🎬『馬三家からの手紙』レオン・リー監督/カナダ/76分
アメリカ・オレゴン州に住む女性ジュリー・キースさんはスーパーで買った中国製のハロウィンの飾り付けの箱の中から、紙切れを見つけた。見つけたのは2年後で最初使ったときは気付きもしなかった。よく見ると中国語と英語で書かれていて、内容は「馬三家(マサンジャ)労働教養所ではひどい拷問や洗脳が行なわれている」という物だった。
彼女は人権団体を通じて手紙を公開すると瞬く間に世界中に広まり、彼女も生活も一変する。問題にあげられた中国の労働教養所は閉鎖されたが、話はこれで終わらなかった。
映画の始まりはジュリー・キースさんがどうやって手紙を見つけたか、説明するシーンからだ。彼女が手を尽くして公表しなければ実態はわからなかった。書いたのが一通だけとしたら運が良かったと思うしかない。(観終わってから、よく考えたら運が良かったかどうかわからないが)
手紙は、政治犯として捕らえられていた孫毅(スン・イ)さんが書いた物で、彼も有名になってしまう。当然命の危険から愛し合っていた女性とも別れて、インドネシアに行き亡命申請をしている。そこで手紙をもらったジュリー・キースさんと会うシーンは涙なしでは見られなかった。
思いがけない出来事ばかりで気持ちが騒ついてしまったので、落ち着いてもう一度観たい作品。
🎬『カゾクデッサン』今井文寛監督/98分
元ヤクザの剛太(水橋研二)は同居中の彼女(瀧内公美)が経営するスナックで働いているが、酒浸りの毎日で言われたことをだらだらとやっている男だ。そこに突然少年が訪ねてきて、剛太に「母が交通事故で意識が戻らないので声をかけてほしい」と頼まれる。
剛太は15年前を思い出し、すぐに少年・光貴(大友一生)と病院に駆けつける。呼びかけにも応えない元妻だったが、そのことが現在の夫にわかり、二度と来ないでくれと言われる。光貴は喧嘩の強い剛太に魅力を感じ、その後も時々会うことになった。
ある身の上相談で「長男は自分の子でないことがわかった。親子関係はうまく言ってるが言うべきか黙っているか悩んでいる」という相談だった。回答者は有名な小説家で「その秘密は墓場まで持って行きなさい」ときっぱりと回答していた。
血の繋がりも、一緒に暮らしている他人も、どの基準でカゾクというのかはそれぞれが感じることだと思う。嘘、隠し事がないのが本当の「カゾク」とは思いがちだが、そうでもないよ、と教えてくれる作品だった。
この作品では一人ひとりに重複している部分はあるが、少しずつ違う「カゾク」がいる。その中心にいるのが光貴だ。「カゾク」とは「幸せになってほしい」と願う相手が、カゾクのような気がした。
★写真はロビーにいらっしゃった光貴役の大友一生さん。おしゃれで清潔感のあふれる17歳の少年だった❗️
★シネマジャーナルのSさんのインタビュー記事もお読みいただきたい。http://cineja-film-report.seesaa.net/article/473973628.html
2020年03月22日
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