イタリアのさびれた海辺の町で「ドッグマン」という犬のトリミングサロンを細々と経営しているマルチェロ(マルチェロ・フォンテ)。彼の手にかかると獰猛な犬もいうことをきくので、仕事も順調で離婚した妻や娘とも交流があり、それなりに幸せな生活だった。
彼自身は温厚な上、小心者で近隣の仲間たちと酒を酌み交わしたり、サッカーを楽しんだりしていた。
だが、麻薬常習の友人シモーネ(エドアルド・ペッシェ)の暴力的な関係から抜け出せず利用され続けていた。
ある日、シモーネから持ち掛けられた儲け話を断り切れず手伝ったために、近隣の仲間たちの信用とトリミングサロンの顧客を失ってしまう。
元の平穏だった日常を取り戻すためにマルチェロは、ある行動に出るが……。
『ゴモラ』のマッテオ・ガローネ監督による新作。今年5月ゴールデンウィークのイタリア映画祭でいち早く公開が決まっていて、公開するならと映画祭では観なかったのだ。今思えば観ておくべき作品だった。
映画の始まりは、牙のような歯を剥き出して吠えている犬の大写しでおどろかされたが、そんな獰猛な犬をなだめ透かしてシャンプーをしている。町のワンちゃんヘヤスタイルのコンクールで表彰されて娘と喜んで写真を撮っているシーンもある。
だが、近隣の男に嫌われているシモーネからの悪だくみの誘いも徹底して「NO」と言えない気弱さを見抜かれ、人生をめちやくちゃにされる。我慢の限界にきたマルチェロのとった行動は・・・。
これ以上は書けないが理解できるかと問われたら「理解できない」としか答えられない不思議な展開をする。ワンちゃんには辛いシーンはないのでそういう点ではご心配なくご覧いただける「ぞわぞわ・ムービー」。
★第71回カンヌ国際映画祭主演男優賞、パルム・ドッグ賞受賞。ダヴィッド・ディ・ドナテッロ賞作品賞、監督賞を含む9部門受賞。