DVD『光のほうへ』トマス・ヴィンターベア監督/デンマーク/114分

デンマーク・コペンハーゲン。アルコール依存症の母親と暮らす兄弟は、貧しさと怠惰と暴力があふれた悲惨な生活をしていた。兄弟の唯一の希望は、生まれて間もないもう一人の弟だった。
酔っては生活も育児も放棄している母親に代わって、盗んだミルクで赤ん坊を育てていた。電話帳からよい名前を見つけ、教会の洗礼の真似事をする。そんなある日、熱が出てむづかる赤ん坊を気遣いながらも、兄弟は遊びに夢中になり、気が付いたときは既に冷たくなっていたのだった・・・。それから、兄弟は連絡もとらず別々の人生を歩んでいたが、母の死の知らせで、何十年ぶりに再会した。
改めて名画にふれてみたくなった。
デンマークは、ゆりかごから墓場まで と、福祉が行き届いている国ではなかったかと疑問におもいながらみた。二人の子もまともな食べ物も食べていなかった。二人の子ども時代に福祉の助けはなかったのが不思議だ。
そんな兄弟も何十年後には、体は大きく成長して大人になっていたが、心は傷ついたまま、お互いに思い出したくない幼い弟に対する悔いを引き摺り続けていた。
その証拠に兄は怠惰な生活と暴力、弟は麻薬と精神も体も蝕まれていた。
ここでは、皮肉なことに福祉がこのようにさせたとも考えられた。その矛盾が監督さんの狙いかなと思った。
子ども時代には福祉が届かなくて、働ける年代に、働く意欲がそがれてしまう福祉がある……そんな矛盾に、やりきれない気持ちになってしまう。
しかし、最後には、なんとかやっていける幸せの予感もあった。10年以上前の映画だが新鮮に感じた。