第二次世界大戦後のフィンランド。帰還兵のトウコ・ラークソネン(ペッカ・ストラング)は自室で戦場で出会った男たちの逞しい姿を描き続けていた。同性愛が法律で禁じられていた当時、トウコには欲望を発散する方法が描くことしかなかったのだ。
そんなある日、妹のカイヤ(ジェシカ・グラボウスキー)から、広告の絵を描く仕事を紹介されて、たちまち才能を発揮。昼は広告、夜は作品作りに没頭する暮らしが始まる。
描くのは肉体労働者や兵士、それに加えて流行りのバイク乗りのファッションを取り入て進化させアンダーグラウンドの同性愛者コミュニティで支持されるようになる。その中にトウコの生涯の恋人となるダンサーのヴェリ・マキネン(ラウリ・ティルカネン)もいた。
トウコ・ラークソネンを調べてみた。
今から約百年前にフィンランドの小さな町カーリナで生まれ、両親は教師で芸術を好む家庭に育つ。
広告を学ぶためにヘルシンキの美術学校に入る。学生時代にフィンランド陸軍に召集され(時代から推し量ると「冬戦争」) 、この頃に男性と関係を持つ。
終戦後、美術の勉強を再開、イラストレーターとして活動する。それ以後はゲイ雑誌次々と作品を描き、徐々に名前が知られるようになる。
以上がトウコ・ラークソネンの前半分の人生。後半の人生は輝かしく世界的に有名になる様子が、今までのゲイ人生を描いたたくさんの映画とは違い解放感に満ちていた。
描いた絵はマッチョでエネルギーに溢れていたが、トウコ演じるペッカ・ストラング、理解と協力を惜しまない妹ジェシカ・グラボウスキー、生涯の恋人ラウリ・ティルカネンたちはそれとは裏腹に落ち着いた表情を捉えていた。その点で少し不満もあったが……観るに値する作品だ。
🎬『風をつかまえた少年』キウェテル・イジョフォー監督、脚本/イギリス、マラウイ/113分
2001年。アフリカの中でも最も貧しい国の一つであるマラウイに大干ばつが襲った。14歳の少年ウィリアム(マクスウェル・シンバ)は、飢饉による貧困で学費を払えなくなり通学を断念。ところが、図書館で出会った一冊の本が、彼の運命を変えた。
風力発電する風車を作り、乾いた畑に水を引くことを独学で思いついたのだ。だが、いまだに祈りで雨を降らせようとする村では、最愛の父トライウェル・カムクワンバ(キウェテル・イジョフォー)も農業にもっと身を入れるようにと言うばかりだった。それでも家族を助けたいと諦めずに説得して、次第に周囲を動かしてゆく……。
感動の実話。
監督さんは『それでも夜は明ける』で主演したキウェテル・イジョフォー。監督・脚本・出演を務めている。
電気もまともに使えなくて、テレビはなくて頼りはラジオ。それがつい20年前のことだ。世界には遅れている国や地域があることは頭ではわかっていても、この作品を観て「便利に暮らしていていつの間にか忘れていた」大切なことを思い出させてもらった。