2017年09月25日

感想をいただきました。『ユリゴコロ』by ねんねこ

山あいでペンションカフェを営む亮介(松坂桃李)は、同じカフェで働く千絵(清野菜名)と結婚間近。幸福で夢いっぱいの毎日を過ごしていたのですが、ある日千絵が忽然と姿を消してしまいます。さらに、二人の結婚を快く祝福してくれた亮介の父親も実は余命僅かと診断されていることを知ります。
順風な生活が突然崩れ去る中、亮介は実家の父親の書斎の押し入れで『ユリゴコロ』と題されたノートを見つけます。「私のように平気で人を殺す人間は、脳の仕組みがどこか普通と違うのでしょうか」と始まる長い長い手記は、美紗子という女性(吉高由里子)が書いたもののよう。「果たしてこれは、創作物語なのか?それとも本当の殺人鬼による告白文なのか?」父の不在時に書斎を訪れる度、この手記を読み耽り、次第に惹かれていく亮介。
そんな日々の中、細谷と名乗る女性(木村多江)が失踪中の千絵からの伝言を伝えるべく、亮介の前に現れたのでした…。


タイトルの『ユリゴコロ』は、主演がヨシタカさん家のユリコさんだから…では勿論ありませんが、実際にある言葉でもないようですね。そこは映画の中でも説明されます。
原作は2011年に刊行され、翌12年には大藪春彦賞を受賞し、本屋大賞にもノミネートされた、沼田まほかるさんによるベストセラー。
ただし映画化にあたっては原作者の許可を得て、登場人物からラストまでかなりアレンジされている…らしいです。
これ書く前に読みくらべてみようと思ったんですが、図書館の蔵書は貸出中かつ予約待ち数人の状態で間に合いませんでした。申し訳ないです!
買えばいい?そりゃ買えりゃぁいいんですけどねぇ… まぁ忖度してください。
なので原作については何も言えませんから、あくまでも映画作品についてのみの感想です。

昔からミステリー好きで、本もあんまり買えないわりにはそこそこ読んでますし、その手の映画やドラマも沢山観てきました。だからでしょうか? 自分でも「嫌な習性だなぁ」と思ってますけど、読むときも観るときも ゙常にすべてを疑う″ようになってしまっていて、伏線もほぼ見破ってしまうし、最近はなかなか騙されないんですよねぇ…。本当は昔みたいに ゙騙される気持ちよさ″をもっと味わいたいのに。
こうゆうのって私に限ったことではないんじゃないでしょうか?私よりもっと読んでる人、観てる人はきっとそうなんじゃないかと思うのだけど。

それはともかく…そういった類いの観賞者からするとこの映画、ミステリーとしては見破れないってほどのものではありません。勘のいい人なら早々にいろんな仕掛けに気づくでしょう。むしろ自分なんかは深読みし過ぎてちょっと肩透かし喰らってしまったくらいでした。
ネタバレ絶対反対派なので、当然何も明かしませんが、゙あえて見せていないもの″に注意してみると面白いと思いますよ。

さて、前述のようにミステリーとしての難易度はさほど高いとは思いませんでしたが、そのことがこの映画の価値を下げてはいません。この物語の要はノートに記された手記の中の出来事と、亮介らが暮らしている今現在双方に於いて、人と人との関わりとそこにようやく見出だされる愛の切なさと美しさを描くことにあったと思いましたし、その点ではちゃんと成功していると思えたからです。そして、その愛こそが ゙ユリゴコロ″なのではないでしょうか。

来月末には、同じ原作者による『彼女がその名を知らない鳥たち』が劇場公開されます。そちらも既に拝見させていただきましたが、やはり ゙愛″というテーマで通じるものがあります。
原作者の沼田まほかるさんは、なにやらケッコウ波瀾万丈な生き方をされてきた方のようで、僧侶の経験もあった(今もそうなのかな?)とか。そういった方のやや特異な(?)人生観を下敷きに作家となった書き手ですから、一見おどろおどろしいばかりの物語の根底には必ず愛が流れているのかも知れません。そう、ミステリー作家沼田まほかるは実は純愛小説の作家なのです!(たぶん…)


何十年も前に「読んでから見るか、見てから読むか」って宣伝コピーがあったけど、この『ユリゴコロ』などは先に述べました通り原作と映画は大きく異なるようなのでまさにピッタリ!既に読まれた方もきっとあらためて楽しめると思いますし、まだの人は映画を観てから原作を読んでみるのも良いでしょうね。
私ねんねこも近いうちにやはり読んでみようと思います。図書館に本が戻ってきてからになりますけど。

− 了 −
posted by ミッキー at 01:13| Comment(0) | 感想をいただきました | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年08月22日

感想をいただきました。『アリーキャット』by大阪・香

こんにちは、昨日ようやくミッキーさん熱烈推薦(!)の『アリーキャット』を観に行きました。ちょっと長いですが、感想をお伝えしておきます。

2時間近い映画なのに退屈しない作りの、和製ロードムービーという印象でした。タイトルの『アリーキャット』は「野良猫」という意味らしく、若手の個性派俳優である窪塚洋介とDragon Ashの降谷建志演じる主人公の二人の男性にも重ねられています。

映画の最初と最後に一匹の野良猫が隠し味で出てくるのも味噌で、猫好きにはたまらないでしょう(野良猫の割に、可愛がられているからなのか毛並みもよく、汚れが全くないのに違和感がありましたが・・・)。

政治家や経営コンサルタントという、いわゆる「勝ち組」で、上等な背広に身を包んではいるけれども、その実、中身はたんなる悪徳で変態の固まりでしかない男たちに対して、アルバイトの警備員や自動車の整備工、デリヘルという肉体労働に従事する主人公たちが挑むという内容が、さもありなんというリアリティを感じました。

最近、若手政治家のしょうもないスキャンダルが世を賑わしています。本当に政治家って暇だし、あの程度の中身でなれるような職業なんだなと呆れる毎日だった(なけなしの収入から天引きされる税金の一部が、この政治家たちの収入源になっているかと思うと怒り心頭!)ので、光のあまり当たらない場所ではあるけど一生懸命に生きている主人公たちの方が、人間的には何十倍も上等だと思います。

そう思わせるような俳優がたくさん出ているのも見所です。栄養不良だけれど底知れないパワーを秘めた野良猫にも似た窪塚洋介、愛すべき不良少年風の降谷建志、この二人を殴る、蹴るなどしながらも、男のほのかな愛情を漂わせる火野正平。

また、悪役たちの顔も怖くて、「憎らしい!」と心底思えます(笑)。変態政治家を演じる高川裕也、悪徳自称「経営コンサルタント」を演じる三浦誠己、政治家を守る冷血なSPを演じる森岡豊、その相棒を演じる馬場良馬など、かっこいい悪役たちも光っていました。

一方で、複雑な過去を持つシングルマザー演じる市川由衣、明るいデリヘル嬢を演じる柳英里沙は、強さよりも弱さ、頭脳よりもセックスが目立つ役どころで、女性イメージが限定され過ぎていて、同性としてはシンパシーを抱きにくかったというのが偽らざる本音です。男のほうが光る映画というか、男性観客のニーズを強く意識して作られた映画なのでしょう。

「辛気くさい話をすんなよ!映画なんだから、面白ければいいじゃん」と言われそうですが、男だけでなく女もお金を出して、時間を捻出して観に行くのが映画です。野良猫の生活のリアリティや女たちの多様性をちらっとでも伝えるような、細部にこだわった映画作りをして欲しいと常々思っています。こだわりのある映画であれば、映画館にわざわざ足を運んでまで支えていきたいですから。


☆コミケで何年ぶりかでお会いした猫好きの香さんに『アリーキャット』をオススメしましたら京都みなみ会館まで行って観てくださいました。ありがとうございました。最後の一文、共感しました ❗️また感想をお待ちしております。

posted by ミッキー at 12:10| Comment(0) | 感想をいただきました | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年04月10日

感想をいただきました 番外編「中古盤騒動記」by ねんねこ

今日も今日とて中古DVDやレンタル落ちVHS探しに余念のないねんねこ。

昨3月某日のことです。渡豪前のミッキーさんにドーナツを御馳走になった後、中古DVDを散策すべく そのお隣りのレンタル屋さんに立ち寄りました。

中古とはいえレア度など、モノによって値段は様々。DVDは沢山欲しいけどビンボーなので高価な品は買えない、なんて可哀相なねんねこ。1000円以下の中から涙目で品定めします。それでも魅力的な作品がいっぱい!
「さ〜て、この日選んで購入したのは…

まず、俳優としては勿論、監督としての才も冴え渡るショーン・ペン監督作品『プレッジ』('01)。゙サスペンス″の一言では片付けられない、深い人間ドラマです。主演はジャック・ニコルソンです。ヴァネッサ・レッドグレーヴ、ミッキー・ローク、ベニチオ・デル・トロなども出演しています。

続いて、大好きなコーエン兄弟の『バーバー』('01)。こちらも一筋縄ではいかないサスペンスですね。主演はビリー・ボブ・ソーントン。昔からこの名を聞くと どうしてもピーナッツクリームを思い出してしまいます。今でもあるのかな…。 リチャード・ジェンキンスおじさんや、まだ若い16、7歳くらいのスカーレット・ヨハンソンが出ています。
これがなんと[モノクロ版]と[カラー版+映像特典]2枚組の豪華版。なのに980円! 本当にこの値段で戴いていいんですかぁ〜!?
(ToT)

そして、前々から目をつけてたけど ちょっと高くてなかなか買えなかったのが やっと安くなってた、ももいろクローバーZ主演の青春映画『ももドラ momo+dra』('11.佐々木敦規監督作品)の3本で〜す!」

と、これでめでたく「来週をお楽しみに」できればよかったんですが…

問題は この『ももドラ』でした。
ジャケットを見たときに な〜んか違和感がある。ジャケ写にシャープさがない…。特に裏面のバーコードをよく見てみると、やっぱりどうもコピーっぽく感じるのです。
当然「海賊版なんじゃないか?」と思ったので、購入前に店員さんに「これって大丈夫ですか?」と、包装を開けて見てもらいました。メンバー5人が印刷された裏ジャケが ちゃんとあるし、盤面にもメンバーの顔が印刷されていたので、「大丈夫じゃないですかぁ〜」と あまり深刻にも考えていないように応える店員さん。

ねんねこは海賊版の映画を観たことも作ったこともないので(!)よく知らないのですが、聞いたところによると「海賊版って映画館で上映されているものを盗撮したりするから 画像は悪いし 人の頭が映ってたりする。」とのこと。だから「観てみれば判るだろうから、もしそうだったら返品させてもらおう」と考えて、結局買って帰りました。

゙買って安心するタイプの人″ではないつもりですが、ビンボーなくせに凄まじいペースで安いDVDを買うものですから、実は観るほうが追いつきません。尤もほとんどが昔観た映画を懐かしんで買っているものなので「今観たい!」というより、老後観たいときにいつでも観られるために買ってるようなもの。現に 今これを書いている時点でまだ『バーバー』も『プレッジ』も再見してません。

しかし、この怪しい『ももドラ』だけは 確認しないわけにいきません。
DVDをデッキにセットして さぁスタート…

うん、聞いてたような ゙劇場で盗ったみたいな映像″じゃない。普通にキレイな画面です。特典のメイキングや予告編も ちゃんと収録されてました。

…でもね…

特典映像の方はなんら変なとこはないんだけど、映画本編の間中ずーっと中国語字幕が出てるんです。その字幕を消す機能はないのです!

???「こうゆうのも海賊版なのか?」あるいは「中国語圏の人向けに作られた特別バージョンの正規品という物もあって、これはそうゆう物なのか?」「それならそれで悪くはないけど、そこは明記しといてくれないと字幕が消えないんじゃ鬱陶しくて堪らない!」などなど…様々な考えが脳内を巡ります。

翌々日、ねんねこが懇意にしている古書店があるので持ってって見てもらいました。
ジャケットの写真とバーコードを一目見るなり「うん、海賊版だね」
そりゃそーだ!素人のねんねこでも このコピーっぽさはオカシイと思ったのだ。昨日の店員の注意力と責任感の無さは なんなんだ!

というわけで早速 購入店へ。件の店員はいませんでしたが、責任者の店員さんに事情を話したら キチンとしたお詫びと対応をしてくださいました。
このお店自体が悪いわけではありません。買い取り時に見抜けなかったとはいえ、海賊版を持ち込まれたお店も被害者です。

返金してもらってもよかったのですが、なにしろ欲しいDVDはまだイッパイアッテナ。同じ額のものと交換してもらうことにしたので、ねんねこ御贔屓のシドニー・ルメット監督作ながら機会に恵まれず未見のままだった刑事ドラマ『セルピコ』('73.主演:アル・パチーノ)をセレクト。
「よ〜し、もうこうなったら(どうなった?)オマケだ!」と 昔観た『月山』('79.村野鐵太郎監督作品/原作:森敦/主演:河原崎次郎)も追加購入しました。
…はい、これを書いている時点でまだ『セルピコ』も『月山』も観てません。老後の楽しみです。すみません…


かくして、海賊版DVD騒動は一応の決着を見たわけですが…

ひとまずここで 今回の教訓

1. ちょっとでもおかしい、怪しいと感じたことは とことん確認すること。
2. 重要な局面にも関わらず店員の対応が不誠実だと思ったら、遠慮なく別の店員さんに代わってもらうこと。
3. 海賊版とは 劇場で盗撮したものだけではない!

皆さんも お気をつけください。


さて、このハナシには後日談があります。

その数日後、例の懇意にしている古書店を訪れた際のことです。
この古書店さんは 店舗が三つに分かれていて何れもすぐ近くに有るのですが 定休日をずらしてあって、ねんねこの親しい店員さんのいる店舗に遊びにゆく日はたいてい他店舗はお休みの曜日。なのでその他店舗を覗くのは年数回ほど。
久しぶりに いつもと異なる店舗を訪れ、そこの棚を眺めていたら…
!! あるじゃないかぁ〜『ももドラ』が! しかも1000円!
あの一連の騒ぎはいったい何だったんだぁ〜〜〜!

…といったわけで、ねんねこん家には現在『ももドラ』DVDの正規品があります。
尚 この正規品、裏ジャケなんてありません。盤面にメンバーの顔はありません。
手の込んだ海賊版だったんですね…

まぁアレをねんねこが買わなかったら、いつかは誰かがうっかり買ってしまって 同じようなショックを受けたでしょうから、ここで見つかっといて良かったんだと思います。

繰り返しますが、皆さん くれぐれも海賊版には御用心を。

そして、明日も嬉しいこと楽しいこと いっぱいあるといいネ!
おやちゅまりあ!
posted by ミッキー at 03:34| Comment(0) | 感想をいただきました | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする