中央アナトリアの荒涼とした貧しい村で生まれた三姉妹。亡き母のたっての願いでもあった「娘たちはこの村から出して町で生活させたい」を守って、頑固者の父親は娘三人を町の裕福な家に家政婦として働き口を見つけた。しかし三人が三様の理由で村に戻ってきてしまい……。

舞台である中央アナトリアとはアルプス級の高い山々が連なる標高の地。ロケ地として最高の絶景だ。
そこに住むのは命令口調の頑固親父と三人娘。
素直に親父の言うことをきくのは末娘のハッヴァ(ヘンリ・カンデミル)だけ。ハッヴァは奉公先の不幸で仕方なく戻ってきた。再び町に働きに行くことを願っている。
長女のレイハン(ジェムレ・エブズィア)はかつては家政婦をしていた先で子を身籠り、実家に戻ってきた。父親の意向で鈍重な羊飼いの男と再婚させられたが、夫婦仲は良くない。赤ん坊は家族皆で可愛がっている。
次女のヌルハン(エジェ・ユクセル)は町で子だくさんの家の子守りをしていたがおねしょばかりして困らせる子を叩いたことで実家に戻されてしまった。体調も悪く咳をしている。
こんな難儀をいっぱい抱えた一家だが思うほど窮していない。気になったのは「愚鈍な夫」に対して容赦がない。そう思った事柄をすべて書いてしまうと公開された時、詰まらないだろうからここまでだが、ミッキーは愚鈍な夫の侘しさが理解できた。
🎬『昨夜、あなたは微笑んでいた』ニアン・カヴィッチ監督/カンボジア、フランス/77分
再開発で取り壊しが決まったプノンペンの「ホワイトビルディング」という歴史的な集合住宅の住民を追ったドキュメンタリー。
若き監督さんはこのビルで劇映画を撮ろうしていたが、資金集めがうまくいかず、まず撮るだけでも撮っておこうと思って撮り始めたのが50時間に及ぶものだった。
この取り壊されたアパートには監督さんのご両親も住まれていて、カメラ越しに「今の気持ちは」と尋ねるが「それは言わない、言うと涙が出る。お前はここで生まれた育ったのだから最後には香を焚いて感謝の気持ちを示さないといけないよ」と諭すように言っていた。
★ 「ホワイトビルディング」は1963年にプノンペンに建造されクメール・ルージュの時代を生き延びた歴史的な集合住宅。