しがない役者の灰島(磯部泰宏)は飲食店でアルバイトをしながら安アパートで一人暮らし。彼は好きなタイプの女の子とは目も合わせることが出来ないシャイな面と、反対に自分の気に入らない相手にはとことんぶつかっていく妥協知らずの面を併せ持っていた。
今日も撮影現場で監督と意見が合わず途中で帰って来てしまった。アパートに帰ってくると閉めていったはずの玄関ドアの鍵があいていた。次からは鍵の確認をして出ていっても帰ると開いている日が3日続いて……。

俳優が監督をする。撮影現場の片隅で出番のないときなどに「自分ならこうするがな」とか「あの俳優がいいな」なんて思っていたはず。
灰島は自分の行いが「普通」と思っている。自分が空気の読めない馬鹿正直な変人とは思っていない。だが人間は少なからず自分が「普通」と思っているのではないか、とも思う。
磯部監督の采配も主演の演技力も相当なもので、起承転結が効いた中編になっていた。