
詳しくは http://yidff.jp/
🎬『カマグロガ』アルフォンソ・アマドル監督/スペイン/111分/2020年/インターナショナル・コンペティション
灌漑農業の盛んなスペイン・バレンシア地方でタイガーナッツ農家のアントニオおじいちゃん一家の一年を追ったドキュメンタリー。ほとんど機械を使わず体力と手仕事でタイガーナッツを作り続ける一家を丁寧に追っていた。
大きな納屋にはいろいろ工夫された仕掛けがあって、アントニオおじいちゃんの娘夫婦、孫が手伝っている。年々儲けが薄くなる農作業の中、一家総出で頑張っている姿は眩しかった。
灌漑用水路から自分の畑に水を引き入れる作業、水をもらう予定がきまると屋号である「CAMAGROGA」の木札を立てる。この屋号が題名なっている。
近くに大型スーパーの予定地があったり、農家仲間でやめていく人もいたりするが、小学生の孫が学校で発表するためにアントニオおじいちゃんにインタビューするシーンなど微笑ましいシーンもあって「農業とは土を耕すことに尽きる」と語っていた。

タイガーナッツ ヨーロッパで約600年以上前から食べられている健康食品。
🎬『ミゲルの戦争』エリアーン・ラヘブ監督/レバノン、スペイン、ドイツ/128分/2021年/インターナショナル・コンペティション
ミゲルと名乗るレバノン出身のゲイの男。彼は通訳の仕事を生業にしていて、現在はスペインに住んでいる。エリアーン・ラヘブ監督の映画上映時の通訳をして知り合い、彼の幼少期の記憶、内戦で受けた心の傷、恋人との出会いなどをラヘブ監督のインタビューで記憶を呼び起こし、一部をアニメーションで表したり、舞台上映を試みたりして紐解いていく。

女性監督作品。ちょっと意地悪な質問が多くて、我慢強いミゲルさんもムッとする時があった。もちろんミゲルさんのこれまでの人生をさらけ出す覚悟はできているはずだが、昔の恋人を連れてきたり、言葉尻を捉えて追求したりと情け容赦ない。
よく我慢したミゲルさん。驚いたことにクラシックの声楽がとってもうまかった。カロミオベンの歌い方も正統的でオペラ歌手も夢じゃないくらいだった。過去に後悔することはたくさんあっても、ミゲルさんの幸せを願いたい。
アニメシーン、舞台練習シーンが盛り込んでいるが、全般にわたって落ち着きのないように感じた。
🎬『ナイト・ショット』カロリーナ・モスコソ・ブリセーニョ監督/チリ/80分/2019年/インターナショナル・コンペティション
学生時代にレイプ被害にあった女性は、チリの司法制度によって時効となった。

この作品は三つの光によってできている。それは「まぶしいほどの光、全く見えない闇、ほのかな光」の三つ。
浜辺でヒップホップのグループに出会い遊んでいるうちに一人の若い男性と口を聞くようになり、買い物をするために暗い夜道を二人で歩いていてレイプされた。
画面は三つの光の中で、ハレーションをおこして何も見えなくなったり、闇夜だったりとまともに映っていないが、時々字幕にでる言葉が彼女が受けた被害やその後行った病院や精神科の診察状況を字幕に頼るしかないドキュメンタリーだった。
被害を受けた女性の痛みは癒えることはないことだけは伝わって来たが、見ているこちらの緊張が続かず二度居眠りで中断した。