2020年01月04日

2019年ドキュメンタリー映画ベストテン

今、シドニー市内のノースライドでは43度らしい。だが娘宅のシドニー市街地は37度。麦わら帽子をかぶって洗濯を干していたが腕がチリチリ痛かった。一昨日は朝20度という気温だったので薄手長袖にカーディガンを貸してもらった。気温差は激しいが体調はまあまあで映画を観続けている。

[ドキュメンタリー映画]

1位『サウナのあるところ』ヨーナス・バリヘル、ミカ・ホタカイネン監督/フィンランド
サウナのロウリュ(蒸気)に包まれたフィンランドの男たちのドキュメンタリー。自宅やオフィスのプライベートなサウナから、湖畔や街なかの公衆サウナ、キャンピングカー型、トラクター型、電話ボックス型などユニークなサウナがあって暮らしにサウナが根づいている国・フィンランド。

是非とも観ていただきたい、いや、入っていただきたい?ドキュメンタリー。フィンランドは幸福度連続2年間1位の国。そのフィンランドからサウナをひいたら絶対10位ぐらいにはなると思う。湯気にあたると心にはりつめていたいろんなことがゆるんで、男たち、老いも若きも苦労話や忘れられない辛いことを解きほぐされる話し出す。とつとつと話す男たちには辛い過去は確かに人生を狂わせるほどの「大ごと」だ。でも、サウナに入る=「生きている」という多幸感を味わうことができた。★監督賞★670本中1位グランプリ賞‼️

2位『カニバ パリ人肉事件38年目の真実』ヴェレナ・パラヴェル、ルーシアン・キャステーヌ=テイラー監督、撮影、編集、製作/フランス、アメリカ
1981年、フランス・パリで起きた猟奇殺人事件。日本人である佐川一政が友人のオランダ人女性を射殺して、遺体の一部を食べた。その佐川は今から6年前に脳梗塞で倒れ、弟・佐川純の世話になって暮らしている。その日常生活を追うドキュメンタリー。
日本のどこの配給会社も買わなかったというこのドキュメンタリー。画面にぼんやり映る佐川、確かにあの佐川だ。弟は事件の当時やその後の家族のことをポツリポツリと話し出す。その内容は想像のつくものであった。が、後半になって意外な映像が飛び込んでくる。目を疑うもので、文字にするのもためらわれる。★作品賞★撮影賞★激励賞

3位『眠る村』斎藤潤一、鎌田麗香監督
三重と奈良にまたがる集落・葛尾。57年前、この村の懇親会で女性5人が毒入りのぶどう酒を飲んで死亡する事件が発生。事件から6日後、当時35歳の奥西勝が犯行を認め「妻と愛人との三角関係を清算するためだった」と自白した。初公判では、奥西は「自白は強要された」と訴え、一審は無罪。しかし二審では死刑判決、そして、最高裁は上告を棄却。奥西は確定死刑囚となった。死刑執行に怯える奥西は、独房から再審を求め続けたが、平成27年10月に89歳で帰らぬ人となった。
この事件の映画はほとんど観ている。特に斎藤潤一監督の『約束 名張毒ぶどう酒事件 死刑囚の生涯』は印象深い。奥西を仲代達矢、奥西の母を亡き樹木希林さんが演じていた。新作のドキュメンタリーではナレーションを仲代達矢さんがやっている。村人の声も入っているが、何か奥歯にものがはさまった言い方で、すっきりしなかった。村人の本音をもっと赤裸々に聞いてみたいが、それは無理というものだろう。

(以下順位なし)
🎬『カーマイン・ストリート・ギター』ロン・マン監督/カナダ
ニューヨークのグリニッチ・ヴィレッジのカーマイン通りにあるギター店。そこには昔かたぎの店主が自ら職人としてギターを手作りしている。木材は近くの古い家が壊されると聞くと出向いて木材を調達してくる。
深い味わいのあるドキュメンタリー。このお店のギターはボブ・ディラン、パティ・スミスらが彼の手作りギターを愛用していて、人気のギタリストさんたちがふらっとお店に入ってきて、ギターを手にとって演奏することもあった。こういうお店がニューヨークの片隅にあると思うだけでワクワクしてくる。ギターや音楽に興味のない方も、きっと豊かな気持ちになるはず。


🎬『アリ地獄天国』土屋トカチ監督
とある引っ越し会社。一人の営業部門の男性社員が会社の非道な扱いに抗議したがらちがあかないので個人加盟ユニオン(一人でも加入できる)に加入。そうしたら職場の隅に追いやられ一日中シュレッダー係となり1年9ヵ月……個人加盟ユニオンの助けを借りて闘う姿を追いかけている。
「とある」とは書いてあるが「アリさんマークの引越社」ということはバレバレ。調べて見ると 「ブラック企業大賞2017」を「アリさんマークの引越社」が受賞した。そんな賞があるとは知らなかった。アリさんマークをじっくり見てみたら小さいアリさんが「汗」を流しながら働いていた。この会社の社員そのものの姿で、訴えた男性の元々の不満疑問は「事故・破損」は自己責任で莫大な借金が出来たことだ。もちろん超過勤務などは日常化されている。


🎬『M/村西とおる 狂熱の日々 完全版』片嶋一貴監督
1996年夏、50億円の負債を追った村西とおるは挽回するために、北海道で世界初となる4時間超のDVD用Vシネマと35本のヘアヌードビデオの撮影を同時にスタートさせる。しかし、その撮影現場は苛烈を極めてアクシデントも多い。難行する撮影は人間関係をも崩壊させていき……。
借金50億円、前科7犯という破天荒な人生で「AV界の帝王」の呼ばれ、武正晴監督、山田孝之主演のNetflixオリジナル作品「全裸監督」のモデルにもなった「村西とおる」のドキュメンタリー。始めにかの有名な黒木香さんが村西氏を褒めたたえるシーンだ。その他、片岡鶴太郎、西原理恵子、高須克弥さんたちから村西という人間の本質をコメントしている。このコメントしている個性的な方々を束にしても村西氏の破天荒な個性にはかなわない。


🎬『草間彌生∞INFINITY 』ヘザー・レンズ監督/アメリカ

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世界的に活躍する日本人アーティスト・草間彌生のドキュメンタリー映画。以前ドキュメンタリー映画で『≒草間彌生 わたし大好き』が公開されたが、ヘザー監督作品は草間彌生の半生をいろんな角度から追っている。
幼い時代の家庭環境、日本を飛び出しアメリカ・ニューヨークに行くまで、ニューヨークでの生活、一方的惚れられた逸話など初めて聞いたり見たりのことばかりで草間彌生さんの多面的な人生と突出した個性を知ることができた。当時の世間の風は冷たいものだったと想像できる。でも彼女にはそれをはねつけるエネルギーとその反対の「魅力ある女性」の両面に、女性監督ヘザー・レンズさんが惹かれたのではないだろうか。★女性監督賞


🎬『だってしょうがないじゃない』坪田義史監督
精神に不調をきたし、不安を感じた坪田義史監督が親族に相談したところ、広汎性発達障害で一人暮らしをしている叔父・まことさんがいることを知って、衝動的にカメラを持って会いに行く。それから三年……。まことさんのありのままの姿にふれていく中で「親が亡くなったあとの生活」「障害者の意思の尊重」などの問題に直面していく。
監督さん自身、障害を抱えながらも叔父さんの日常を優しくカメラを向けていた。無垢な純真さを持ち続けて生きていく辛さは確かにあるが、まことさんの表情に「幸せの光」がさす瞬間に感動した。★編集賞


🎬『ヒトラーVS.ピカソ 奪われた名画のゆくえ』クラウディオ・ポリ監督イタリア、フランス、ドイツ
1933年から45年にかけて、ナチスドイツがヨーロッパ各地で略奪した芸術品の総数は約60万点以上。戦後70年経った今でも10万点が行方不明と言われている。なぜヒトラーは美術品略奪にエネルギーを注いだのかを、歴史家、美術研究家、略奪された美術品の相続人、奪還運動をする関係者の証言を集め、奪われた美術品が歩んだ道をたどるドキュメンタリー。案内人はイタリア映画界の名優トニ・セルヴィッロ。
このドキュメンタリーはとても事細かく、当時の事情、特にヒトラーとヒトラーの右腕的存在だったヘルマン・ゲーリングの美術品の取り合い競い合い、奪った絵画の展示「大ドイツ芸術展」と「退廃芸術展」の顛末が描かれている。


🎬『氷上の王、ジョン・カリー』ジェイムス・エルスキン監督/イギリス
アイススケートを芸術の域にまで上げた伝説のスケーターのジョン・カリーは1949年9月9日、イギリス・バーミンガムで生まれた。人並みはずれた身体能力や個性的な振付で1971年と1973年〜1976年までの間、全英チャンピオンに輝いた。バレエの要素を取り入れた演技で1976年のインスブルック冬季五輪フィギュアスケート男子シングルの金メダルを獲得した。だが、マスコミが真っ先に伝えたのは彼の同性愛のことだった。
氷上の演技シーンをたっぷり魅せてもらった。素晴らしいの一言。今ではもっともっと高度な技術が出ているし、これをやると得点が上がるとかいわれる得点第一主義になっているが、「芸術の高みと安心して見ていられる」のは、この人以外にいないと思う。今、トップレベルで活躍する振り付け師の大部分の方がジョン・カリーの影響を受けているといわれていて、浅田真央さんの振り付けを手掛けていたローリー・ニコル氏も19歳からカリー率いるカンパニーに入っていた。真央さんの芸術性も頷ける。

その他に★『葛根廟事件の証言』の田上龍一監督に新人監督賞
posted by ミッキー at 11:36| Comment(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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