2年前からうつ病に罹り、会社を退職。日々引きこもりがちな生活を送っているベルトラン(マチュー・アマルリック)。子供たちからも妻の姉夫婦からも嫌味を言われるので、どうにかしたいと思っていた。そんなある日、娘の通う地元の公営プールの水泳教室で男性シンクロ募集の張り紙を見て吸い込まれるように入部する。
メンバーは、妻と母親に捨てられた怒りっぽいロラン(ギョーム・カネ)、事業に失敗し自己嫌悪に陥るマルキュス(ブノワ・ポールヴールド)、プール従業員で内気なティエリー(フィリップ・カトリーヌ)、ミュージシャンになる夢を捨てられないシモン(ジャン=ユーグ・アングラード)など、皆、将来に漠然とした不安を抱えるおじさん集団だった。
元シンクロ選手のコーチ・デルフィーヌ(ヴィルジニー・エフィラ)の叱咤激励のもと、週2回のトレーニングに励む。
ベルトランは義理の兄(妻の姉の旦那)の世話で家具屋の店員に勤め始めたが、プールのトレーニングと仲間たちの交流が心の支えだった。そんな彼らが無謀にも「世界選手権」に出場しようと言い出して……。
これは今年6月に横浜で開催された「フランス映画祭2019」のオープニング作品。
日本にも2001年に公開された『ウォーターボーイズ』がある。あれは水もしたたる高校生だがフランスは「ウォーター・ミドルエイジ・メン」だ。各々事情を抱えながらも、プールで縦になったり横になったり、はたまた丸や四角になって浮いたり沈んだりと彼らの人生そのままを見せてくれる。
監督・脚本は俳優でもあるジル・ルルーシュ。単独初監督作品で実在するスウェーデンのシンクロチームの話が基になっている。水中から足を高く上げるシーン以外はすべて8人の俳優自身が演じている。その努力の甲斐あってお腹ぽっこりがだんだんとスマートになっていく。
⭐️何より嬉しいのはベルトランの奥様が皮肉など一つ言わず気長に夫を支えていたこと。
⭐️同じ実話を基にイギリス映画『シンクロ・ダンディーズ!』も9月に公開。