2021年 ベストテン シネマスコーレ・スタッフ 伊藤 新悟さん
※ 下記ネタバレを含む箇所がありますのでご注意ください。
1位『夏への扉 キミのいる未来へ』
配給/東宝、アニプレックス 監督/三木孝浩 上映時間/118分
時間冒険を描いた元祖、ロバート・A・ハインラインの小説「夏への扉」をもとに、物語は1995年から2025年までの日本に置き換えて、時空を超えた冒険譚に青春映画の要素をプラスして再構築。タイトルが小説のまま「夏への扉」なのも素敵。
時を超えて璃子(清原果耶)と出会うため、ひたむきに前を向き挑み続ける工学者の主人公、宗一郎(山ア賢人)のひたむきな姿は胸を打つ。作品の色味が淡いグリーンとブルーを意識しているようで、視覚的にも青春の色を感じられた。
ヒロイン璃子を演じた清原果耶は凛とした理想のヒロイン像を見事に演じていた。
90年代パートではMr.Childrenの93年リリースの大ヒット曲「CROSS ROAD」が効果的に挿入され、エンディングではLiSAの「サプライズ」が感動的に物語を締めくくる。
2月からの公開延期を経て6月に無事劇場公開。鑑賞後、劇場を出るとどこまでも続くような初夏の青空が広がっていた。
2位『浅草キッド』
ネットフリックス映画 監督/劇団ひとり 上映時間/120分
監督は芸人でもある劇団ひとり。初監督作「晴天の霹靂」は大好きな作品だ。
あれから7年、待望の2作目もやはり素晴らしかった。
昭和、フランス座に弟子入りするたけし(柳楽優弥)とその師匠深見(大泉洋)との子弟関係を描いている。
師匠深見を演じた大泉洋。彼は弟子思いで、飄々としていながらも実はまわりには気づかいを忘れない。そんな人情の人を魅力的に演じていた。
師匠のタップダンスを見よう見まねで、若き日のたけしが習得していく過程での師匠との掛け合いは素敵なワンシーンでした。
劇団ひとりは監督2作目ですでに必要なシーンの取捨選択が上手く、ボリュームある内容を2時間の上映時間でまとめ上げている。
3位『オールド』
配給/東宝東和 監督/M・ナイト・シャマラン 上映時間/108分
監督M・ナイト・シャマラン。アッと驚くストーリーテラーでもあり大好きな監督の一人だ。ノベル「Sandcastle」がインスパイア元となっている。
外部から切り離された岩場に囲まれたシークレットビーチを訪れた人々。そこは30分で1年分の時間が経過し、老いてゆく恐ろしい場所であった。異常に気づいた彼らの体には異変が起き始める。彼らはビーチから決死の脱出を試みる。
早く時が過ぎゆくビーチの正体は、富裕層による寿命延命のための新薬開発の実験場というのはとんでもない発想だ。
新薬を服用し、人体にどのような結果が出るのか?その成果を即座に判断できてしまう。
このようなストーリーとその結末をよく考えつくものだと感心してしまう。
撮影は2020年。コロナウィルスの猛威のなか感染対策は手探りの中で撮影が決行されたというから、映画製作を止めないという並々ならぬ熱意と意欲を感じる。
4位『まともじゃないのは君も一緒』
配給/エイベックス・ピクチャーズ 監督/前田弘二 上映時間/98分
普通って、なに?成田凌が演じるどこかズレている塾講師の大野と清原果耶が演じる自分は普通だと思い込んでいる高校生の香住。映画は二人の嚙み合わない様をおかしくユーモアたっぷりに描くコメディ。
場内にクスクスとした笑いが起きる奇跡のような上映回で鑑賞できた。
監督前田弘二の緩くじわじわとくる笑いの演出と高田亮の脚本からなる、成田凌と清原果耶のしゃべりっぱなしの掛け合い。
特に清原果耶のセリフ量に加えてシーンごとの表情の豊かさ、演じるのはさぞ大変だったろうなと想像してしまう。
5位『アオラレ』
配給/KADAKAWA 監督/デリック・ボルテ 上映時間/90分
ヤバイ映画登場!我が子を日々奮闘して育てるシングルマザーのレイチェル(カレン・ビストリアス)、その日の朝、渋滞に巻き込まれ仕事に遅刻寸前。前方の車が動かいないことにクラックションを鳴らしたら・・・ヤバイ男(ラッセル・クロウ)の車だった!がしかし彼女の気の強さも半端ではではなかった!
2人の暴走する狂気が小さな町を恐怖に叩き落す。巻き込まれた善良な市民、彼女の親族などなど、とんでもない悲惨な目にあってゆく。
熊のごとく巨漢のラッセル・クロウが自暴自棄に陥って、暴走したら悪夢ですよね。
マジですか!?の連続、このモンスター2人の暴走の果てに待ち受ける結末とは?エンドロール込みで90分!タイトな上映時間に緊張感の緩みはなし!
それにしても最後に生きたまま火だるまにされた男性が助かり生きていたという展開。死んだと思っていたし、生きていたほうが残酷なのではと思わずにはいられない(涙)
6位『シティーコップ 余命30日?!のヒーロー』
配給/アルバトロス・フィルム 監督/タレク・ブダリ 上映時間/90分
マスク着用、発声禁止がマナーの世の中に全力で笑わせにくるフランス産のコテコテのコメディ映画。
監督・主演はタレク・ブダリ。余命数日と診断されたポンコツ刑事の悲しすぎる暴走と奮闘をコミカルに描く。高所の火災現場から飛び降りたら下に待っていたのは巨大なマット。落ちてポーンと吹っ飛ぶ・・・車の下部にしがみつき相手を尾行中に車が動物のうんこ弾き、それが顔にヒットして大惨事!などなど。お下劣度とおバカ度が高く、くだらない笑いを全編に散りばめる。
脇役の金髪イケメン、フィリップ・ラショーは手違いで豊胸手術がなされ巨乳なってしまう。監督、役者、脚本家として多彩なラショーの笑いの感覚はものすごく好みで、「真夜中のパリでヒャッハー!」からずっとブレることはなく魅力的。
満席で大爆笑が沸き起こる、そんな上映ができる日、来るといいな。
7位『すべてが変わった日』
配給/パルコ ユニバーサル映画 監督/トーマス・ベズーチャ 上映時間/114分
ケビン・コスナー×ダイアン・レイン×1960年代が舞台のサイコスリラー。
子連れの義理の娘が再婚。嫁いだ先はクレイジーでサイコな女家長と男たちが街をも支配し、日々暴力が渦巻く一家だった。
元保安官のジョージ(ケビン・コスナー)と気が強いマーガレット(ダイアン・レイン)の老夫婦が義理の娘と孫を暴力から奪還すべく熾烈な旅路に身を投じる。
旅路の途中グイグイと物語を引っぱるのがマーガレット。終盤のあるワンシーン。ジョージは手を切断する大惨事が描かれる。この一連の緊張感漲る場面に目が離せない。
クライマックスには、燃え盛る家屋での大立ち回り。両者の譲れない正義と狂気が正面からぶつかる。円熟の俳優たちによるダイナミックな展開に魅了され、痺れる!
8位『マリグナント 狂暴な悪夢』
配給/ワーナー・ブラザーズ映画 監督/ジェームズ・ワン 上映時間/111分
大音響のスタイリッシュなオープニング。何かが始まる予感が大いに感じられる。
冒頭。乱暴者の彼から突き放されて、壁に頭を打ち付ける主人公(アナベル・ウォーリス)この何気ないシーンがとんでもない布石だったとは!後半に愕然とすること間違えなし。
彼女が殺人の起きる悪夢を見れば、それが実際に起きてしまう。やはり鑑賞序盤はもうひとつの人格が・・・という話なのでは?が頭をよぎる。
本作は1つ1つのシーンのテンポがすこぶる良く、中盤からは違和感なく物語に没入できた。そうしていると衝撃のクライマックスは幕をあける。連続殺人鬼G、衝撃の正体とは?主人公の後頭部の中から、もうひとりの人物が顔を出す! (ビジュアル的に凄いです!)
主人公の意識を乗っ取り、バキバキ!ボキボキ!!と大覚醒した後の大立ち回り。血みどろスプラッター+カッコイイカメラワークのアクション!テンションがバーンと上がりきり、もはや笑ってしまうほど。まさに大どんでん返し!
刺激的(R18+)で独創的な物語を紡ぎたい。オリジナル脚本で攻める監督ジェームズ・ワンの思いビンビン伝わります。
9位『あの頃。』
配給/ファントム・フィルム 監督/今泉力哉 上映時間/117分
あの頃。自分も映画館に出かけるときに一緒に映画を観にゆく友人たちがいたな。 大好きなことを共有する仲間たちとの青春の日々を綴った物語はとても魅力的だった。
劔樹人の自伝的原作を脚本化したのは冨永昌敬。物語を巧みに演出し監督したのが今泉力哉。
松坂桃李がハロプロにはまってゆく主人公を劇中では歌唱も披露するほどの熱演。同じ年公開の今泉監督作「街の上で」にも出演している若葉竜也や田中青渚といった若手実力派キャストにも注目。
エンドロールで流れるモーニング娘。の「恋ING」。この映画の締めくくりを感動的に彩る良き曲ですね。
10位『モンスターハンター 3D字幕版』
配給/東宝、東和ピクチャーズ 監督/ポール・W・S・アンダーソン 上映時間/104分
2021年3月。コロナの影響で公開延期が続いていたハリウッド大作の1作が映画館に帰ってきた。
2019年12月に公開されたスターウォーズ最新作以来の3D作品がついに公開!初日、朝一番の上映回。ドルビーシネマ3D字幕版で鑑賞。
ドルビーアトモスの大音響、鮮明で明るい飛び出す3D映像で巨大モンスターが暴れまくる!大興奮!あぁ映画を大劇場で観ている感が満載。
2021年、新作洋画の3D版が公開されたのは「モンスターハンター」「ゴジラVSコング」と2作品のみだったはず。22年は作品数が充実するよう期待したい。
2022年03月01日
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