東京の今朝は2℃。寒いはずだ。今日は池袋の映画館に行く予定。昨日晩に朝ごはんをコンビニで買っておいてよかった。
1位
Netflix『普通の人びと 彼らを駆り立てる狂気』マンフレッド・オルデンブルク監督、脚本/ドイツ/58分
一般市民を中心に編成された第101警察予備大隊。職業は多岐にわたっているが、狂信的な反ユダヤ主義者というわけでもなかった。ドイツが占領した地域を規則に従って守る準警官という仕事内容で集められた人たち。
彼らはポーランドに連れて行かれた。ある朝、皆が揃ったところで、温厚なタラップ少佐が涙ながらに話したことは「ポーランドにおいてユダヤ人を殺す役目で集められたが、ここで拒否することもできる」と呼びかけてくれた。少佐も直前まで知らされてなかったのだ。
しばらく沈黙が続いたが一人、二人と拒否する人が出て来たが……。
きっと今年のNetflix No.1❗️
ドイツ・ナチス関連の映画やドキュメンタリーはほとんど見ているが、これは普通のドイツ市民がユダヤ人殺害に関わっていく姿が克明に描かれていた。見た後もなかなか現実には戻れなかった。人間が狂気に陥ることは現在に於いても無縁ではないと改めて感じた作品だった。
ちくま学芸文庫『増補 普通の人びと:ホロコーストと第101警察予備大隊』クリストファー・R・ブラウニング著、訳を谷喬夫で再販が決定したらしい。
★監督賞
2位
Netflix『ナイアド その決意は海を越える』エリザベス・チャイ・バサルヘリィ、ジミー・チン監督/アメリカ/120分
遠泳スイマーを引退して約30年。ダイアナ・ナイアド(アネット・ベニング)は60歳になって、ずっとあるひとつの挑戦が、頭から離れなかった。それは「水泳界のエベレスト」と呼ばれるフロリダ海峡を横断するというものだった。
フロリダ海峡にはサメや毒クラゲの恐怖や、激しい湾流などがあってオーシャンスイムの最難関とされいた。そこを泳ぎ切るには想像を絶する困難を乗り越えなければならない。
それでも世界初の名乗りを上げるため、サメよけのケージも使わずに生身で泳ぎ切ることを決意したダイアナは大親友でありコーチでもあるボニー(ジョディ・フォスター)とともに4年の月日をかけて挑戦に乗り出す。
もう10年以上前に『ドーバーばばぁ 織姫たちの挑戦』という日本のドキュメンタリーがあって、54歳から67歳までの女性6人が、親の介護や家族の世話という日常を抱えながら、2日間でドーバー海峡を泳いで横断するリレーに挑んだ姿を追った作品があった。そこには、チャレンジするまでの葛藤も克明に描かれていた。
そして、Netflix(劇場一般公開の後、Netflixで上映)で見たのはもっと厳しい状況下の中で一人で泳いだナイアドさんをモデルに大女優のアネット・ベニング、ジョディ・フォスターさんが、シミだらけシワだらけの美しいお顔で画面いっぱいに演じてくれた。その勇気も、頑張って泳ぎ切った行動力にも感服した。人生で「何か成し遂げたい」という意志の強さに頭が下がった。
エリザベス・チャイ・バサルヘリィ&ジミー・チンは夫婦監督。アカデミー長編ドキュメンタリー賞を受賞した『フリーソロ』や『MERU メルー』など、挑戦する人々のドキュメンタリーを多く手がけている。
★ご夫婦監督賞
★アネット・ベニング、ジョディ・フォスターのお二人に主演女優賞
3位
Netflix『ロスト・ドーター』マギー・ギレンホール監督、脚本/アメリカ/122分/2021年12月末公開
海辺の町へバカンスにやって来た大学教授の中年女性レイダ(オリビア・コールマン)は、ビーチで見かけた若い母親ニーナ(ダコタ・ジョンソン)と幼い娘の姿に目を奪われた。
レイダの母娘(ジェシー・バックリー)との関係を思い出した彼女は、自分が母親になった時の恐怖と混乱に満ちていた頃の記憶に押しつぶされそうになって……。
オリビア・コールマンの魅力が小さなiPadの画面からも十分堪能できた。ミッキーも子育て(レイダと一緒で娘2人)の時、どこか行って静かなところでゆっくり寝たいとよく思った。亡き母がイライラするミッキーを見て「2、3日なら預かるよ」と言ってくれたが、自分のやり方で育児自体を人任せにしていなかったので、余計ストレスになると思って任せる気持ちにはならなかった。
この映画で言うとニーナに考えが似ている。そうこうしているうちに子は大きくなり、主役が脇役……先は仕方なく通行人?
思えば「母性」より「我」の映画と思ったが、こんな素晴らしい映画を見過ごしていたとは驚きだった。
オリビア・コールマンを主演に迎えた「ロスト・ドーター」で長編監督デビューした女優さんのマギー・ギレンホールさん。脚本も手がけてベネチア国際映画祭で最優秀脚本賞を受賞、アカデミー脚色賞にノミネートされた。旦那様は俳優のピーター・サースガードでこの作品にも出ている。
★新人女性監督賞
Netflix『ステップファーザー 殺人鬼の棲む家』ネルソン・マコーミック監督/アメリカ/101分
継父として裕福な母子家庭に潜り込み、バレそうになったり嫌気がさしたりしたら殺して逃げるという殺人鬼の男の恐怖を描いたサスペンススリラー。
士官学校に行っているマイケル(ペン・バッジリー)が実家に戻ると、母(セラ・ウォード)は新しい恋人デビッド(ディラン・ウォルシュ)と暮らていた。デビッドに反感を持ったが、士官学校から逃げ出したいマイケルは、それに賛成してくれる継父にあまり逆らうことはしなかった。しかし、一緒に暮らすうちに不審な点が浮かび上がってきて……。
恋は盲目……お母さんが恋に落ちた男性は「殺人鬼」。この男、殺人が目的ではない。きっと家族形態に憧れを持って「子連れ」ばかり狙うのかな。身元がバレそうになるとすぐ殺す単純ストーリーだが、けっこう身を入れて最後まで見入った。
人を騙すならもっと前準備を丁寧にね…‥と言いたいところだが、嘘を突き通すのは至難の技。終わり方が「悪事がバレて警察に」じゃあないところがミッキーのツボだった。危なっかしい展開だがけっこう好きな作品だった。
Netflix『ナルヴィク』エーリク・ショルビャルグ監督/ノルウェー/109分
第二次世界大戦。ノルウェーは「中立」を宣言していたが、ノルウェーの北極圏寄りでスウェーデンと国境を接しているナルヴィクの小さな港町は、兵器産業の鉄鉱石の出荷地として重要な地でドイツやイギリスと共に関係があった。しかし、この中立であるはずのナルヴィクに突然大爆発が起こる。
この町で、ひとりの兵士・グンナルとその妻・イングリット、幼い息子・オーレ、グンナルの父親らが、戦乱の中、家族、幼い息子を守るための行動するが……。
未公開の作品。今は一般公開並みになったNetflixだが、これは俳優さんたちが有名な方はいないからだろうか、たくさんの人に劇場で観てほしい作品だった。
特に撮影地が多分、ナルヴィクだと思うが、当時のニュース映像や町並みに見応えがあった。
ナルヴィクが解放されるまでの兵士グンナルとその家族の物語で、ホテルの食堂を仕切っている妻イングリットはドイツ語ができたことが仇になって、思いもよらない人生を歩むことになる。
スパイ行為も幼い息子の病を治すためだったり、ドイツ兵の心情を理解したりで微妙な立場に置かれてしまう。夫の死亡の報を受けて傷心したショックもあって、かのzの身の振り方も一層同情してしまった。ノルウェーの歴史の勉強にもなった。
★映像賞
★グルナンの父親役に助演男優
Netflix『オンブレ・デ・アクシオン 伝説のアナーキスト』ハビエル・ルイス・カルデラ監督 /スペイン/111分/2022年
スペインで生まれたルシオ・ウルトゥビア(フアン・ホセ・バレスタ)は、少年時代に病身の父親のために薬を買うお金がなく、銀行にお金を貸してもらおうと掛け合うが無下に断られてしまった。その後、父親は亡くなり銀行への恨みだけが残った。
姉はフランスにメイドの職を得て行くことになって自分も連れて行ってくれと懇願するが、兵役がすんでから来なさいと行ってしまう。
それから10年、彼は軍の倉庫の品を盗み出すなど悪事の末、軍を脱走してフランスに渡った。姉は結婚していて夫は造幣局に勤める真面目な男で「うちは技術者だけしか勤められないが、他でよかったら仕事を世話をする」とレンガ工場で働くことになった。
そこでアナーキストたちと知り合って、その後、銀行ギャング、偽札作り、トラベラーズチェックの偽造など権力に抵抗するかのように生きていく。
実在の人物で2020年に90歳手前まで存命。アナーキストといえば日本では大杉栄(1885-1923)だ。
ルシオは少年の頃に薬代を貸してくれなかったら包丁で銀行支配人を刺そうと思ったぐらい向こうっ気が強く、軍隊では物資横流し、偽札、旅券偽造など見方によっては「詐欺師」だ。
それがそう言われず「貧乏人の立場にたってくれた人」と位置づけられた理由を、この映画で教えてくれた。
大金を盗んでも三等分して、一つはアナーキスト運動のため、一つはアナーキスト運動で捕まった家族の生活費、一つは実行した者たちに等分に分ける という規律をずっと守り、仲間の信頼を得た。
精巧な偽札を尊敬するチェ・ゲバラに使ってもらおうと密かに面会を求めて(トイレで1分ぐらい)会うが「これぐらいの金ではアメリカはびくともしない」と言って一枚だけポケットに入れて出て行った。
★Netflixドキュメンタリー賞
Netflix『キル・ボクスン』ビョン・ソンヒョン監督、脚本/韓国/137分
一流の殺し屋で、シングルマザーのキル・ボクスン(チョン・ドヨン❗️)は、今日も日本人ヤクザ・織田真一郎(ファン・ジョンミン❗️)を手際よく殺害。そんな彼女も家に(豪華マンション)帰ると、娘・ジェヨン(キム・シア)に手こずっている。思春期か反抗期かわからないが、自分に心を開いてくれず、子育てに悩んでいた。
ボクスンは殺し屋たちが集まる馴染みの居酒屋へ行っても、後輩や他社の殺し屋たちから生ける「伝説」として尊敬されていて、彼女が所属する暗殺請負会社・MKが注文を独占するので、みんな食っていくので精一杯だった。ボクスンの後輩・ヒソン(ク・ギョファン)も弱肉強食の業界の先行きを心配していた。
身体の衰えを感じていたボクスンは契約満了で退社を考えていたが、チャ代表(ソル・ギョング❗️)はボクスンを手放そうとはしなかった。
そんななか、ボクスンはある暗殺を請け負ってしまったせいで窮地に立たされて……。
豪華韓国スター(❗️の3人で3本分の映画ができる)、殺しのアクション、親子関係、会社組織の対人関係と上下関係、昔の因縁等々のバランスがよくて、魅入ってしまった。最後の収まりもよかった。掘り出し物のNetflix。
Netflix『カレー&青酸カリ ジョリー・ジョセフ事件』クリスト・トミー監督/インド/95分
ジョリー・ジョセフは小柄で目鼻立ちがくっきりした美人。貧しく育った彼女は学歴を偽って都会に住む名家の青年と結婚。高学歴ならと許された結婚だったが、この女性、外で働くより家にいて主婦をしていたいタイプで、義理の母から「家のことはいいから、お勤めしなさい、あなたは大学まで行っているのだから、職業を持つべきよ」と進歩的な意見を度々言うのがストレスになっていた。
そんなある日、田舎にいる実父が遊びに来ることになって、絶対に学歴のことがバレる思って……。
とある名家一家で6人もの命が犠牲となった衝撃的な事件。この信じられない悲劇を検証し、事件の中心にいた女性ジョリー・ジョセフの実像に迫る犯罪ドキュメンタリー。
これ、調べようとサクサクしたら和歌山の例のカレーの事件がゾクゾクと出てきたが、この事件のことは出ていない。
一人目は義母、その7年後に祖父、急に苦しみ出して「心臓発作」とみなされてバレなかった。間が空いているから当然だ。3人目が夫。
その時、名家の叔父が死体解剖を要求したことで、嫁が怪しいと睨んだが、4人目にその叔父も……。
ただ、夫の妹は兄嫁の態度が1人亡くなるごとに、名家一家の「主婦」として、性格が変わってきたのを不思議に思っていて 父母が亡くなってからは実家に行くことは無くなったと悔やんでいた。
当然、捕まって弁護士がついたが、その弁護も本当の証拠というものが、曖昧の部分があると力説していた。
Netflix『アイスコールド 殺人とコーヒーとジェシカ・ウォンソ』ロブ・シックススミス監督/インドネシア、シンガポール/86分
2016年。若い女性ジェシカ・ウォンソは、インドネシア・ジャカルタの高級ショッピングモール「グランド・インドネシア」1階にあるカフェ「オリビエ」で、友人のワヤン・ミルナ・サリヒンさんと会う約束をしていた。予約しておいたテーブルに1人先に着き、アイス・ベトナムコーヒーを彼女の分まで注文。支払いを済ませた後、猛毒のシアン化ナトリウムを入れ、毒入りコーヒーをミルナさんに飲ませ殺害した。という事件が起こった。
親友だったミルナ・サリヒンの死から数年。今なお多くの疑問が残るジェシカ・ウォンソの裁判を改めて検証するドキュメンタリー。
インドネシアの裁判は金次第と登場した方が言っていたが、本当にどの通りだった。ちゃんとした証拠がないのに有罪だ。
猛毒化シアンナトリウムをその量でアイスコーヒーに入れると「周りのひとは気絶します」という毒物研究者が裁判で言っても黙殺……。こんなやり方で今も刑務所に入っている(刑期は20年ほど)ジェシカさん。
興味本意で見たが、ジェシカさんの過去などの報道合戦や、大勢詰めかけて祭のようにも見えた裁判所など、大変な騒ぎになった事件だった。
ベトナムコーヒーはコンデンスミルクを入れて飲むガ、ミッキーもオーストラリアで飲んだことがあって、アイスコーヒーはとってもおいしかった。
Netflix『Familia 我が家』ロドリゴ・ガルシア監督、脚本/メキシコ/104分
田園地帯が広がる片田舎。ここでオリーブ農園を自営する初老の主人はひと月半に一度集まる子どもと共に食卓を囲みながら、家族の思い出が詰まった農園の将来について重大な話をするが……。
農園主は経済的にやっていけないし、自分も年だから売りたいというが、たまにくる娘たち3人は急な提案にびっくりする。農園主は妻(子たちの親)を亡くしてから恋人もいる。子は娘3人とダウン症の長男がいて、農園主はまだ少年の長男と暮らしている。
一家族といえども連れ合い、子らも含めてけっこうたくさんいて、事情もいろいろで頭が混乱した。夫と反抗期の子ども2人と暮らす娘、同姓の恋人を持つ娘(妊娠中)、作家を目指しているシングルマザーの娘と、3人3様の生き様も描かれている。
けれどダウン症の長男が一番独立精神があって、「ぼくは、お姉さんたちをどうしても兄妹とは思えない、おばさんって感じしか持てない」と言い、「パパが農園を売っても売らなくても、僕はここを出て行きたい」とはっきりと父親に伝えていた。
3人はパパが亡くなった後、長男を誰が見るの?と相談していたが、とんだ「世話焼きおばさん」だ。長男が一番大人に感じた。p
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2024年01月08日
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