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🎬『燃え上がる記者たち』スシュミト・ゴーシュ、リントゥ・トーマス監督/インド/93分/2021年/アジア千波万波
紀元前につくられたインドのカースト制は4つの階層に分け、「ダリトは階層外で特に女性差別は激しかった。
そんな中、ウッタル・ブラデーシュ州のダリトの女性たちが新聞を創刊。世間の目は冷たかったが、インド唯一の女性だけが運営する「ニュースの波(カバル・ラハリア)」紙は活動を続けた。
インドのカースト制はインド映画には付き物でよく見聞きしているが、このダリトの女性だけの新聞社立ち上げには世間の目、家族内の軋轢などきっと画面に出てくる以上のものだったに違いない。
彼女たちは一様にダリトであっても、経済状態、学歴、言語やパソコン機器の扱い能力などに差があったが、お互いに足りないところを教えあったり支えあったりしていた。
中心になって日夜活動している女性は娘2人、時々嫌みを言う亭主はいるが、文句を言ったら三倍ぐらい返す妻にはあまり逆らわない。協力的な母親(姑か)はニコニコしている。こんな家庭だから活動もできるが他の人は周りに反対されて来なくなる人もいた。
いろんな事件や警察の対処の仕方や意見、政治家のインタビューもすぐにネットにのせるので小さい新聞社ではあるが、日に日に存在感が増していく様子に底知れないエネルギーを感じた。
★今も活動を続けていることがわかり嬉しく思った。
🎬『私を見守って』ファリーダ・パチャ監督/スイス、ドイツ、インド/92分/2021年/インターナショナル・コンペティション
インドでは在宅緩和ケアはまだあまり広まっていないが、医師、看護師、カウンセラーの3人の女性が1組になって、助けを求める電話を受けて車に乗り込んでニューデリーの街をあちらこちらを駆け巡っている。
3人の女性の訪問するのはもう助かる見込みがない末期の病人を抱えている家庭。
自分の家で最期を迎えたい患者さんは、苦しんでいても家族もどうしていいかわからない状態の中で、話を聞いてあげたり、痛みを減らす工夫をしたり、お薬のさじ加減をしたり、少しでもお金がかからないように申請書を書いたり提出したりと、いろいろ相談にのっていた。
ボランティア活動ではないのでお金がどれだけかかるかは残念ながらわからないままだった。
ここで死ぬのは嫌だとわがままをいう病人には、遠い故郷に帰っても、すぐに薬に困らないようにたくさん渡していた。その男性は故郷に帰ってから健康を取り戻し、働いていると最後の字幕で知った。あんなに息絶え絶えだったのに……驚きと嬉しさでいっぱいになった。
🎬『リトル・パレスティナ』アブダッラー・アル=ハティーヴ監督/レバノン、フランス、カタール/89分/2021年/アジア千波万波
2013年から3年間、シリアのアサド政権は世界一最大のパレスチナ難民キャンプを封鎖。ダマスカス郊外にある封鎖された「ヨルムーク」難民キャンプは出入りを禁じられたせいでキャンプ内では食料、水、薬、電気などが底をついて来た。
そんな中、ウンム・マフムードは高齢者医療支援を志願した。そんな母親の行動を息子と友だちは時々カメラを向け始めた。
事情は違うが『理大囲城』も囲い込まれて外に出さないで闘志を鈍らせていったが、パレスティナ難民の方の生活もみるみるうちに全ての物資が無くなっていって人道的に考えても何か手立てがなかったのかと、精神的に一気に見続けられなかった。
監督さんは1948年にシリアに来た時はとても良くしてくれて、食料や水を運んでくれた。飢えとは無縁の生活だった。でもこの半年間は違う……と語っていた。
監督はあらゆるところを撮っているが、幼い女の子が食料にする為に、草をむしっていて、近くで爆音が聞こえても平気な顔をしていたシーンは胸が塞いだ。「将来の夢は?」「食べ物がたくさん欲しい!」と即座に答えていた。
★最後の字幕で監督さんとお母様の状況を知った。