ブラジル南部の街ポルトアレグレに暮らす78歳のエルネスト(ホルヘ・ボラーニ)は、隣国ウルグアイからこの地に移り住んで46年が経った。生来の頑固者で融通がきかない性格の彼もよる年波には勝てず、この頃では目がほとんど見えなくなっていた。
だが勝手知ったる室内や散歩道は一人でどうにか動いている。掃除や料理は週1回、家政婦さんが来てくれている。
遠くに住む一人息子はここを売って施設に入るか自分のそばに来るかと気を使ってくれるが、その話のたびに不機嫌になる父親に困っていた。
そんなある日、ウルグアイ時代の友人の妻から手紙が届くが、手紙を読むことのできないエルネストは偶然知り合ったブラジル人女性ビア(ガブリエラ・ポエステル)に手紙の代読と代筆を頼んだことがきっかけで部屋を与えて同居するまでになったが……。

主人公エルネスト役をウルグアイ映画『ウィスキー』に主演した名優ホルヘ・ボラーニが演じる。ブラジル・サンパウロ国際映画祭批評家賞、ウルグアイ・プンタデルエステ国際映画祭では観客賞と最優秀男優賞を受賞。
うまく年を重ねて快適な老後を全うすることは「らくだを針穴に通す」ほど難しいと言われるが、つくづくよい老後(娘からは、今がその真っ只中じゃない?と言われるが……)をおくるのは至難だ。
この作品をみて「うらやましい」部分と彼らの若い時代の辛さや国情を思うと「そういう点では自分は幸せだ」と感じる部分があった。
ストーリーの鍵でもある若い女性は平気で小さな嘘をついたり、小金を失敬したりする子だが、根っこの部分では「自分を守るために必死の嘘や盗み」で、少なくともそれ以上のことはしない」とどこかで確信したエルネスト。
この作品に出てくるエルネストもお隣のご老人もビアも「普通の人生ではない」という背景に打ちのめされた。