第14回田辺・弁慶映画祭」は、次世代監督や映像作家の作品上映と、映画文化を通じて地域の活性化を目的に2007年に始まった。「若手映画監督の登竜門」として全国的にも知られている。例年は監督や俳優らと映画ファンが交流しながらの映画祭だが、ことしは新型コロナウイルスの感染拡大防止のため配信での上映となった。
若手映画監督を対象に作品を公募するコンペティション部門では予備審査を通過した8作品を入選作品として上映。「弁慶グランプリ」をはじめ各賞を決定し、表彰式の模様も配信される。 https://tbff.jp/
🎬『LOVE WATER FIRE』碧嵐澄士監督/30分
突発性難聴になったミュージカル志望のマキコ(加藤紗季)は強度な耳鳴りにも苦しんでいた。歌ったり踊ったりする時だけ「世界に愛されている気がする」マキコだった。聴覚細胞は約10日で再生不可能になってしまうことを知った彼女は海洋療法をしている医師リョウ(石山優太)を海辺の診療所に訪ねていくが……。
撮影地は葉山町の一色海岸のようで、日本でも美しい海岸の、それもひっそりとした雰囲気もある海岸を撮影地に選んだことが良かった。ミッキーの新婚時代に(半世紀前)つれあいとドライブして貝殻を拾った思い出がある。(あのときは仲よかったなぁ)
さて作品はイメージ先行でとらえどころがなく医師役が若すぎる等々難点があったが、ミッキーが気に入ったのは、海岸や昼と夜の月を幻想的に撮ったカメラマン、くぐもった海中の音の音響、マキコが花火があがる海岸で踊るシーンが印象的だった。
30分前後の映画作りが一番難しい長さと常に感じているが、監督さんも「何を入れて、何を捨てる」かでお悩みになったと思う。
トークで監督の名前が「アランスミシ」と読むが、過去の辛い経験があるので本名は出したくなかったとおっしゃっていた。それ、映画になりませんか。とお聞きしたかった。
🎬『いる』磯部泰宏監督、主演/41分
しがない役者の灰島(磯部泰宏)は飲食店でアルバイトをしながら安アパートで一人暮らし。彼は好きなタイプの女の子とは目も合わせることが出来ないシャイな面と、反対に自分の気に入らない相手にはとことんぶつかっていく妥協知らずの面を併せ持っていた。
今日も撮影現場で監督と意見が合わず途中で帰って来てしまった。アパートに帰ってくると閉めていったはずの玄関ドアの鍵があいていた。次からは鍵の確認をして出ていっても帰ると開いている日が3日続いて……。
俳優が監督をする。撮影現場の片隅で出番のないときなどに「自分ならこうするがな」とか「あの俳優がいいな」なんて思っていたはず。
灰島は自分の行いが「普通」と思っている。自分が空気の読めない馬鹿正直な変人とは思っていない。だが人間は少なからず自分が「普通」と思っているのではないか、とも思う。
磯部監督の采配も主演の演技力も相当なもので、起承転結が効いた短編になっていた。
★俳優さんが監督した作品で一番好きなのは、2008年製作、渡部篤郎監督、原案、出演の『コトバのない冬』
2020年11月14日
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