昨日は1時間半ほど歩いて娘アパートに戻り昼寝をしてから「文藝春秋」の11月号をパラパラ見ていたら『真実』の是枝裕和監督の「カトリーヌ・ドヌーブは樹木希林さんに似ていた」が載っていた。『万引き家族』も『真実』も好みでないし、カトリーヌ・ドヌーブさんも樹木希林さんも好きな女優さんではない。けれど、目休め日でもこれだけは読んだ。
俳優さんたちの話は想定内だったが、撮影環境が日本とフランスでは大いに違い、ランチ時間を入れて朝10時から準備して7時半まで。次始まる時まで12時間開けなければならないという決まりがあると書いてあった。土日は土曜日が2倍の、日曜日は3倍のギャラを払わないといけないとも書いてあった。
カトリーヌ・ドヌーブさんと樹木希林さんの似ている点は細かくは記されていなかった。お暇があれば立ち読みでどうぞ、といったところだ。
🎬『誰が撃ったか考えてみたか?』(仮題)トラヴィス・ウィルカーソン監督/アメリカ/90分/インターナショナル・コンペティション
監督さんの曾祖父が1946年にアラバマ州のドーサンで黒人の男を射殺する事件を起こした。
これまで家族、親族の間でも隠されていたが監督は古い新聞記事を基にして、忘れられてしまったような忌まわしい過去を掘り起こして、現代社会やこの地域の集団的差別の実像を追っている。
公式カタログに監督さんの言葉が載っている。「私の家の汚点を、挑発するために作ったのではなく、自虐のために作ったのでもない。曾祖父・SE・ブランチがやったことは「間違っていた」と正直に認めることだった」と、書いてあった。
ナレーションをつとめる監督さんの口調も冷静で、聞きようによっては他人事のように感じる時もあった。しかし、周りの親族に与える影響は、70年以上たった今でも生々しく傷口がえぐられていく。
事件そのものは「正当防衛」で無罪となった事件だったが、解かれていく内容の「殺人者だった曾祖父」の隠れた歴史、隠れた顔があぶり出されていた。
★作中に『アラバマ物語』が何回か映し出される。グレゴリー・ペック演じる弁護士アティカスと監督さんの思いが一致する意図があったのだろう。
🎬『ラ・カチャダ』マレン・ビニャヨ監督、脚本、撮影、録音/エルサルバドル/81分/インターナショナル・コンペティション
エルサルバドルの露店で物売りをして生計をたてているシングルマザー5人が演劇のワークショップに参加。それが終わってから講師と共に「ラ・カチャダ」を立ち上げた。露店の売り子の合間にリハーサルを重ねていくうちに自分たちの生活や悩みに向き合うことになる。
監督さんはちょうどこのドキュメンタリーに出てくる5人のと同年代だ。ずっと暗い事件や見につまされるドキュメンタリーの中にあってこの作品は苦労もその苦労を思い出して泣く場面はあるが、みんな元気で今を生きている。
そんな中で「売り子が女優をやってると言われるより、女優が売り子をしている!」と言っていた言葉が印象的だった。
2019年10月19日
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