🎬『メンゲレと私』クリスティアン・クレーネス、フロリアン・バイゲンザマー監督、脚本、製作/オーストリア/96分
リトアニア出身のユダヤ人ダニエル・ハノッホは、9歳の時に家族と別れ、ただ1人、カウナス郊外のゲットーに送られた。12歳でアウシュビッツ強制収容所に連行された。
金髪の美少年だった彼は、非人道的な人体実験を繰り返したヨーゼフ・メンゲレ医師の寵愛を受け、特別待遇の収容所生活を送る。
しかしダニエルが見た真の地獄は、終戦間際に連合軍の攻勢から逃れるため捕虜たちが強制的に移動させられた「死の行進」だった。
ダニエルはそこで、暴力や伝染病、カニバリズムといった人類史の最暗部を目の当たりにする。
スクリーンに映るご老人の上品な顔立ち、トツトツと語る口もとからは当時「見たまま」の真実が語られている。
昔は美少年だったと思われるお顔で「自分が生きながらえたのは、無関心を装うことに尽きた」と諦めにも似た表情が印象的だった。
だがカニバリズムの件になると「このことは今まで誰も語ってこなかった……タブーなんだ」と口篭っていた。
途中、10回ほど貴重な当時のフィルム(1分以内)が映される。初めて見る映像ばかりで、これだけでも観る価値はある。
2023年11月19日
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