2019年05月28日

感想をいただきました 『リング』『リング2』から『貞子』へ by ねんねこ


「小学生の男の子がさぁ、家族で伊豆のペンションに泊まったんだって。その子さぁ、みんなと遊びたいんだけどぉ、東京でいつも観てる番組も観逃したくなくってぇ、ペンションにあったデッキで予約録画したんだって。でもあっちって東京とチャンネルが違うでしょ。そのチャンネル、空きチャンネルだったからなんにも映るはずないわけ。それが、家に帰って観たらぁ、いきなり女の人が映って…」
1998年公開の映画『リング』は、佐藤仁美さん演ずる女子高校生倉橋雅美のこのセリフで幕を開けました。
雅美と友人の大石智子(まだちょっとあどけない竹内結子さん!)によるこの映画冒頭シーンは、今あらためて観直しても緩急を活かした見事な演出で、一気に恐怖の世界に引きずり込みます。
'80年代から数々の多彩な映画を観ていたねんねこですけど、実はいくつかパスしていたジャンルがありました。その中のひとつがホラー(オカルト)映画でした。恐いからじゃありません。何観ても恐くなかったからです。名高い『エクソシスト』も『オーメン』も、ジェイソンやらフレディやらが暴れるシリーズも、古典とも言える日本の怪談映画もその様式美には感嘆するものの、恐いとは全く思わなかったんですね。恐怖映画は恐くなかったら面白いわけありませんから、観たい映画のたまたまの併映作でもなければもう観なくなっていきました。
そんな中、松嶋菜々子さんや真田広之さん、佐藤浩市さんなど好きな俳優さんが出ているという理由で、『リング』『らせん』の恐怖映画二本立てを観たのでした。
そして出くわしたのが、この『リング』冒頭シーンです。このシーンだけに留まらず、全編が本当によく計算された恐怖演出で、その積み重ねを経ての終盤のあのシーンでしたから、もう公開終了間際で小さめの劇場に降りていたけど、満員の観客全員が息を呑んで凍りついているのを感じました。
あの時の ゙恐怖の快感″が忘れられず、それ以来ホラー映画も積極的に観るようになりましたが、この『リング』『らせん』の大ヒットを受けて以降量産された「Jホラーシリーズ」含め、あれほどの快感には未だほぼ出逢えていません。

原作小説『リング』の続編が『らせん』であり、映画も共通キャストの二本立てで公開されましたが、映画『らせん』は人気深夜ドラマ『NIGHT HEAD』で知られる飯田譲治氏の脚本・監督による、ちょっと異質な作品で、続編というより ゙番外編″といった方が相応しい位置付けの映画だと思います。
映画『リング』の文字通りの続編として、翌99年に公開されたのが『リング2』です。DVDに収録されていた予告編によると、『リング』ラストの一週間後から始まっているようです。
前作で、貞子の呪いの最初の犠牲者の一人となった大石智子の死の現場(瞬間?)を目撃してしてしまったためにオカシくなってしまった倉橋雅美は入院しており、その病院に勤める少々奇人の川尻医師(まだ髪の多い小日向文世さん。やっぱり声は高い)が、彼女を使って呪いの謎に挑んだりします。見所にして一番恐かったのは、貞子に呪い殺された人の中でおそらく最も凄まじい死に顔を見せた深田恭子さんでしょう。公開当時にパンフレットか何かで読んだのですが、あの顔は作り物などではなく、本人がちゃんと自分の顔で演じたそうです。すでにアイドルとして絶大な人気だったことを考えると「よくぞやったものだ!」と、その女優魂とそれを許したホリプロの意気に感心します!

さて今や、ゴジラ、寅さんに次いで日本映画界の生んだキャラクターとしては3番目くらいに有名なんじゃないか?と思われる貞子ですが、初登場以降20年の間に、前段にあたる『リング0/バースデイ』、ハリウッド版『ザ・リング』、『貞子3D』などなど数々の「貞子シリーズ」が生み出され、果ては『貞子vs伽椰子』なんて代物まで登場。あっちへ行ったり、ゆるキャラっぽくなっちゃったり、ナンでもありみたいな印象でした。

しかし、現在公開中の『貞子』こそ、じっくりと腰を据えて観ていただきたい。なぜなら、これこそ『リング』〜『リング2』からの正統な続編と言えるからです。
オリジナル監督である中田秀夫氏が本国の『リング』シリーズに久々の登板となり、原点に立ち返ります。現実の時の流れと同じく、『リング』『リング2』から20年後という明確な時代設定。
そして何と言ってもこの人の存在抜きにこの映画は語れません!前二作で倉橋雅美を演じた佐藤仁美さんが、その同じ人物の20年後の姿を見せてくれるのです!
映画ファンの方なら、演ずる役によって体型までも変えてしまう ゙デ・ニーロ アプローチ″という演技プランをご存知でしょう。欧米のみならず、我が国でも旧くは三國連太郎さんや船越英二さん、近年なら松田優作さん、現在でも鈴木亮平さんらがそのような役づくりをしています。
が、我らが佐藤仁美さんは役に関係なく太ったり痩せたりするという、一味違う女優さんです。朝ドラ『ひよっこ』レギュラー放送時の丸々とした体型からどのように変身した姿を見せてくれるのでしょうか!?お楽しみに!

ねんねこ世代の人なら、自分もあの『リング』『リング2』から20年の時を経て『貞子』と向き合うことになりますが、お若い方やまだ起点の『リング』を観ていない方は、是非とも『リング』『リング2』をレンタルしてきて先に観てください。そして中一日くらい置いて、その間に自分の中で20年間熟成させてから劇場へお出かけくださると宜しいかと思われます。 - 了 -
posted by ミッキー at 21:30| Comment(0) | 感想をいただきました | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年04月24日

感想をいただきました ゴールデンウイークにオススメのアニメ映画【後編】 by ねんねこ 『機動警察パトレイバー THE MOVIE』『マイマイ新子と千年の魔法』

★『機動警察パトレイバー THE MOVIE』('89.監督:押井守)
この映画と出逢えたことは、全くラッキーな偶然だったと言ってよいでしょう。
1980〜90年代のねんねこは、劇場公開映画をほぼ逃さず観に行っていました。それこそ現在のミッキーさんのように観まくっていたわけですが、大きな違いが…!?ミッキーさんは公開初日や公開一週目に観に行かれるのに対して、当時のねんねこは劇団活動やバイトで忙しかったこともあって、どの映画も公開最終週になってようやく追っかけで観に行けるという悪循環。しかし、お客さんの回転をよくするためなのでしょう、二本立ての ゙お目当ての方″が打ち切られて公開途中から単品上映になってしまっていたこともあったし、中には何の断りもなく僅か一週間で終わってしまい、前売券を無駄にした映画もありました。たいていは既に前売券を買っていたから、もう毎週が綱渡りでした!

さて、1989年の夏休みもとうに終わり、もう秋を迎えようとしていた頃。翌週からの新作公開を控えた名古屋松竹座では、『男はつらいよ 寅次郎心の旅路』&併映作の最終週上映をしていました。そんなある日のお昼過ぎ、窓口にやって来たのが、例によって前売券を手に駆けつけたねんねこクン。さずがの『寅さん』も休み明けとなると昼間はほぼ客足が途絶えつつあったのでしょう。夕方6時頃から一回り限りの上映になっており、それまでの時間は学生さんら若い層に向けて?アニメを上映していました。それが『パトレイバー』だったのです。

現在では珍しくもない、むしろ普通の ゙時間帯毎の番組変更″は、まぁ当時でもたま〜にありましたから、それは仕方なくって「そっかぁ…夕方までどうしようかなぁ…」と考えていたら、窓口のおばちゃんの口から「寅さんの券で入って、そのまんま最後まで観ていけるよ〜」と。
驚きました!ふつう入れ替えでしょ!? なんという太っ腹!! 残り物(者)に福!

かくしてねんねこはこの日、名古屋松竹座の大スクリーンで図らずも3本立てを楽しめたのでした。めでたしめでたし!そして『寅さん』と併映作(なんだったっけ?)そっちのけで、『パトレイバー』に引き込まれていたのでした。

『パトレイバー』との馴れ初めに字数を割きすぎて、内容の紹介をする余裕が無くなってしまいましたが、「レイバー(=人型作業ロボット)連続無人暴走事件の謎に迫る、鳥肌もののミステリー」とだけ言っておきましょう。むしろ予備知識など何もなく観たほうが面白いです。ねんねこだって『パトレイバー』の名前ぐらいは聞いたことあったけど、キャラクターはじめ物語の設定等その他のことはなんにも知らずに観て、ちゃんとついていけましたから大丈夫。

脚本は、同じ押井監督の『GHOST IN THE SHELL 攻殻機動隊』シリーズ('95〜)の脚色をはじめ、金子修介監督による「平成ガメラシリーズ3部作」や、ちょっと意外なところでは鈴木清順監督の『ピストルオペラ』('01)の脚本も担当している多才な伊藤和典氏。やはり同氏の脚本、押井監督による『2』('93)も面白いですよ!

「アニメ特集」の最後にねんねこが自信を持ってご紹介させていただくは、これぞ掛値なしの傑作アニメーション映画です!
★『マイマイ新子と千年の魔法』('09.脚本・監督:片渕須直)
2016年の監督作『この世界の片隅に』がキネマ旬報ベストワンなど高い評価を受けた片渕監督が、それに先だって発表した ゙これで既にベストワンを獲っていてもよかったはず″の作品です。

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原作は芥川賞受賞作家・高樹のぶ子さんの自伝的小説。昭和30年代、大自然に囲まれた山口県の田舎町に暮らす空想好きで活発な小学3年生の新子と、東京から転校してきた内気な貴伊子が心を通わせていく様を中心に、妹やわんぱく少年たち、見守る大人たち、さらに ゙千年前の平安時代の人々″の物語までが絡む夢いっぱいの、それでいて現実の厳しさやほろ苦さもきっちり描かれている、まさに ゙珠玉″という言葉が相応しい名作です!

平成21年11月21日、ひっそりと公開の始まったこの映画は、公開されるやいなや!ではなく、しばらくしてから徐々にその評判が広がり、各地で上映存続の声や上映招致運動が巻き起こり、今にも消えそうだった火が俄かに大きく燃え上がるようにファンが増えていったということです。

ねんねこはひっそり上映のうちに観ていて、身体が震えるほど心を打たれまくったのに、自分の中だけに大切に仕舞っておきたくて?誰に薦めることもせず、な〜んにもしませんでした。同じように感動した人たちが懸命に動いていたというのに…。今、そのことを恥じています。だから、もしまだこの映画に出逢っていない人がいるならば、一人でも二人でもいいから出逢ってもらいたいと思い、遅ればせながらここに採りあげることにしました。本当に観てほしい映画なのです。

今、ねんねこの手元には、ブックレット・特典ディスク付き・ケース入り『マイマイ新子と千年の魔法』2枚組み豪華版DVDがありますが、これは自分だけのものです!… チャンチャン♪

それでは またお会いしましょう!
posted by ミッキー at 06:25| Comment(0) | 感想をいただきました | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年04月23日

感想をいただきました ゴールデンウイークにオススメのアニメ映画【前編】by ねんねこ 『オネアミスの翼 王立宇宙軍』『ベルヴィル・ランデブー』

「みなさんこんにちは!ねんねこ、映画三昧に平成最後の登場です!」…みたいに、世はすっかり ゙令和フィーバー″。「平成」の時と違い、生前退位による改元ですから、このお祭り騒ぎも一概に悪いとは思いませんが、新元号制定に当たった首相や、額を掲げて発表しただけの官房長官を、新時代の立役者のように徒に持ち上げたりする風潮はちょっと考えねばなりません。彼らに乗せられてはいけません!

おっと!政治的発言をする場ではなかった。アカデミー賞授賞式のようになるところでした。映画のハナシをしなければ…

打って変わって楽しい楽しいアニメ映画のご紹介です!?今回も、こどもの日を含むG.W.に相応しい映画のオススメということで、数年前は「子供が主人公の映画」をご紹介しましたが、同じテーマでってのもナンなんで「何がいいかな?」と考え…なんと!アニメーションに決まりました!

「なんと!」というのも…人気のアニメや漫画も一応観たり読んだりはしてみるねんねこですが、どうもほとんどの作品は実写映画・ドラマや小説のようにはハートにグッと来ない、どちらかと言えば不得手なジャンルのよう。しかしその一方、ハマるモノには徹底的にハマり、DVDやコミックスを全巻揃えたりしてしまうほど。

ということで、ねんねこの膨大な映画の抽斗の中から、そのようなお気に入りの稀少なアニメーション映画を引っ張り出してきました。ただし、「こどもの日もあるから」ってことで決めたテーマのわりには ゙大人こそグッとくる作品″寄りであることを予めお断りしておきます。

★『オネアミスの翼 王立宇宙軍』('87.原案・脚本・監督:山賀博之)
人類初の有人宇宙飛行をめざして設立された ゙王立宇宙軍″だったが、計画は失敗続き…。その宇宙軍にあって怠惰な日々を過ごしていた主人公シロツグは、はじめ興味本位から近づいた ゙神について語る少女″リイクニとの交流をきっかけに変わってゆき、宇宙飛行士に志願するのだが…。
なんといってもスタッフの顔ぶれが凄いんです。制作は、のちに『新世紀エヴァンゲリオン』を世に送り出すこととなるガイナックス。原案・脚本・監督はこれがデビュー作の山賀博之氏。キャラクター・デザインも『エヴァ』で知られる貞本義行氏、作画監督には庵野秀明氏が名を連ねており、助監督として樋口真嗣氏も参加しています。さらに!音楽監督は坂本龍一教授なのです。「ガイナックス」はその後いろいろとゴタゴタがあったようですが…それはまた別のハナシ。
尚、ソフト化された際のタイトルは『王立宇宙軍 オネアミスの翼』と、何故か?本題と副題を逆にしていますが、どっちにしても「オ」の棚に置いてありますよね。

★『ベルヴィル・ランデブー』('02.脚本・監督:シルバン・ショメ/フランス・ベルギー・カナダ合作)
世界的自転車レースであるツール・ド・フランス出場中に誘拐された孫を救うべく、小さなお祖母ちゃんと老いた飼い犬が、謎の三老婆の力を借りて奪回に挑みます。

ストーリーを書けばただそれだけのハナシなのですが、その奇抜な絵柄や独特の発想、クセになりそうな音楽と表現方法には、もうただただ舌を巻くばかりです!2003年の第76回アカデミー賞で長編アニメーション映画賞と歌曲賞の2部門にノミネートされながら、前者は『ファインディング・ニモ』に、後者は『ロード・オブ・ザ・リング/王の帰還』に敗れましたが、ねんねこの私見では、いずれも当作品のほうがはるかに優れていると思います。

監督のシルヴァン・ショメ氏はこれが長編デビュー作。この後、『イリュージョニスト』('10)、『ぼくを探しに』('13)といった、これまた秀作を作り上げています。
この映画のDVDは「ジブリ CINEMAライブラリー」から出ているので、レンタル店にもよるかもしれませんが、お探しの際にはディズニー作品などが並ぶ洋画アニメのコーナーではなく、邦画のジブリコーナーの棚から見つけてください。ショメ監督と、この映画に惚れ込んだ今は亡き高畑勲監督との対談も映像特典として収録されています。こちらも必見ですよ! また明日!
posted by ミッキー at 06:40| Comment(0) | 感想をいただきました | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする