2025年 洋画ベストテン(甲乙つけ難し、順位なし)
🎬『サムシング・ハプンズ・トゥ・ミー』アントニオ・メンデス・エスパルサ監督、脚本/スペイン、ルーマニア/112分/音楽賞
病身の父親とマドリードで暮らす独身女性ルシア(マレーナ・アルテリオ)は、勤めていた会社が給料未払いで突然倒産したので、訴訟しながらタクシー運転手へと転身した。そこで彼女は個性豊かな乗客たちと出会った、
ルシアは、転職前に隣からもれてくるオペラ「トゥーランドット」のアリア「誰も寝てはならぬ」に聴きほれていた。
そのオペラが縁で謎めいた隣の男性と出会う。彼は自分を「トゥーランドット」に登場する王子になぞらえて「カラフ」と名乗り、こつ然と姿を消してしまった。
ルシアはいつか彼が自分のタクシーに乗り込んでくることを夢見るが……。
『パリタクシー』『TOKYOタクシー』の次は「マドリードタクシー」かと思いきや、痛い展開が待っているサスペンス映画。痛いのが好みのミッキーには印象に残る作品。
★主人公ルシアを演じたマレーナ・アルテリオは、本作でスペイン版アカデミー賞ともいわれるゴヤ賞で主演女優賞を受賞。歩き方がおばさん風で好感が持てた。
🎬『さよならはスローボールで』カーソン・ランド監督/アメリカ、フランス/98分
地元で長く親しまれてきた野球場「ソルジャーズ・フィールド」が、中学校建設のため取り壊されることになった。
地元の草野球チームの仲間たちは、週末ごとに通い続けた球場に別れを告げるために集まり、最後の試合を始める。
折りたたみ机と双眼鏡を持って一番いい場所に満足顔の記録係、ビールやピザを片手にヤジを飛ばす者など田舎のオヤジさんたちは個性豊かに野球を楽しんでいる。
野球のこと 何も知らないミッキーだが、これは面白かった。地元野球チームのほぼ全員が最後の1試合を思いっきり楽しく思いっきり長くやろうと、言葉がけはしないが気持ちが一致する。
まあ中には途中で帰る者、審判も4時までの約束だと言って帰ってしまうが、みんなその度にワイワイと相談する。
そんな中で、今後のこと、家族のことがチラチラとわかってくる。
場面は野球場のみ。夕暮れ、夜になっても工夫して……味わい深い面白みがあって幸せな気分になった。
🎬『アメリカッチ コウノトリと幸せな食卓』マイケル・グールジャン監督、脚本、主演/アルメニア、アメリカ/121分/主演男優賞
幼い頃にオスマン帝国のアルメニア人迫害から逃れ、一家でアメリカに移住したチャーリー(マイケル・グールジャン)は、1948年、自分のルーツを知るため祖国アルメニアを訪れる。
そこはソ連統治下でも理想の故郷のように思えたが、チャーリーは身に覚えのないスパイ容疑で逮捕・収監されてしまう。
悲嘆に暮れるなか、牢獄の小窓から近くのアパートの部屋が見えることに気づいた彼は、そこに暮らす夫婦の生活を観察しはじめる。
チャーリーは想像力を研ぎ澄ませ、まるで夫婦と同じ空間にいるかのように彼らと一緒に食事をし、歌を歌い、会話を楽しむようになる。
しかし夫婦仲がこじれて部屋には夫だけが残され、時を同じくしてチャーリーのシベリア行きも決まってしまう。
移送の日が近づく中、チャーリーは夫婦を仲直りさせる作戦に乗り出す。
見終わった後の至福感は最高❗️
コウノトリは赤ちゃん(幸せ)を運んでくる鳥と言われている。この作品の中で2回ほど、羽ばたきや鳴き声で思いがけない展開の発端になっている。
どんな境遇になろうと身の回りの小さな幸せを見つけて、心を慰めていくチャーリー。彼こそ周りの者にとって「コウノトリ」だった。
🎬『テルマがゆく! 93歳のやさしいリベンジ』ジョシュ・マーゴリン監督/アメリカ、スイス/99分/主演女優賞
夫を亡くし寂しさの中だが、気楽なひとり暮らしをする93歳のテルマ(ジューン・スキッブ)。
ある日、よく尋ねてくる仲良しの孫ダニエル(フレッド・ヘッキンジャー)が事故を起こし刑務所にいると電話が入った。
愛する孫を助けようと保釈金1万ドルを送金するが、それは典型的な詐欺の手口だった。
犯人を突き止めてお金を取り返すことを決意したテルマは、施設に入っている旧友の老人ベン(リチャード・ラウンドトゥリー)を巻き込んで、施設にあった電動スクーターに乗って、リベンジ大追跡に出る。
『ネブラスカ ふたつの心をつなぐ旅』でアカデミー助演女優賞にノミネートされたジューン・スキッブが、93歳にして初の主演。オレオレ詐欺に引っかかっても、泣き寝入りせず、立ち向かうおばあちゃんの奮闘を描いたコメディドラマ。
テルマ婆ちゃん❗️頑張った❗️
内容が込み入っていて騙す方もお見事!と言いたいぐらいだったが、テルマのは本当に単純なオレオレ詐欺。自分のお金を取り戻そうと行動するエネルギーが半端ではなく、夢中になって応援した。
🎬『リー・ミラー 彼女の瞳が映す世界』エレン・クラス監督/イギリス/116分/女性監督官
1938年、南フランスでアーティスト仲間たちと休暇を過ごしていたリー・ミラー(ケイト・ウィンスレット)は、芸術家ローランド・ペンローズ(アレクサンダー・スカルスガルド)と出会い恋に落ちる。
ほどなくして第2次世界大戦の脅威が迫り、日常のすべてが一変。写真家の仕事を得たリーは、アメリカ「LIFE」誌のフォトジャーナリスト兼編集者デイヴィッド・シャーマン(アンディ・サムバーグ)とチームを組む。
1945年、リーは従軍記者兼写真家として次々とスクープをつかみ、ヒトラーが自死した当日、ミュンヘンにあるヒトラーのアパートの浴室で自らのポートレイトを撮影して戦争の終わりを伝える。
トップモデルから20世紀を代表する報道写真家へと転身した実在の女性リー・ミラーの数奇な人生を映画化。
『エターナル・サンシャイン』の撮影監督
エレン・クラスの初長編映画監督作品。
ウィキペディアで調べて、リー・ミラーの実像を見た。すごい美女だった。行動力も即座の機転も、時代を読む力も備わった女性報道カメラマンということがわかった。
終盤にいくに従って映画に旨みが増していき、映画チラシの写真にたどり着く……あの場所で裸になって写真を撮らすなど、並の女性ではない。ゾクゾクした。
🎬『KIDDO キドー』ザラ・ドビンガー監督、脚本/オランダ/91分/脚本賞//
オランダの児童養護施設で暮らす11歳の少女ルー(ローザ・ファン・レーウェン)に、離ればなれになっていた母カリーナ(フリーダ・バーンハード)から突然の連絡が入る。
自分はハリウッドスターだというカリーナは、喜ぶルーを無断で施設から連れ出し、ポーランドに住むおばあちゃんのところへ行くと言う。
カリーナにはルーとずっと一緒に暮らすための、ある計画があった。
そんな母の型破りな言動に戸惑いながらも、一緒にいたい一心で、母に着いていくルーだったが……。
いい映画だった。終わりは幸せなものではなかったけど、これで良いんだと納得した。もう一本見る予定だったけどやめて家まで「あれからどうするのかな」と考えながら歩いた。
常識なしのいい加減な母親(でも行動力だけはある)、無断で施設を抜け出してきてその事が頭から離れない女の子だが、お互いに強く強く愛していることがわかる。
2人の1週間ぐらいの濃密な思い出が「宝物」になるような気がする。
🎬『ゲッベルス ヒトラーをプロデュースした男』ヨアヒム・A・ラング監督、脚本/ドイツ、スロバキア/128分/作品賞
1933年のヒトラー首相就任から1945年にヒトラー(フリッツ・カール)が自死刷るまでの間、宣伝大臣として、国民を扇動してきたヨーゼフ・ゲッベルス(のロベルト・シュタットローバー)。
彼は初め平和を強調していたが、ユダヤ人の一掃と侵略戦争へと突き進もうとしていたヒトラーから激しく批判され、ゲッベルスは信頼を失う。
愛人との関係も断ち切られ、自分の地位を回復させるため、ヒトラーが望む反ユダヤ映画の製作、大衆を扇動する演説、綿密に計画された戦勝パレードを次々と企画。
国民の熱狂とヒトラーからの信頼を勝ち取るゲッベルスは、独ソ戦でヒトラーの戦争は本格化し、ユダヤ人大量虐殺はピークに達する。
スターリングラード敗戦後、ゲッベルスは国民の戦争参加をあおるが、しかし、状況がますます絶望的になっていく……。
2018年に公開されたオーストリアのドキュメンタリー映画『ゲッベルスと私』を思い出した。
第二次世界大戦中の1942年から終戦までの3年間を、ナチス宣伝大臣ヨーゼフ・ゲッベルスの秘書として働いていた女性で103歳。
彼女の見たゲッベルスは「どこから見ても完璧な紳士で、物腰も穏やかなものだったが、一旦、演説をすると途端に何百、何千人の心をとらえる力があった」と語っていた。
その時に感じたゲッベルスの印象と今回の映画の印象にかなりの隔たりがあった。
置かれた立場によっての違いはあると思うが……。
ヒトラーの印象も変わった。ゲッベルス夫婦には宮お互いに浮気相手がいたが、離婚させては国民の手前まずいと思ってか気を使っていたし、マグダ夫人(フランツィスカ・ワイズ)には特に敬意を持って接していた。
最期の決断は彼自身の覚悟の選択であった。わけもわからない罪にない子どもらの映像(当時のフィルムだったと思う)が可哀想でならなかった。
★2024年ミュンヘン映画祭で観客賞を受賞
🎬『エミリア・ペレス』ジャック・オーディアール監督、製作、脚本/フランス/133分/メイキャップ賞、ゾーイ・サルダナに助演女優賞
メキシコシティの若き女性弁護士リタ(ゾーイ・サルダナ)は、麻薬カルテルの!ボスであるマニタス(カルラ・ソフィア・ガスコン)に拉致されてアジトに連れて行かれ「女性としての新たな人生を用意してほしい」という極秘の依頼をお金の糸目をつけない条件を提示されてやむなく承諾する。
リタは完璧な計画を立て、マニタスが性別適合手術を受けるにあたって生じる、さまざまな問題を解決して、マニタスは無事に過去を捨てて姿を消すことに成功する。
それから4年後、イギリスで新たな人生を歩んでいたリタの前に、エミリア・ペレスという女性として生きるマニタスが現れるが……。
★カンヌ国際映画祭ではアドリアーナ・パス、ゾーイ・サルダナ、カルラ・ソフィア・ガスコン、セレーナ・ゴメスの4人が女優賞を受賞。特にエミリア・ペレス/マニタス役を演じたカルラ・ソフィア・ガスコンは、カンヌ国際映画祭において初めてトランスジェンダー俳優として女優賞を受賞した。
🎬『ジェリーの災難』ロー・チェン監督/アメリカ/75分
長年アメリカで暮らしてきた69歳の中国人男性ジェリーは、妻と離婚した後に、定年退職。3人の息子たちとも離れて、独り暮らしを送っていた。
そんなある日、彼のもとに中国警察から電話がきて、自分が国際的なマネーロンダリング事件の容疑者になっていると告げられる。ジェリーがフロリダに持つ銀行口座を通して、128万ドルが違法に移動されているというのだ。
逮捕して中国に強制送還すると言われたジェリーは、中国警察のスパイとして捜査に協力することにした。
その後、数週間にわたり、銀行を監視して写真を撮ったり、極秘の送金をしたり、さらには隠しマイクを着けて窓口係を探ったりと、中国警察の指示通りに捜査を手伝うジェリーだったが……。
定真面目に慎ましく過ごしてきた男性が1本の電話で、スパイに仕立てあげられ、違法行為に加担させられた実在の事件を、被害者本人であるジェリー・シューが自ら脚本・主演を務めて映画化した。
自分は絶対、詐欺には引っかからないと思っている人に是非見ていただきたい。ミッキーの知人も騙されそうになった人がいて、10円でも損するとぐちぐち言うぐらい慎ましく暮らしているのに、まんまと騙される寸前で助かった。
この映画に出てくる詐欺グループのやり方がお見事としか言えないやり方。改めて詐欺に注意と自分にいい聞かせた。
🎬『Playground 校庭』ローラ・ワンデル監督、脚本/ベルギー/72分/新人監督官、マヤ・バンダービークに子役グランプリ
父子家庭で育つ7歳の内気な少女ノラ(マヤ・バンダービーク)は3歳上の兄アベル(ガンター・デュレ)が通う小学校に入学する。
なかなか友だちができなかったが、やがて同じクラスの女の子2人と仲良くなったノラは、ある日、兄が大柄な少年にいじめられている現場を目撃しショックを受ける。
ノラは大好きな兄を助けたいと願うが、兄から拒絶されてしまう。
その後もいじめは繰り返され、一方的にやられっぱなしの兄の気持ちを理解できないノラは……。
ノラを演じたマヤ・バンダービークちゃん名演技で出ずっぱり❗️スクリーンにはノラの大写しがなん度も出てくるが物怖じしない表情に圧倒された。
小さな学校を舞台に子どもたちの世界を「駆け引き」なしで正直に描き切っていた。。
★監督は、これが長編デビューとなるベルギーの新鋭ローラ・ワンデル。
★第74回(2021)カンヌ国際映画祭で国際批評家連盟賞を 受賞
2026年01月02日
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