家族で田舎町を移動して遊園地を開く一方で、肉を移動販売することを始めたヤニ。
植物由来のたんぱく質の開発で食生活と環境に改革をしようとヘルシンキで企業を立ち上げる女性・マイヤとレッタ。
2組の起業の仕方や生活の相違をあぶり出しているドキュメンタリー。

ヤニの一家は母親と長男と10歳くらいの娘がいる。兄は高校生ぐらいだが父親の手助けをいていて「今度から商品の並べ方をお前に任せるから売れるように工夫してみろよ」と言い、娘にも「お前もそろそろ何か責任持つ役割を見つけないとな」と親子関係がとても自然で感心した。しかし移動のお肉屋は営業が不振で困っている状態だ。
一方、大企業とまではいかないが、マイヤとレッタは中国との取引や出資の件でよく口喧嘩をしている。「どうしていつも命令口調なの」「次にやることの指示待ちばかりで私の負担がどんどん増えていくのがわからない?」等々、会社を軌道に乗せるには多難であることがわかるだけに見ていて辛かった。
どっちが幸先きがいいのかわからないが、家族関係が好いヤニ一家が今、どんな風に暮らしているかと思いを馳せた。
🎬『空に聞く』小森はるか監督/73分/日本プログラム
東日本大震災後ほどなく陸前高田災害FMラジオで独自にパーソナリティーをした女性・阿倍裕美さんを追っているドキュメンタリー。
穏やなお顔立ちやお声で登場した阿部裕美さん。どこを見てもパーソナリティーをする勢いやエネルギーが感じられない。FM局(といってもプレハブ小屋のようだ)の窓からは町の様子は津波で押し流されて野原一面にポツリポツリと復旧の兆しが見える。
それを見て「ここからの景色を最初から毎日撮っておけばよかった」と呟いていたのが印象に残った。祥月命日に11日の黙祷も続けていた。
映画の終わり近くで、この方は飲食店を経営していた女将さんだった! これもイメージが結びつかない。いや本当に意外だった。再開した飲食店の時と大震災前の女将さんの違いがどんなだったか想像したが出来なかった。
今年のドキュメンタリー映画祭は演出された作品が多く感じたが、この作品はその真逆で、それがとても新鮮に感じ