北海道の高校を卒業した深瀬昌久(浅野忠信)は、父(古舘寛治)の写真館を継がずに上京する。
東京で写真修行する中で、深瀬は美しく力に満ちた女性・洋子(瀧内公美)と恋に落ちる。
洋子は深瀬の写真の主題となり、革新的な作品を生みだしていくが、深瀬の心の闇は「鴉の化身」となって彼を惑わせる。

深瀬昌久という写真家は恥ずかしながら知らなかったが、あのカラスの写真は見たことがある。
主役をやった浅野忠信は25年前に『地雷を踏んだらサヨウナラ』でも実在の写真家を演じている。浅野忠信の目がカメラマンとしての役にふさわしいのだろう。父親の古舘寛治の目もよく似ていた。
まるで死神のようなカラスの化け物に取り憑かれて、独り言をいう深瀬昌久に芸術家の持つ複雑さと深い孤独を感じた。