1920年。大型貨物船の船長のヤコブ(ハイス・ナバ―)は体の調子が悪く食欲もない。船の料理長が心配して「結婚した方がいい」と言われたので、陸に降りたところにあるカフェで、この店に最初に入ってきた女性と結婚すると昔からの友人に言った。
現れたのはリジー(レア・セドゥー)という不思議な雰囲気を持つ美しい女性で、ヤコブは彼女に結婚を申し込む。女は驚く様子もなく職業や名前を聞いて1週間後に結婚を約束してくれた。そして週末、ヤコブとリジーは2人きりで結婚の儀式を行う。

しっとりした素敵な映画だった。女がレア・セドゥーだから男は有頂天な気持ちを押さえて紳士的に振る舞っていた。
しかし自分と2人だけの時の彼女と、友人たちと過ごしている彼女の「違い」に戸惑ってしまうのだ。彼女が親そうに話す相手に嫉妬したり、浮気しているのではないかと疑ったり気が休まらなくなる。船長の仕事で長く別れる月日があって余計に妄想が激しくなって行く。
私立探偵に調べさせても何も出てこなかったが、信じることができない男。最後の幕切れではじめて知る女の気持ちに呆然とするが……。
主役2人の心理描写がとても深く、丁寧に描かれていた。
★ハンガリーの女性監督イルディコー・エニェディの前作『心と体と』で、第67回ベルリン国際映画祭金熊賞を受賞。