江戸時代末期、武家の家柄の出であるおきく(黒木華)は、今は長屋に住み、寺小屋を開き子どもらに読み書きを教えていた。
そんなある日、厠(かわや=便所)のひさしの下で雨宿りをしていた時、紙くず拾いの中次(寛一郎)と下肥買いの矢亮(池松壮亮)に出会う。3人は次第に親しくなっていくが、ある日、父親絡みの殺傷事件に巻き込まれ、おきくはのどを切られ声を失ってしまう。

『一度も撃ってません』『冬薔薇(ふゆそうび)』などの阪本順治監督が、黒木華を主演にしたモノクロ青春時代劇。
こんな時代劇初めて。今週の週刊文春のクローズアップのページに、阪本監督が「汚いものから世界をみたら市井の物語にできると思った」と語っていた。
ミッキーの小さい時はお百姓さんが糞尿を桶で汲み取ってくれて、お礼に野菜などを置いて行ったらしい。それから15年後にバキュームカーになった。名古屋に来てからは水洗便所だった。
江戸時代の肥え汲み作業の様子は想像以上に汚いが、その汚さは「人間が生きている」そのもので、それを生業としている男は達観した面持ちで汗を流して働いていた。
3人は「世界」という言葉も、その意味することも知らず、自分たちの生きる「世界」でめげずに真っ当に生きている姿が眩しかった。