殺人を犯し13年の間、旭川刑務所で刑期を終えた三上(役所広司)は上京。身元引き受け人の弁護士・庄司(橋爪功)とその妻敦子(梶芽衣子)に迎えられる。変化が激しい現代社会からすっかり取り残された三上は庄司夫妻に温かみを感じ泣き出してしまう。
そんなある日、生き別れた母を探す三上の情報をつかんだテレビ番組のプロデューサーの女(長澤まさみ)が近づいて来た。番組で社会に適応しようとする三上の姿を面白おかしく紹介するつもりだったが……。

西川美和監督はこれまでオリジナル脚本の映画を作ってきた方だが今回はじめて直木賞作家・佐木隆三が実在の人物をモデルとした小説「身分帳」を原案に時代設定を現代に変えて映画化。人生の大半を裏社会と刑務所で過ごした男の後半人生を描いている。
西川美和監督作品は初作品の『蛇イチゴ』からの大ファン。『蛇イチゴ』は香典泥棒、『ディア・ドクター』では鶴瓶が偽医者、『夢売るふたり』では結婚詐欺と普通の家庭の中で起こるサスペンスにドキドキしてしまう。
そしてこの新作は役所広司主演で、シカゴ国際映画祭でベストパフォーマンス賞を受賞したというニュースに嬉しくなった。試写室もいつもにない集まりで一つおきの席で満室だった。
公開日にはもう一度三上を演じる名優・役所広司の演じる「短気だが実直で情の深い」男に会いに行く。