった。

★時代検証(室内装飾、小物等々)賞


🎬『ロスト・キング 500年越しの運命』スティーブン・フリアーズ監督/イギリス/108分

フィリッパ・ラングレー(サリー・ホーキンス)は職場で上司から不平等な評価を受けるが、別居中の夫(スティーブ・クーガン」からは、生活費のため仕事を続けるように言われてしまう。

そんなある日、息子の付き添いでシェイクスピア劇「リチャード三世」を観た彼女は、悪名高きリチャード3世も実際は自分と同じように、不当に扱われてきたのではないか……と疑問を抱き始めた。

それがきっかけになって歴史本を何冊も買ったり、リチャード3世同好会に入ったりずんずんとのめり込んで行った。

1485年に死亡したリチャード3世の遺骨は近くの川に投げ込まれたと長らく考えられてきたが、フィリッパは彼の汚名をそそぐべく遺骨探しを開始するが……。


500年にわたり行方不明だった英国王リチャード3世の遺骨発見した女性の実話を基にしたヒューマンドラマ。

これが実話とは、3回ほどいただいた資料を確かめた。それもそう遠い昔の話ではない。約10年前だ。英国王リチャード3世のことはなんの知識もないので調べてみた。遺骨発見のニュースと共にたくさんのことがネットに載っていた。発見時のニュースも知らなかった。

3度の食事を2度にしても観ていただきたい作品だ。

★編集賞


🎬『ポトフ 美食家と料理人』トラン・アン・ユン監督、脚本/フランス/136分

19世紀末、フランスの片田舎。「食」を芸術の極みにまで高めた美食家ドダン(ブノワ・マジメル)と、彼が考えたメニューを完璧に再現することが出来る料理人ウージェニー(ジュリエット・ビノシュ)は20年以上もお互いに愛し合いながらも食のパートナーとして過ごしていた。料理人として自立すると共に自由を好むウージェニーは、ドダンの求婚を断り続けていた。

2人が生み出した料理は、上流階級の人々を驚かせ、その噂はヨーロッパ各国にまで広がっていく。

そんなある日、ユーラシア皇太子から晩餐会に招待されたドダンは、豪華なだけで論理もテーマもない大量の料理にうんざりする。

彼は最もシンプルな料理「ポトフ」で皇太子を招待したいとウージェニーに打ち明けるが、突然ウージェニーが倒れてしまう。ドダンはすべて自分の手で作った料理で、彼女を元気にしようとするが……。

『青いパパイヤの香り』『シクロ』 『夏至』 『ノルウェイの森』 のトラン・アン・ユン監督による新作。第76回カンヌ国際映画祭 最優秀監督賞受賞作。

井戸で水を汲み上げていた時代に、使った鍋や食器などの洗い物など、後片付けの様子が知りたかった。

★監督賞


🎬『ヨーロッパ新世紀』クリスティアン・ムンジウ監督、脚本/ルーマニア、フランス、ベルギー/127分

出稼ぎ先のドイツで暴力事件を起こして、連絡もしないで突然故郷のトランシルバニアの村に帰って来たマティアス(マリン・グリゴーレ)。しかし妻・アナ(マクリーナ・バルラデアヌ)は嬉しい顔はしない。関係は冷えきっているようだ。

森で何かひどく驚くものを見たせいで口がきけなくなった小学生の息子や、病身の父との関係も上手くいかない彼は、元恋人シーラ(ユディット・スターテ)とよりを戻し、心の安らぎを求めるマティアスだった。

シーラが責任者として務める地元の食品工場が、人手不足から外国人労働者を雇ったことがきっかけで、よそ者を排除する村人たちとの間に不穏な空気が流れてきて……。

『4ヶ月、3週と2日』『汚れなき祈り』の監督さん。トランシルバニアでも人手不足で困っているのに働き手はドイツに出稼ぎに行ってるという。賃金が安いのか、ろくな仕事がないのかわからないが『アジア人がこねたパンなど食べたくない」と言って不買い運動までしている。

寂しい深い森を8歳ほどの男の子一人で登校させてたなど日本では考えられない。でも映画としては人間の善悪両面が正直に出ていて、さすがのムンジウ監督作品。

トランシルバニアはラテン語で「森の彼方にある国」という意味で、この映画にも深い森(通学路にもなっている)が出てくる。

★口が聞けなくなった男の子(どこにも名前が出ていない)に子役賞
★母親ユディット・スターテに助演女優賞
















posted by ミッキー at 23:19| Comment(0) | ベストテン | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2024年01月01日

新年のご挨拶と 2023年 日本映画ベストテン

皆さまへ

あけましておめでとうございます。
本年もどうぞよろしくお付き合いくださいませ。去年最後の映画は523本目『ファースト・カウ』でした。この作品は遅れて入ると意味不明作品になってしまいます。居眠りしそうで「できない」映画でした。ミッキーは今年で78歳にな気だけは若いつもりでいても寄る年波にはかないません。身体に気を配りながら、映画と共に過ごして行きます。

2023年は523 本の映画を、劇場、試写室、オンライン試写、映画祭等々(Netflix、DVDは含まれていません)を観た。

 
日本映画ベストテン(1位から3位あり、他は順位なし)

1位

🎬『宇宙人のあいつ』飯塚健監督、脚本/117分
 
両親を早くに亡くした真田家兄妹の長男・夢二(日村勇紀/バナナマン)は親から受け継いだ焼肉屋を営んでいる。安価で美味しいと評判の店だ。長女・想乃(伊藤沙莉)はお店を手伝いながら、昼は分別ゴミの仕事をしている。次男・日出男(中村倫也)は兄の片腕として店を手伝っていて、イケメンの彼は女性客に大人気。三男・詩文(柄本時生)はガソリンスタンドで働いている。兄妹仲も良くて働き者。毎朝のご飯は納豆、目玉焼きが定番だ。
 
そんなある日、真田家で緊急家族会議が開かれた。次男の日出男が突然「僕は土星から来た宇宙人で、後3日で帰ります」と告白する。そのことを前もって相談されていた夢二以外は、冗談が過ぎると大笑いするが……。


とにかく面白い❗️最後の1秒まで楽しませてもらった。

監督、脚本は『荒川アンダー ザ ブリッジ THE MOVIE』『笑う招き猫』『榎田貿易堂』の飯塚健。甘辛・青春物語が得意な監督さんだ。今作も、4人それぞれの悩みや兄妹を思いやる気持ちがベースになっている。 
 
宇宙人と人間の「家族」形態の違い、時間の経ち方、身体の特徴、兄妹と日出男の声が違いなど、いろんな面で宇宙人・日出男の謎に迫っている。井上和香、設楽統(バナナマン)、山里亮太らの「声」の出演もあって、見事なオチをつけて楽しませてくれる。 

★監督賞
★『突撃!隣のUFO』河崎実監督、脚本の同じ
UFOものとしてオススメ。コメディ要素だけでなくUFO専門家?のお話も聞けて勉強にもなった。

2位

🎬『せかいのおきく』阪本順治監督、脚本/89分


江戸時代末期、武家の家柄の出であるおきく(黒木華)は、今は長屋に住み、寺小屋を開き子どもらに読み書きを教えていた。

そんなある日、厠(かわや=便所)のひさしの下で雨宿りをしていた時、紙くず拾いの中次(寛一郎)と下肥買いの矢亮(池松壮亮)に出会う。3人は次第に親しくなっていくが、ある日、父親絡みの殺傷事件に巻き込まれ、おきくはのどを切られ声を失ってしまう。


『一度も撃ってません』『冬薔薇(ふゆそうび)』などの阪本順治監督が、黒木華を主演にしたモノクロ青春時代劇。こんな時代劇初めて。

江戸時代の肥え汲み作業の様子は想像以上に汚いが、その汚さは「人間が生きている」そのもので、それを生業としている男は達観した面持ちで汗を流して働いていた。

3人は「世界」という言葉も、その意味することも知らず、自分たちの生きる「世界」でめげずに真っ当に生きている姿が眩しかった。

★黒木華に主演女優賞
★脚本賞

★撮影賞


3位

🎬『大名倒産』前田哲監督/120分



江戸時代。越後・丹生山藩の役人の息子として平穏に暮らしていた間垣小四郎(神木隆之介)は、ある日突然、自分が徳川家康の血を引く丹生山藩主の跡継ぎだと知らされる。しかも実父である一狐斎(佐藤浩市)は、小四郎に難題山積みの藩を任せて隠居してしまう。

藩の貧しい役人の息子から、藩主と大出世したのもつかの間、丹生山藩が25万両(今の価値で約100億円)もの借金を抱えていることが判明。頭を抱える小四郎に、一狐斎は「大名倒産」を命じた。それは借金の返済日に藩の倒産を宣言して踏み倒すという案だったが、一狐斎は小四郎に全ての責任を押しつけて切腹させようとしていた。

生活や会社やお店の立て直しにも通じる創意工夫が盛りだくさんで必見内容。暗くならず、笑いを含めて「悪巧み連中」を諌めていく。松山ケンイチ、桜田通が個性的な兄弟を演じていた。

★神木隆之介に主演男優賞、松山ケンイチに助演男優賞


🎬『あつい胸さわぎ』まつむらしんご監督/93分

とある港町で暮らす千夏(吉田 美月喜)と母・昭子(常盤 貴子)は二人仲良く平穏に暮らしていた。念願の芸大に合格した千夏は創作課題「初恋の思い出」の事で頭を悩ませていた。そんな時、初恋の相手である川柳光輝(奥平 大兼)と再会したことで浮き立つ想いを感じていた。

一方、母の昭子も職場に転任してきた木村 (三浦 誠己)の人柄に惹かれはじめていて、同僚の花内 透子(前田 敦子)にからかわれていた。そんなある日、千夏に乳がん検診の再検査の通知がきて……。

胸も、恋で高なるのと、乳がんでは、天と地の差。こんな可愛い女の子が可哀想……。病のテーマなら山(?)ほどある。正直、期待せずに観たが、女3人(常盤貴子、前田敦子、吉田美月喜)の相性がとっても良かった。脚本が高橋泉さんと知ってなるほどと思った。

最後に画面と合わせて流れる歌も作品にピッタリ。監督さんはセンスがいい❗️

★作品賞


🎬『㊙色情めす市場 デジタル復元版』田中登監督/84分/1974年

大阪の釜ヶ崎にあるドヤ街で暮らす19歳のトメ(芹明香)は精薄の弟(夢村四郎)と2人で安アパートで暮らして、トメの売春で生活している。母のよね(花柳幻舟)も40歳になるが今も現役の売春婦だ。

トメは小料理屋の二階で女将の采配下で売春をしていたが、反抗心からそこをやめて娼婦として街角に立っていた。そこによねの情夫が現れ、トメの客になった。しばらくしてよねは妊娠したとトメに泣きついてきたが……。

第78回ベネチア国際映画祭のクラシック部門(ベニス・クラシックス)に選出された作品。ベニス・クラシックスで日活作品は初めて。日活ロマンポルノ作品の世界三大映画祭での選出も初。

どのシーンをとっても絵になっていて、当時のドヤ街のどろどろとした空気感に圧倒された。女優陣のねっとりした魅力(芹明香のエロ、宮下順子の薄幸、花柳幻舟の生々しさ)も溢れんばかりだった。

最後の通天閣から見下ろしたドヤ街のシーン、そこで映された思いがけない終盤の出来事にゾッとした。


🎬『渇水』高橋正弥監督/100分

市の水道局に勤める岩切俊作(生田斗真)は、水道料金を長期滞納している家庭や店舗を回り、料金徴収したり、それでも入金がなければ水道を停止する「停水執行」する部門で仕事をしている。

日照りが続く真夏。市内には給水制限が発令される中、新米の同僚木田(磯村勇斗)と一緒に、長期滞納している家庭を訪問して、嫌味を言われたり、無視されたりする日々を送る。

そんなある日、業務中で育児放棄を受けている幼い姉妹と出会った彼は……。

原作は作家・河林満の「渇水」。心の渇きにもがく水道局職員の男が、幼い姉妹との交流を通して、生きる希望を取り戻していくドラマ。監督は岩井俊二監督作や宮藤官九郎監督作で助監督をつとめた新人。

生田斗真ってこんな方だった? 普通の公務員でどちらかと言うと「もっさり」していて「乾いている」「もがいている」様子を見事に体現していた。この作品で人気俳優さんを見直した。

水道料未納で子らを育児放棄した母親の門脇麦、その子どもたちも切実に演じていた。日本の今、を「渇水」を通して描いている力作。

★新人監督賞


🎬『炎上する君』ふくだももこ監督、脚本/42分

高円寺で音楽に合わせて切り揃えた「脇毛」を見せながら一心に踊る2人の女性・梨田と浜中。唯一無二の親友である2人は「誰のために、何のために、脇毛を剃るの?」と今や常識となっている女性への抑圧に怒って叫んでいる。

その動画などで注目を集めていくが、そこに膝から下がボウボウと燃える青年が同じ高円寺に出没する噂を聞いた2人は……。

笑った!笑った!ふくだももこ監督 ありがとう。ももこ監督と言えば『こんぷれっくす×コンプレックス』(2015年 24分 アニメ)を思い出す。これも「脇毛」がテーマ。

★女性監督賞

🎬『99%、いつも曇り』瑚海みどり監督、脚本、主演/日本/110分

正義感が強くおしゃべりで潔癖症の45歳の主婦・楠木一葉(瑚海みどり)は、母親の一周忌で叔父から子どもを作らないのかと聞かれて、気持ちが不安定になった。生理も途切れ、子どもはもう無理、作れないと大声で返答するが、夫の大地(二階堂智)は子どもを欲しがっている様子を垣間見て複雑な心境になってしまう。

15年前に流産した経験があり、子作りに前向きになれない彼女は、自分がアスペルガーであることに悩んでいて、いつも行く食事処のママに里親制度の話を教えてもらってから、そのことで頭がいっぱいになって……。

監督さん自身はアスペルガーの傾向があり、「普通」という言葉にとても敏感な一葉を包容力のある夫が支えていく夫婦愛の物語。

夫だって会社では若いものに出し抜かれたり、仕事ミスの尻拭いをさせられたりと思うようにいかないが、波風を立てずに自分にふられた仕事をこなしている。普通だったら(普通というと言葉は禁句でも、よく使う)妻に愚痴るが、一葉には言わない。言えないのではなく、一葉が一葉ゆえに「我慢」できているのでは、と感じた。

側から見れば、夫が一葉を守っているように見えるが、羽目を外さず生きていけるのは妻がいるから……と思えてきた。

最後に流れる歌もとてもいい曲で監督さんのお声ではないかなと思った。残りの1%は「夫婦愛で快晴❗️」 

★歌曲賞

🎬『こんにちは、母さん』山田洋次監督、脚本/110分

大会社の人事部長である神崎昭夫(大泉洋)は、職場では人員整理で神経をすり減らし、家では妻と離婚、大学生の娘(永野芽郁)との関係に頭を抱える日を送っていた。そんなある日、母・福江(吉永小百合)が一人で暮らす東京下町の実家を久しぶりに訪れた彼は、微妙ながら母の様子が変化していることに気づく。

山田監督と吉永小百合コンビ作品は『母べえ』『母と暮らせば』と、新作の『こんにちは、母さん』で「母」3部作となる。

大泉洋の会社の立ち位置や家庭における存在がうまく描けていた。同じ年代の男たちがこの作品を観たら、きっと、不意に何の連絡もなく母親に会いに行きそう。


🎬『PERFECT DAYS』ビム・ベンダース監督、脚本/日本/124分

東京・渋谷でトイレの清掃員として働く平山(役所広司)は、淡々と一日を繰り返しているようにみえるが、彼にとって常に新鮮な喜びに満ちていた。

毎日アパートのそばにある自販機でコーヒーを買って、軽トラックのマイカーでトイレ掃除に出勤。昔から聴き続けているカセットテープの音楽、仕事終わりの銭湯と行きつけの屋台のビールと中華料理、休日のたびに古本屋で買う文庫本、彼は木が好きで、大木の根元にあるひこばえを自宅に持ち帰って植木鉢に植えたり、カメラを持ち歩き、木々の写真を撮っている。

そんなある日、思いがけなく姪に再会したことをきっかけに、彼の心に少しずつ光が当たっていく。

カンヌ国際映画祭では「主演男優賞」、キリスト教関連の団体から、人間の内面を豊かに描いた作品に贈られる「エキュメニカル審査員賞」を受賞した作品。

東京・渋谷区内17カ所の公共トイレを、世界的な建築家やクリエイターが改修する「THE TOKYO TOILET プロジェクト」に賛同したベンダースが、東京、渋谷の街、そして同プロジェクトで改修された公共トイレを舞台に描いたドラマ。

中年になって、一人アパート暮らし。ひっそりと孤独を楽しむ様にも見えるが、きっと深い事情があると思いながら観ていた。その事情がぼんやりとわかったが、さして不幸とは思わなかった。でもその渦中から、フイッと逃げ出したのは「勇気」だったのか「逃避」だったのか……もう一度、じっくりと観に行こうと思っている。

★『こんにちは、母さん』『PERFECT DAYS』にホームレスとして出演した田中泯に名脇役賞

その他
★瀬々敬久監督、脚本『春に散る』の橋本環奈に助演女優賞
★塚本晋也監督、脚本、撮影、編集『ほかげ』の塚尾桜雅に子役賞













posted by ミッキー at 21:51| Comment(0) | ベストテン | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2023年03月01日

恒例・3月1日発表 2022年ベスト5〜10 生田佳代

2022年の私の劇場で観た作品ベスト10 生田佳代(大垣)

1『レイジング・ファイア』
ベニー・チャン監督の遺作であるしニコラス・ツェーが出演しているので、大雪の中、見に行った作品です。
ニコラス演じる元刑事の怒りのすさまじさ…まさにタイトル通り「怒火」です。
こんな激しいアクションドラマを撮れる監督は現れるのだろうか、そんな事を感じました。

2『悪なき殺人』
冒頭のシーンから、次のエピソードまでの飛びっぷりにビックリしていると次から次へ場面が変わり、映画の全貌が徐々に分かってきます。
「人間は偶然には勝てない」というキャッチコピーも、こういう事なのか…と納得。
冒頭とラストのエピソードの使い方がシブイですね。

3『恋人はアンドロイド』
生身の人間とつきあって嫌になると、この映画のようなアンドロイドにいやされてみたい気もするが…主人公のイライラ感じ「情が移っても所詮キカイじゃん!!」というストレスも、またむなしい…アンドロイド演じた俳優さん、スゴい!!でベスト10入り。

4『声もなく』
「卵の移動販売」でなんとなく懐かしさと暖かさを感じたのも束の間、まさかこの2人が結構エグイ仕事を請け負っていることなビックリ。
2人のうち、年上のチャンボクの、信心深いわりに、やっていることはエグイという対比に、心がゆるむ。
実は全編、現実はエグイのに、ほのぼのムード。そして抜けてる、ゆる〜い感じですが、ラストの「現実は、こんなもんではイケナイ」みたいなほろ苦さがよかったです。

5『英雄の証明』
報道され、ある事柄が世間にでると、コトが大きくなるなぁ…と、事実ってなんだ?を問いかけてくる作品でした。映画見ている私には主人公の彼がついた嘘は「少し具合がわるいからこういう事にしておこう」
とついたことが分かるが、知らない人から見たら嘘は嘘…。
全方位に「自分」という存在をさらす怖さを感じた作品でした。

6『PLAN75』

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現実にこんな法案がでそう、そんな殺伐とした世相を反映しているような…。
映画の中で「PLAN75」のポスターに何かぶつけている人物がいたけど私も同じ気持ち。ただ賠償千恵子演じる彼女のように一人だと、孤独死したら、迷惑をかけるとかいろいろ考えるとゆらぐなぁ〜と、自分の行く末を案じます。

7『犬王』
犬王と友魚が出会ってからの疾走感がヨカッタ!!
後半のライブシーンは自分が観客になって見ているような臨場感を感じることができました。

8『FLEE』
主人公の彼がたどった人生も、大変だったと思うが、モスクワで警察に呼び止められ、彼はなんとか解放されたが、警察なのに多分ひどい仕打ちをされたであろう少女のエピソードが心に鋭くつきささりました。

9『プアン〜友だと呼ばせて』
死期がせまった友人が連絡してきて…とくるとお涙ちょうだい路線かと思いきや、ロードムービーになる。旅のお供はカセットテープ!!
そして死期のせまった彼のどうしても伝えたかった事にたどり着くまでの展開が素晴らしかったです。

10『RRR』
インド映画は『ムトウ踊るマハラジャ』にはじまり、あの唐突にはじまるダンスが好きなのですが、この映画にもありました!
『Nattu Nattu』です。キレッキレッのダンスシーンが、めっちゃ面白いです。
前半の少年を助けるアクションシーンにも口あんぐりでした。どう見ても、主人公2人どちらも命を落としていてもフシギじゃないのに…ダンスにアクションに、お腹いっぱいでした! ごちそう様。
posted by ミッキー at 16:54| Comment(0) | ベストテン | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする