2021年01月04日

2020年・ドキュメンタリー映画ベストテン(順位なし)

🎬『僕は猟師になった!』川原愛子監督/99分

京都の市街地と山の境界で暮らす猟師・千松信也さんは、近隣の3つの山に入り、手製のワナをかけてシカやイノシシを捕獲。その一部始終、千松さんの生き方、考え方を知るために、ひと冬の猟に密着したドキュメンタリー。

これには感動した。特異な方だ。山にはほとんど毎日見て歩き、糞、足跡、一枚の葉っぱも見落とさず「これは昨日の糞で、子連れで歩いた跡だ」などと話しながら歩き回っていた。自分の仕掛けたワナで捕えたイノシシを解体して家族や友人と食するだけで、それ以上に獲ったりはしない。

そんな中で、イノシシを獲った拍子に、ご自身が足を骨折して病院に担ぎ込まれた。医師から手術をとすすめられたが、彼は「イノシシも3本足のがいる。自分だってギブスだけの治療で不具合とともに生きて行きたい」と頑として手術を受けなかった。

★イノシシのトドメを刺すシーンも解体シーンも見事に映し出していた。

🎬『真夏の夜のジャズ 4K』バート・スターン監督、製作/アメリカ/83分/1959年

アメリカ・ジャズ界最大の音楽フェスティバル「ニューポート・ジャズ・フェスティバル」を捉えたドキュメンタリー。1958年に開催された第5回のフェスティバルを記録した作品。

身体全部持って行かれた。ジャズには詳しくないが出てくる人ひとり一人の演奏、歌にのめり込むように聴いた。才能の塊のミュージシャンばかりだが聴く者との距離はすぐ近くのように感じた。

裸でチェロを弾いていたのは誰だろう、カザでルス張りの音色でバッハを奏でていた。最後の「主の祈り」を歌ったマヘリア・ジャクソンの力強い歌声はミッキーの疲れた身体のカンフル剤になっ

🎬『オーバー・ザ・リミット 新体操の女王マムーンの軌跡』マルタ・プルス監督/ポーランド、ドイツ、フィンランド/74分

ロシアの新体操選手マルガリータ・マムーンと彼女のコーチであるイリーナ・ヴィネル、アミーナ・ザリポアに密着したドキュメンタリー。

これはドキュメンタリーだから、個性的で強力な指導者の許可が難しかったのではないだろうかと思いながら観た。確かに弱音をはかせず、叱咤激励以上の「口汚い叱り方」に暗い気持ちになった。

マムーンは時々家に帰って鋭気を養っていたり、恋人と会ったりする場面もあってホッとした。彼女は女優にしてもやっていかれるほどの美人さんだが、今はスポーツ選手の奥様になっておられるとか。恐い恐い指導者のお顔は当分忘れそうにもないが、マムーンの今が幸せという情報に心が落ち着いた。

★ 監督さんは、ご自身も新体操の経験がある方。アメリカ『ヴァラエティ』紙で「注目すべき10人のヨーロッパ人」にも選出された。

🎬『NETFLIX/世界征服の野望』ショーン・コーセン監督/アメリカ/104分
映画・ドラマなど映像コンテンツのストリーミングサービス最大手として成長を続ける巨大企業「Netflix(ネットフリックス)」の裏側を描いたドキュメンタリー。

Netflixで立ち上げたメンバーが当時を振り返っている。発想から成功して行く道のりに「こんな危機があったのか」と今ではひとり勝ちのNetflixには考えられないことだ。

指でポンポンとiPadの画面をたたくだけで、見たい作品が目白押しが「普通」になっているミッキー。毎月900円以下でコロナ下で本当によく見るようになった。

初代CEOのマーク・ランドルフさんは喋り出したら止まらないお方でお顔も親しみが持てて、そんな彼から創業時の秘話や致命的な失敗、涙目になった大量解雇のこと、倒産危機から偵察活動に至るまで、知られざる事実をいっぱい教えてもらった。

🎬『馬三家からの手紙』レオン・リー監督/カナダ/76分

アメリカ・オレゴン州に住む女性ジュリー・キースさんはスーパーで買った中国製のハロウィンの飾り付けの箱の中から、紙切れを見つけた。見つけたのは2年後で最初使ったときは気付きもしなかった。よく見ると中国語と英語で書かれていて、内容は「馬三家(マサンジャ)労働教養所ではひどい拷問や洗脳が行なわれている」という物だった。

彼女は人権団体を通じて手紙を公開すると瞬く間に世界中に広まり、彼女も生活も一変する。問題にあげられた中国の労働教養所は閉鎖されたが、話はこれで終わらなかった。

映画の始まりはジュリー・キースさんがどうやって手紙を見つけたか、説明するシーンからだ。彼女が手を尽くして公表しなければ実態はわからなかった。書いたのが一通だけとしたら運が良かったと思うしかない。(観終わってから、よく考えたら運が良かったかどうかわからないが)

手紙は、政治犯として捕らえられていた孫毅(スン・イ)さんが書いた物で、彼も有名になってしまう。当然命の危険から愛し合っていた女性とも別れて、インドネシアに行き亡命申請をしている。そこで手紙をもらったジュリー・キースさんと会うシーンは涙なしでは見られなかった。

🎬『三島由紀夫vs東大全共闘 50年目の真実』豊島圭介監督/108分

1968年に大学運営に異議をもつ学生たちが団結し、それが全国的に広がった学生運動。中でももっとも武闘派といわれた東大全共闘をはじめとする1000人以上の学生が集まる討論会が1969年に開催された。三島由紀夫は警視庁の警護を断り、単身で討論会に臨み、2時間半にわたり学生たちと議論をした。

1969年5月に東京大学駒場キャンパスで行われた作家・三島由紀夫と東大全共闘との伝説の討論会の様子と討論の場にいた人、元・楯の会のメンバー、元全共闘の人らが三島との関わりを語っている。

1969年5月に東京大学駒場キャンパスで行われた作家・三島由紀夫と東大全共闘との伝説の討論会の様子を軸に、三島の生き様を映したドキュメンタリー。

三島由紀夫の映像は例の自衛隊市ヶ谷駐屯地で自決前の演説する姿しか「動く姿」は見ていない。このドキュメンタリーは自決の約一年半前にあたる。

三島由紀夫の漠然とした姿がこのドキュメンタリーで改めて真の人間像が浮かび上がって来た。

敵対しているはずの一千人以上を前に臆せず話す三島は、非の打ち所がない寵児で、常ににこやかに話する姿は一瞬たりとも人の気をそらさない。

赤子をだいて登場した芥正彦も負けてはいない。その芥氏の「今」も当時の飄々とした表情そのままに「50年目の真実」を語っていた。

🎬『うたのはじまり』齋藤陽道監督/86分

ろうの写真家・齋藤陽道は、子育てを通して、それまで嫌いだった「うた」に出会うまでを描いたドキュメンタリー。

20歳で補聴器を捨てカメラを手にすることで「聞く」から「見る」ことにしたろうの写真家・齋藤陽道さん。同じろうの写真家である妻の盛山麻奈美さんと結婚、男の子を授かった。しかし、彼は聴者である息子との対話の難しさに戸惑うのだった。

耳の聞こえない「ろうの写真家」齋藤氏は振動として「音」をとらえている。

振動にもいろいろある。物理的な振動と楽器など奏でる振動などがある。耳が聴こえなくなったベートーベンがピアノの木が共鳴する板に耳を当てて「音」に集中した話は有名であるが、ベートーベンはそれまでは聴けていたので作曲するにはそう難儀ではなかったと思う。

齋藤氏は生まれつきのものだから「振動」が音なのだ。そんな彼に男の子が誕生、出産シーンも、泣いた子を抱いて自然に軽く体をゆすり口から出た「うた」にも、痺れるような感動を体感した。

🎬『栄光のマイヨジョーヌ』ダン・ジョーンズ監督/オーストラリア/99分/イオンシネマ名古屋茶屋にて

2010年、オーストラリア人ビジネスマンで起業家のゲリー・ライアンが自分のロードレースチームを作ろうと思い立った。チームの選手の人選は実力本位に偏らず、チームの輪がうまく行くような人選にも気を配っている。オーストラリア初のワールド世界ツアー出場レベルのロードレースチーム「グリーンエッジ」が誕生した。

オーストラリアのサイクリング・ロードレースチーム「グリーンエッジ」に密着したドキュメンタリー。

自転車レースの裏の仕事がこんなにあるとは思わなかった。それに何百台もの自転車が雪崩の如く猛スピードで走行するシーンをいろんな角度から映されていた。このスピードで1人が転ぶと無惨な事故になる様子や、怪我で途中でリタイヤする無念な選手、自転車故障のためのメンテナンス部員の活躍も知ることができた。

それにやるときは命がけでやる、遊ぶときや仲間内の冗談話は徹底して楽しむ等の切り替えに、やはりオージーだなっと思う場面もあった。みんな娘婿エディにみえてきた。そういえばシドニーの家に高そうな自転車があったのを思い出しました。

★ 題名のマイヨジョーヌ とは、自転車ロードレースのツール・ド・フランスにおいて、個人総合成績1位の選手に与えられる黄色のシャツ。

🎬『死霊魂』ワン・ビン監督、撮影/中国/495分

1950年代後半に起きた中国共産党の反右派闘争で静粛されて、ゴビ砂漠にある再教育収容所に送られた中で生き残った人々の壮絶な体験談の証言を集めたドキュメンタリー。

山形ドキュメンタリー映画祭のロバート&フランシス・フラハティ賞(大賞)受賞作品だ。ワン・ビン作品は545分の超長編の『鉄西区』(2003年の山形ドキュメンタリーで大賞受賞)も、同じゴビ砂漠の収容所を題材にしたドキュメンタリー『鳳鳴ー中国の記憶(これも2007年に山形ドキュメンタリーで大賞受賞)』も観ている。この『死霊魂』で3度目のグランプリだ。

長さとしては『鉄西区』が長いが居眠りをした。だが『死霊魂』は、一人ひとりの証言の語りかけが真に迫っていて、観ているこちらが話相手の状態になって知らぬ間に休憩が入る3時間が経っていた。

もう一度観る覚悟は(体力的に)ないが「これこそ、ドキュメンタリー映画の本髄」と感じた作品だった。

🎬『わたしは金正男を殺していない』ライアン・ホワイト監督、脚本/アメリカ/104分

たくさんの人が行き交う昼間のマレーシア空港で、北朝鮮の朝鮮労働党委員長・金正恩の母親違いの兄・金正男は、VX溶液を顔に塗られ殺害された。

彼に後ろから抱きついて目をふさいで「私、誰だかわかる?」といたずらするようにして殺したのは、ベトナム人とインドネシア人の2人のごく普通の若い女だった。彼女たちはなぜ金正男を暗殺したのか……。

2017年にマレーシアのクアラルンプール国際空港で起こった金正男暗殺事件。この事件の闇と真相に迫ったドキュメンタリー。

この事件は最近のことだからよく覚えている。あんなに大勢の中で、それも監視カメラの完備された中で北朝鮮が「知らぬ存ぜぬ」で通るわけないのに「通って」しまった「証拠100%の闇」のドキュメンタリー。女の子2人は今それぞれの国でどんな暮らしをしているのだろうか。
posted by ミッキー at 20:07| Comment(1) | ベストテン | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
「死霊魂」をはじめとして 4本見ていません。まだまだミッキーさんにはかないませんね〜(-_-;)
Posted by 猫 at 2021年03月05日 15:20
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