2023年01月05日

2022年ホラー映画ベストテン

ホラー映画ベストテン(1位から3位あり、その他は順位なし)

1位

🎬『ポスト・モーテム 遺体写真家トーマス』ピーター・ベルゲンディ監督、脚本/ハンガリー/116分

第一次世界大戦で自身の生死体験を元に死体と遺族を撮影する「遺体写真家」の男・トーマス(ビクトル・クレム)は街のバザールで死体写真を売って生活していたが、そこに来たある村の男たちや美しい少女アナが「死体なら村にいっぱいあるよ」という言葉に誘われて行ったところ、戦争で死んだ者やスペイン風邪で亡くなった人々が埋葬されずに寝かされていた。

凍土のために穴が掘れるまでこのまま置いておくらしい。死体は腐らない状態で置かれていて、1人ひとり家族と共に、まるで生きているように写真を撮るトーマスだったが……。

今までに中国のインディペンデント映画で「死体と結婚する冥婚」の作品は観たことがあるが、遺体と一緒に写真を撮って、たいそう喜んでもらっているのは初めて。

ちょっと固くなった体を捻じ曲げて椅子に座れせて、髪をとかし、化粧して、写真を撮る……その様子はホラー好きには堪らないシーン。だけど、それは序の口で……書けるのはここまで。未体験ゾーンに閉じ込めておくには勿体ない作品だ。

2022年アカデミー賞国際⻑編映画部⾨ハンガリー代表作に選定された。ホラー映画として異例なこと。

ホラー大賞❗️

2位

🎬『LAMB ラム』バルディミール・ヨハンソン監督、脚本/アイスランド、スウェーデン、ポーランド/106分

山間に住む羊飼いの夫婦イングヴァルとマリア(ヒナミル・スナイル・グブズナソン&ノオミ・ラパス)が羊の出産に立ち会うと、羊ではない何かが産まれてきた。子どもを亡くしていた2人は、その「何か」に「アダ」と名付け育てることにする。アダとの生活は幸せな時間だったが…。

ひさしぶりに気味悪い映画を観た。まいった。主演がノオミ・ラパスだから一層気味悪かった(ほめている)。妻は亡き娘の名をつけて猫っかわいがり(ラムかわいがり?)して、もう大変。夫もそんな妻を支える。

悪い親なら見せ物にして大儲けだが、話はそうならない。見てのお楽しみだが、ホラー度は低いが、この作品の気味悪さは消化不良になって身体に沈殿しそう……。

監督賞 羊や羊を追う犬にも表情があってアニマル賞

3位

🎬『ニューオーダー』ミシェル・フランコ監督、脚本/メキシコ、フランス/86分

裕福な娘マリアンの結婚パーティの日で幸せの絶頂にいた。式場になる超豪邸には、結婚を祝うため親族や政財界の名士たちが集まっていた。そんな中、屋敷の外では貧富の差に対する抗議運動が暴動化して、マリアンの家も襲撃されてしまう。

凄い映画だった!宣伝もなく見慣れない題名と気づいたら最終の週になっていた。観客も50人近く入っていた。会社帰りの男の方で、お一人様が多かった。名作だったからじわじわと広まったに違いない。

メキシコの一握りの大金持ちと貧困の庶民。中間はないみたいだ。あえていうなら中間層は大金持ちの召し使いか警察官ぐらい。それも最終的にはお互いは信じ合えないという後味の悪い作品だったが、スピーディーな展開、分かりやすい構図で大満足した。もう一度みたいくらいだが、どうも明日で終わり。

作品賞


🎬『X エックス』タイ・ウェスト監督、脚本、編集/アメリカ/105分

よぼよぼの老夫婦の住む農場には離れ小屋(数人が泊まれる)があって、泊まりたい人は電話をかけて予約をとるようになっているが、人里離れていて名所など皆無でほとんど客はいない。周りには大きな池があって「ワニ」が棲んでいる。

そこにポルノ映画を撮ろうと機材やスタッフ、無名の俳優たち5、6人でやって来た撮影隊。貸し主の老人は「一人ではなかったか」と怒るが「余分に払うから頼むよ」と許可をもらう。しばらくして徘徊、性的妄想がある家主の老妻がふらふらと離れ小屋をのぞき見していて……。


始まりが警察のパトカーが老夫婦の家を捜査しているので、結末はわかってしまうのがちょっと残念。でもポルノ映画撮影と知らずに来た女優がいたり、録音技師の若い女が「私も出てみたい」と言い出したりで撮影も途中まではうまくいった。

その後、一人減り、二人減りと老夫婦の……書けるのはここまで。軽い感じの納涼ホラー。

脚本賞

🎬『声 姿なき犯罪者』キム・ソン&キム・ゴク監督/韓国/109分

釜山の高層ビル建設現場で転落事故が起き、作業員が宙づりになってしまうが現場監督のソジュン(ピョン・ヨハン)が救出した。少しして彼の妻(ウォン・ジナ)の元に弁護士を名乗る男から電話が入る。

「ご主人の過失で作業員が亡くなりました。ご主人は警察に逮捕されています。示談を成立させますので、その費用7000万ウォンをお願いします。時間がないので銀行口座を教えてください。こちらで引き落ちします」と言う。

一度確かめますと言って夫の携帯にかけると不通で、建築会社かけると慌てている雰囲気で「事故があって、ご主人は警察です。今立て込んでいるにで後から」とすぐ電話が切れた。妻は疑りもせずに銀行口座番号を教えてしまう。

練りに練った詐欺集団(150人ほど)の悪知恵でまんまと引っかかる人たち。特にすごいのは、一流銀行に合格した(最終選考に残った名簿を手に入れて、まだ合否が決まらない前に電話する)男女に「発表はまだないがほぼ合格している、だが借金があるのでマイナス点がついてしまう。すぐにここに振り込んだら、こちらから返済したことにするから」と言って騙す手口。午前中だけで10 億円、午後からも10 億円(日本円の価値で )が入金されて、全員でエイエイオーとやっている。

ソジュンは元警官で、あてにできない警察を見限って、元同僚の情報えお助けにして、潜入もする。アクション的には雑な部分があったが、詐欺集団のやり方がすごいのでサスペンス度は高い。

ピョン・ヨハンさんに主演男優賞


🎬『シークレット・マツシタ 怨霊屋敷』ドリアン・フェルナンデス=モリス監督、製作、脚本/ペルー/77分

南米ペルーの首都リマに、その昔、日系一家が暮らしていたという屋敷「マツシタ邸」は今では荒れ放題で幽霊屋敷と言われていた。そこは凄惨な事件が起きた邸で、数々の超常現象も目撃されていた。その邸に大学生の撮影グループが潜入したが……。

珍しいペルーのホラーで、マツシタという日本名だから茶屋まで観に行った。そう怖くないホラーなのでホラー初級向け。

東京都内の3館限定で、マツシタさんの鑑賞料金が無料になる。実施されるのは、ヒューマントラストシネマ渋谷、池袋シネマ・ロサ、新宿シネマカリテの3館。 

🎬『ハッチング ー孵化ー』ハンナ・ベルイホルム監督/フィンランド/91分

フィンランドの木々の多い静かな住宅地で暮らす12歳の少女・ティンヤ(シーリ・ソラリンナ)の家族は、完璧で幸せな家族の動画を世界へ発信することに夢中な母親(ソフィア・ヘイッキラ)とそんな妻を頼りにしている温和な父親(ヤニ・ボラネン)、目ざとい弟の4人暮らし。

ティンヤは体操を母親の指導のもと、大会に向けて日々頑張っていたが、ある夜、彼女は森で奇妙な卵を見つける。家族には内緒で、自分のベッドで温め続けた卵は、やがて大きくなり、遂には孵化して……。

美しい少女が巣に落ちていた鳥の卵を興味本意で温めていたら……、説明しようとするとすべてがネタばれになるので書かないでおくが、一つだけ言いたいのは少女のまわりの大人たちが「現実的」に描かれている。

女性監督賞

🎬『ヴィーガンズ・ハム』ファブリス・エブエ監督、脚本/フランス

結婚して30年になる肉屋の夫婦ヴィンセントとソフィー(ファブリス・エブエ&マリナ・フォイス)は、結婚生活も家業の経営も破綻の危機にあった。

そんなある日、店がビーガン(徹底した菜食主義者)活動家たちに荒らされ、ヴィンセントが犯人の1人を殺害してしまう。死体の処理に困ったヴィンセントは、ハムに加工して証拠隠滅を図るが、そんなことなど知らない妻ソフィーがお客に売ってしまう。

だがそのハムは思わぬ人気商品となって……。

妻は儲かることをいいことに、夫婦で人混みに出かけて「生ハム!の仕入れ」に躍起になる。夫はもう止めたいと言っても聞かない。でもハムからペースメーカーのハシキレが出てきて……あ〜それさえ注意していればバレなかったのに。肉屋夫婦に妙に肩入れしてしまった。

🎬『カウンセラー』酒井善三監督、脚本/42分

友人たち数人で心理カウンセラーをしている倉田真美(鈴木陸海)は妊娠6ヶ月。明日から産休に入り今日が最後の相談日だった。相談者も帰ったすぐ後に、予約もない相談者吉高アケミ(西山真来)が来院した。

事情だけ聞こうとカウンセリングルームに通し、住所、氏名を書き入れる用紙に記入してお待ちくださいとお茶を入れに階下に降りる真美。さあ話を聞こうと用紙をみると白紙だ。彼女は「妖怪が見えるんです」と陰気な経験を話し始めて……。


短編より難しい42分の中編映画。なかなか印象に残る作品は少ない。だがこの作品の緊張感が半端ではない。2回オンラインで見たが不安感は増量していて、ホラー好きなミッキーもギョッとするシーンが一瞬あった。

心理カウンセラーという格好良さそうな仕事名の裏に潜んでいる危うさがじわーっと伝わってきて、これ、42分で助かった、というのが本音だ。

真美も不安感に飲み込まれて行くが、ミッキーも手指の洗い方や妊婦さんが階段を上下することに不安を覚えた。

🎬『牛首村』清水崇監督、脚本/115分

東京に暮らす女子高生の雨宮奏音(Koki,)は、心霊動画に映る自分にそっくりの女子高生を見つける。その少女は牛の首のマスクをかぶせられていて、廃虚に閉じ込められようとしていた。

不安に思った奏音は動画が撮影された「坪野鉱泉」に向かう。「牛首村」と呼ばれる村に昔からある奇習に驚く。

主演はKoki,さん。その美しさに驚いた❗️周りの方々がかすんで見えた。この美しい姿とつり合った演技を見るだけで『牛首村』はヒットすると思った。

昔は双子を産む女性を畜生腹と言っていたのは知っていたが、これの発端もそうだった。そんな田舎の不気味さをベースにうまく作られていた。

ホラーとしては「音」オドシはない。1人2役のKōki,さんを見るだけでも映画代の元はとれそう。

主演女優賞
posted by ミッキー at 17:46| Comment(0) | ベストテン | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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