共産主義下にある50年代のソ連。のちに世界中を熱狂させるダンサーとなるルドルフ・ヌレエフは貧しい家庭に生まれ、両親と3人の姉たちと共にタタール系の人々が多く住んでいたバシキール自治共和国(現バシコルトスタン共和国)の首都ウファに移住した。6歳の時にウファのオペラ座でバレエを見たルドルフはこれこそ自分の人生だと幼いながらに確信する。
軍人の父親は反対したが、母親の理解と協力で地元のバレエ教師に習い、17歳でヌレエフ(オレグ・イヴェンコ)はレニングラードのバレエ学校に入る。
その負けず嫌いの激しい性格は信念を通すためなら師事する教師を入学早々に変えたいとまで言い、ベテラン教師プーシキン(レイフ・ファインズ)は理解を示して自宅に住まわせ面倒を見る。環境の整った彼は、並外れた身体能力と強い意志によってまたたく間に頭角を現していく。
バレエ学校を卒業後、当時の人気バレリーナのナタリア・ドゥジンスカヤがルドルフをパートナーに指名したことからキーロフ・バレエ団に所属、1961年にバレエ団の一員としてパリで公演を行う。初めて見る西側の世界に刺激を受けるヌレエフだったが、その行動はKGBに逐一監視されていて……。
去年の東京国際で話題になった作品だ。六本木ヒルズ内で映画祭中にマスコミ関係だけの試写室のスケジュールがあって、そこでの席も早々と埋まってしまったので観ることが出来なかった。
この作品は東京国際で最優秀芸術貢献賞を受賞したが、監督賞も、いやグランプリだって取れるレベルの作品。
彼の人生、彼のバレエシーンを見事に演じたオレグ・イヴェンコ、同僚ユーリ・ソロヴィヨフにバレエ界の異端児セルゲイ・ポルーニン、フランスのダンサーでフランスの案内をかってでる男をアラン・ドロンの再来と呼ばれているラファエル・ペルソナ。その見事な顔ぶれで「芸術の深み」へと誘ってくれる。
⭐️映画中、一番印象深いのはルドルフの幼い時の民族舞踏シーンだ。ここで踊る男の子がまたすごいの一言で、単純な動きの中で躍動する姿が目に焼き付いている。