2022年01月02日

洋画ベストテン

洋画(3位以降は順位なし)

1位🎬『わたしはダフネ』フェデリコ・ボンディ監督、脚本/イタリア/作品賞
父のルイジと母のマリアと一人娘のダフネ(カロリーナ・ラスパンティ)は休暇のバカンスを楽しんでいたが、帰りぎわにマリアが倒れてしまう。すぐに病院に運ばれるが治療の甲斐なく亡くなってしまう。突然の母の死でダフネは泣き叫び狂乱する。父(アントニオ・ピオバネリ)は落ち着かせようとするが、彼女は興奮するばかりだった。マリアの葬儀が終わり普段の生活に戻る父娘。ダフネは勤務先のスーパーマーケットの同僚や友人の支えによって少しずつ平静さを取り戻し、明るい表情も出てきた。だが父は寂しさと不安で家業のアンティークのお店も閉じていて一向にお店を開けようとしない。そんな父の様子にダフネは母の故郷トスカーナに電車と徒歩で行こうと提案する。

★ダフネは明るい性格で社交的なダウン症の女性。スーパーで働き対人関係も良好。父と二人旅に出ても途中で出会う人たちと交流を重ねながら進んでいく。そんな父は最後に泊まった宿屋の女主人にダフネが生まれた時のショックを訥々と話始める。赤ん坊のダフネを見ることも抱くことも出来なかった……と。ハンカチではなくバスタオルのご用意を、と言いたいぐらい涙、涙。亡くなられたお母様の慈しみ深い育て方が、こんなにも素晴らしい女性に成長させていたのだ。旅から帰って、父に「これからはわたしを頼りにしてね」とプレゼントを差し出す。それは……。

2位🎬『ノマドランド』クロエ・ジャオ監督、脚本/アメリカ/監督賞/主演女優賞にフランシス・マクドーマンさん
ネバダ州の企業城下町で暮らす60代の女性ファーン(フランシス・マクドーマン)は、リーマンショックによる企業倒産の影響で、長年住み慣れた家を失った。キャンピングカーに生活用品を詰め込んだ彼女は、季節労働の仕事を転々と渡り歩きながら車上生活をすることにした。

★第93回アカデミー賞では計6部門でノミネートされ、作品、監督、主演女優賞の3部門を受賞した。車で移動して車中で生活する……憧れもあるが、それは自分の帰ることが出来る家があってこその「あこがれ」だ。映画は「その後」や「安定」を見せないまま終わっていたが「自分のできないことをファーンがやってくれている」そんな感情が湧いてきて「一人生きていく」勇気や難しさを優しく教えて貰った貴重な作品だった。

3位🎬『悪なき殺人』ドミニク・モル監督/フランス、ドイツ/脚本賞
吹雪の夜、フランスの山間の村で女性(バレリア・ブルーニ・テデスキ)が失踪した。事件の犯人として疑われた自閉症ぎみの農夫のジョセフ(ダミアン・ボナール)、彼と不倫関係にあった訪問介護職のアリス(ロール・カラミー)そして彼女の夫で畜産農家経営のミシェル(ドゥニ・メノーシェ)たちはそれぞれに秘密を抱えていた。

★この事件はフランスとアフリカのコートジボワールをつなぐミステリーに発展していく。開催された第32回東京国際映画祭では『動物だけが知っている(仮題)』(コンペティション部門で最優秀女優賞と観客賞を受賞)監督は『ハリー、見知らぬ友人』の方。
最高の群像サスペンス❗️最後のシーンで息をのんだ❗️この作品では殺し、騙し、浮気はあるけれど「悪人」はいない。

🎬『Summer of 85』フランソワ・オゾン監督、脚本/フランス/100分/新人賞にフェリックス・ルフェーブルとバンジャマン・ボワザン
セーリングを楽しもうと友人に借りたヨットで沖に出た16歳のアレックスは突然の嵐で転覆、18歳のダヴィドに助けられた。2人はやがて友情から恋愛感情になるが、アレックスにとっては初めての恋だった。ダヴィドの提案で「どちらかが先に死んだら、残された方はその墓の上で踊る」という誓いを立てる。だがちょっとしたダヴィドの浮気が元で喧嘩になってしまい……。

★ひと夏のピュアな青春映画。美しい青年2人が経験するの愛の喜び、かけひき、哀しみ、後悔、約束……青年2人を「ゲイの関係」と位置付けるのは簡単だが、この作品はそれを超越した何かがあった。アレックスは「いろんなことがあったが、これからが人生の始まりかもしれない……」の台詞に、さすがオゾン監督の力量を感じた。

🎬『プロミシング・ヤング・ウーマン』エメラルド・フェネル監督、脚本/アメリカ/衣装デザイン賞
平凡な女性に見える女性キャシー(キャリー•マリガン)は、実は周囲の人も知らないもうひとつの顔があった。彼女は日中はレストランで働き、夜になるとバーや居酒屋で行って酔っ払ったふりをして、謎めいた行動をとっていた。

★細かいことを書いてしまうと、なーんだ、となってしまいそう。だから基本的に女性にとって胸糞悪いストーリーとだけ言っておこう。キャリー•マリガンの昼と夜、恋しさと憎しみに変化する表情から目が離せなかった。この役にぴったりで、脚本、ヘアスタイル、衣装等々が見事だった。
2021年・第93回アカデミー賞で作品、監督、主演女優など5部門にノミネートされ、脚本賞を受賞した。

🎬『17歳の瞳に映る世界』エリザ・ヒットマン監督、脚本/アメリカ/女性監督新人賞
友達も少なく大人しそうな17歳の高校生•オータム(シドニー・フラニガン)は、妊娠していることに気付く。彼女の住んでいるペンシルベニアは未成年の中絶は両親の同意が必要なので、同じスーパーでアルバイトをしている従姉のスカイラー(タリア・ライダー)と、両親の同意が必要ないニューヨークに向かうが……。

★新鋭女性監督エリザ・ヒットマンが少女たちの旅路を描き、第70回ベルリン国際映画祭銀熊賞(審査員グランプリ)受賞したドラマ。これを観てルーマニア映画『4ヶ月、3週と2日』を思い出した。チャウシェスク独裁政権下の女の子ふたりの長い1日を描いている。ルーマニアとアメリカでは状況がうんと違うが少女たちの手術前と後では「一つ、貴重な経験をした」というように達観した表情は同じだと感じた。それにしても州によって中絶に関してこんなに違うとは思わなかった。アメリカと一括りに考えては駄目と改めて思った。

🎬『ディナー・イン・アメリカ』アダム・レーマイヤー監督、脚本、編集/アメリカ/デート映画大賞
過保護に育てられたメガネ少女パティ(エミリー・スケッグス)は、孤独な毎日を送っていた。そんな彼女にとってパンクロックを聴くことだけが唯一の楽しみ。そんなある日、パティはひょんなことから、警察に追われている男サイモン(カイル・ガルナー)を両親に頼み込んで家に泊まれせたが……。

★パンクロックが大好きな少女が、大ファンのパンクバンド「サイオプス」の覆面リーダーを自分の家に匿ったことで起こる騒動&LOVEの青春映画。とんがった男と可愛いメガネ少女のワクワクする物語に魅了された。でもこんな偶然ってやっぱり映画の中だけだろう。パティは熱烈な手紙をたくさんサイモンに送っていて、サイモンのカバンには、彼女からのファンレターが何通か入っているのだ。それに気付いたのはサイモンで、そうとは知らないパティは熱っぽくサイモンを語る。それをちょっと恥ずかしげ見つめるサイモン。

🎬『聖なる犯罪者』ヤン・コマサ監督/ポーランド、フランス
過去を偽り聖職者として生きる男の運命を描き、第92回アカデミー賞の国際長編映画賞にノミネートされたポーランド発の人間ドラマ。少年院を出てすく一人行動には驚くが(日本なら誰か向かえに来るだろうに)紹介された木工所の荒々しい雰囲気に入る気になれずに躊躇している時に、教会の鐘がなり、その方に向かって歩いていくダニエル。

★彼の「偽」司祭への道のはじまりであるが、その素地は少年院での説教で培われているので意外とすんなり受け入れられる。主演ダニエルを演じたバルトシュ・ビィエレニアさんを調べたら、ポーランド初のネット作品『1983』に出ている。たくさんは出てこないが印象に残る役だった。

🎬『わたしの叔父さん』フラレ・ピーダセン監督、脚本/デンマーク
舞台はデンマーク・ユトランド半島の小規模な酪農農家。14歳の時に家族を亡くしたクリス(イェデ・スナゴー)は体の不自由な叔父(ペーダ・ハンセン・テューセン)に引き取られ、一緒に家畜の世話をして穏やかに暮らしている。二人はほとんど会話をしないが、手押し車にもたれて作業をする叔父さんの姿を常に目で追って、必要な時に手を貸しているクリス。  そんな彼女が27歳になったある日、村の教会で出会った青年マイク(トゥーエ・フリスク・ビーダセン)からデートの誘いを受ける。クリスは戸惑いながらもときめきを隠せなかった。 

★デンマークの農村地帯を自然光で撮影された映像美の中、寡黙な二人の佇まいが淡々と描かれている。だからといって「退屈」とは無縁な作品で、実の叔父、姪というキャスティングの妙が映画に深みを与えている。
第32回東京国際映画祭コンペティション部門で最高賞にあたる東京グランプリを受賞した。

🎬『ミナリ』リー・アイザック・チョン監督、脚本/アメリカ/助演女優賞にユン・ヨジュンさん
アメリカに住む韓国人(推定170万人)の韓国食材野菜を育てようと家族を連れてアーカンソー州の高原に移住して来た韓国系移民ジェイコブ(スティーブン・ユァン)。荒れた土地とボロボロのトレーラーハウスを目にした妻モニカ(ハン・イェリ)は不安になる。でも賢い長女アンと心臓の持病がある好奇心旺盛な弟デビッドは、ことのほかこの地が気に入って大はしゃぎ。初めからうまく行くはずもなく夫婦喧嘩が絶えないことから、妻の母親スンジャ(ユン・ヨジュン)を韓国から来てもらうことになった。妻の機嫌が少しは晴れるし、子らはずっとあっていないおばぁちゃんに会えると大喜び。農業の方は水との戦いで思いどおりにはいかず徐々に追い詰められていって……。

★1980年代のアメリカ南部を舞台に、韓国出身の移民一家がいろいろな出来事に翻弄されながらも健気に生きる姿を描いた家族映画。2020年・第36回サンダンス映画祭でグランプリと観客賞をダブル受賞
てっきり韓国映画と思っていたがアメリカ映画だった。最初のシーンがただっ広い野原に細長い大きな箱のような飾り気のない家で、妻は「これが私たちの家?」と、見ただけでがっくりさが伝わってきた。そこから始まる四苦八苦の田舎生活。おばあちゃんが来てくれなかったらどうなっていたか。
スンジャおばぁちゃんは山の中に流れる小さな清流に韓国から持ってきたミナリ(香味野菜のセリ)の種を蒔くのだ。セリはキムチに入れることが多く韓国食材野菜には欠かせないもの。この蒔くだけでどんどん成長する頼もしいセリが生活再生の糧になるとは❗️
posted by ミッキー at 08:11| Comment(0) | ベストテン | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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