
🎬『揺れるとき』サミュエル・セイス監督/フランス/93分/日本初上映
早熟な少年ジョニー(アリオシャ・ライナート)が主役。母親は売店を開いていて父親はいない。兄は十代で同棲していて別居、10歳の少年は5歳ぐらいの妹の世話をしている。だから少年がいなくては生活はできない状態。
学校には惰性で行っていたが、新学期に新しい先生(アントワン・ライナルツ)が赴任してきてからは彼に親しみ以上のものを感じて……。
少年ジョニーを演じたアリオシャ・ライナートの体つきはバレーダンサーのようで、若き日のグザヴィエ・ドランの面影もあった。きっと彼自身の内面には大人びた感覚を持っている少年と思った。
自分を知らない世界に連れてってくれる大人への憧れ、同性愛の目覚め、子どもなのに家で重要な役割を持っているヤングケアラーのことなどがバランス良く描かれていた。
🎬『UTAMA〜私たちの家〜』アレハンドロ・ロアイサ・グリシ監督、脚本/ボリビア、ウルグアイ、フランス/87分/日本初上映
ボリビアの高地にある小さな村に住むケチュア族の老夫婦ビルヒニオとシサは、ラマの放牧をして暮らしていた。だが1年もの間、雨らしい雨が降らず深刻なな状況になっていた。井戸は枯れて遠くの川まで水汲みに行くのはシサの役目だった。
ラマの角につけたピンクのリボンが愛嬌があって美しい。だが生活は非常に厳しく食べ物はパンだけ。ラマが死んだ時だけ肉を口にする。
ビルヒニオは顔立ちも険しく誇り高い精神を持った男で絶対に人の言うことなど聞かない。長男は町に住んでいてビルヒニオとは仲が悪く、孫の青年が様子を見にきた。時折、ひどい咳をする祖父ビルヒニオを心配して町で一緒に住もうと言うが頑として聞く耳を持たない。
孫が来るまでに何回も咳き込んでいたが、妻のシサは気にもしていなかった。それが不思議だったが、いつも一緒だとこんなもんだ、と思っていたのだろうか。言っても聞かない人と思っていたのだろうか。
最後まで一滴の雨も降らず幕となっているが、それからどうなるのか心配になった。