パリ。サン・マルタン運河にそった下町。そこに北ホテルがあって、1階が酒場、上は下宿屋兼ホテルの作りになっている。お客は庶民的な人ばかり。今日はホテルの目前にある公園の番人の娘リュセットの初聖体のお祝いの日で一階はにぎわっている。話題はもっぱら血液を売る話で1リットル400フランだ、とか、金儲けで献血しているんではないとか本気になって怒る男もいた。場が険悪になると経営者女主人が「今日はお祝いの席だよ」といさめている。
そこに若い男女が泊りにきたがその二人は心中をしようとしていた。女主人は長年の経験で不吉な雰囲気を感じた。案の定、美しい女・ルネ(アナベラ)は胸をピストルで撃たれて病院に担ぎ込まれるが、男・ピエール(ジャン・ピエール・オーモン)は姿を消した。
それは、銃声を聞いて隣部屋の写真家の男エドモンド(ルイ・ジューヴェ)が入って来てピエールに逃げるように進めたのだった。
ピエールは死ぬ勇気がなく、翌朝警察に出頭。ルネも案外軽傷で命を取り留めていた。
その後、元気になったルネは北ホテル経営者夫妻にあいさつにきて、夫婦の進めでウェートレスとして住み込みで働くようになって・・・。
これは観ていないが、有名な映画とわかってDVDを買った。監督さんは『天井桟敷の人々』のカルネ監督。一人ひとりの人間を丁寧に描いている。
ホテル周辺の情景のすばらしさ、登場人物たちがどんな人生を送っていたかが手に取るようにわかるしぐさと言葉。それらが監督さんの優しさによって温かく描かれていた。
北ホテルは実際にあって、それをそっくり作って撮影したとDVDの説明文に書いてあったが、北ホテル周辺は今も観光名所でにぎわっているらしい。