巨匠ルノワール監督は大好きな監督で、当時封切りされた日に友人と観に行って大感激したが、横のお連れさんはほとんど居眠りしていたので「それからは絶交して一生口もきかなかった」と語っていた。映画愛が溢れすぎてけっこうキツイ仕打ちをする方だなぁと思ったが、映画の真髄にふれると無我夢中で話しかけてくださった。もちろん『河』は2回もみてしまったが、オマケでおおいに得した気分になった。
今日も暑いが頑張って公開初日の『鉄道運転士の花束』を観る予定だ。
🎬『鉄道運転士の花束』ミロシュ・ラドヴィッチ監督、脚本/セルビア、クロアチア/85分/名古屋センチュリーシネマにて
定年間近の鉄道運転士のイリヤ(ラザル・リストフスキー)は、その長い現役中に事故で28名を死なせてしまったという不名誉な記録を持っていた。そんなある日、孤児院から脱走した10歳の少年が線路に立ち入って自殺しようとしていた。どうにか直前で停止させたが、あまりにも思い詰めていたので内密に一晩だけ彼の家に連れ帰った。
それが縁で彼の養子になったシーマ(ペータル・コラッチ)も19歳となって学業も優秀な素直な青年に巣立った。
口は重いが優しいイリヤの職業・鉄道運転士になることを夢見ていたシーマだったが、イリヤの猛反対をうけて鉄道汽車の掃除係として遠方に行かされてしまうが…。
珍しいセルビア映画。笑っていいのか、悲しんでいいのか、戸惑いながら観た。
大きな事故の後には運転士にカウンセラーがついてケアするが、イリヤは事細かく事故の顛末を「6人の手足がバラバラになって、首が一つ引っかかっていてこちらにウィンクしていた・・・」などと話すものだから、カウンセラーが気がおかしくなるぐらいだった。
言っていることはむごいが、線路に入ったり、車が踏切でエンコしたりの事故は運転士としてどうしようもなく、それを乗り越えてこそ一人前の運転士という職場。
その「乗り越え」の苦しみを味わいさせたくないイリヤがシーマに運転士をさせない理由なのだ。しかし、ことの流れで運転士になったシーマは・・・絶対観て損はないと思うセルビア映画。ぜひ劇場にお出かけいただきたい。