2007年の秋。東京郊外の東家の母・曜子(松原智恵子)は、離れて暮らす娘たちに電話をかけ、父・昇平(山ア努)の70歳の誕生に家族皆んなで集まろう誘った。
長女の麻里(竹内結子)は夫の転勤で息子・崇とともにアメリカに住んでいる。次女・芙美(蒼井優)は、スーパーで働いていて、カフェを開く夢も恋人との関係もうまく行かず、思い悩んでいる。
せっかくの母親の願いだからと日程を合わせて2人は1年ぶりに実家に帰ると、昔校長だった厳格な父が半年前からぼんやりするようになって、今ではすっかり認知症になったことを母親から告げられる。
中島京子の同名小説を『湯を沸かすほどの熱い愛』の中野量太監督が映画化。2007年から7年間、父親の認知症の変化と共に、妻、娘2人、そして孫も変化していく様子がゆっくり現実的に描かれていた。
もう30年以上も前だが連れ合いの父が認知症になってミッキーもよく横浜にいって義母の手助けをした。連れ合いの姉妹3人も頑張っていたが、やはり空きがあるなら病院にという話になり探している時に、義父は家から出てしまい大慌てになったことがあった。
ちょうど夏休みが始まったばかりで、その日に小さい娘たちを連れて名古屋を出て横浜の家についたのは夕方で、その時は「よく来たなぁ」と喜んでいた。そしてまもなくいなくなってしまい、手分けして探したが見つからずとうとう夜9時過ぎに警察に届けた。
娘たちを寝かせてからもずっと起きていたが12時過ぎた時にふいにかえって来たのだ。ランニングシャツにズボン、手拭いを首に巻いて下駄履きで出ていったままの姿で体中汗だらけだった。でも手には花火のビニール入り袋がしっかり握られていた。
義父は夏に娘たちといつも花火をして遊んでくれていたので馴染みの商店で買ってから迷ってしまったのだ。その時のことが思い出されてしんみりとしてしまった。
この作品は「時の流れ」を急がすことなく認知症が進む速度にあわせて周りの人をも丁寧に写している。
是非とも若い(中学生以上なら理解できるはず)方々に観ていただきたい作品。