東日本大震災直後から800日の間にわたり記録した『遺言 原発さえなければ』を監督した豊田、野田両氏が原発事故後の福島をテーマにしたドキュメンタリー。
放射能汚染により全住民が避難した福島県飯舘村は、震災から6年が過ぎ、避難指示が解除されることになった。仮設住宅に暮らし故郷に戻るか戻らないかの決断に揺れる元酪農家の長谷川健一さんは、原発事故から30年が過ぎたチェルノブイリを訪ねる。
彼がそこで見た立入禁止区域に暮らす「サマショール」(ウクライナ語で「自主帰還者」)に出会った長谷川さんは、彼らの姿に自分の未来の姿を目にする。

長谷川さんは夫婦仲の良い朗らかな方で、酒を飲みながら山からとってきた松茸を美味しそうに「これは孫子には食べさせてられないが、俺はこんなに美味いもんないと思ってる」と笑顔で語っていた。そんな彼がウクライナに行ってから朗らかさは変わらないが、思うことがあったのかえらく深刻な顔つきで妻に向かって「俺はここで生きていくけど、お前はどうするか、ずっと一緒にいてくれるのか」と聞いている。
奥さんは「何を急に」と笑い転げていた。返事はきっとYESと思うが。
そんな長谷川さんは牛舎を解体、畑を耕してソバの種を蒔いて、だれも帰らない土地で第一歩を踏み出していた。最後に取れた蕎麦を「誰にもやれんけど、美味しい蕎麦だよ」と美味しそうに食べていた。
🎬『ヒグマと老漁師 - 世界遺産・知床を生きる』矢内智大監督/49分/2020年
世界自然遺産登録から15年目の北海道・知床。
その奥地にあるヒグマの世界的密集地帯ルシャで、人とヒグマが共存する姿を36年にわたって克明に記録。野生のヒグマを叱る老漁師の姿を追ったドキュメンタリー。
世界自然遺産・知床の海で、サケやマスをとってきた漁師の大瀬初三郎(おおせ・はつさぶろう)さん84歳。彼はヒグマが近づいてくると「こら!」と腹から出す大声で叱りつける。
大瀬さんはヒグマとの付き合いについて・絶対にエサをあげない・目を逸らさず大声で叱る・いるとわかってもある距離までは知らんぷりをする等々、人間とヒグマの共生、また自然との調和を身をもって教えてくれた。