仕事を変えては住まいを転々とする父(トラヴィス・フィメル)とポートランドに越してきた15歳の少年チャーリー(チャーリー・プラマー)は二人暮し。父は息子を愛しているが自分のしたいことを優先している。
母はチャーリーが赤ん坊の時にいなくなり、面倒を見てくれていたマージー伯母さん(アリソン・エリオット)もチャーリーが12歳の時に父と大喧嘩して出て行ってしまった。
そんなある日、昼間、学校に行っていないチャーリーに競馬場厩舎オーナー・デル(スティーヴ・ブシュミ)からアルバイトを頼まれる。どんな汚い仕事も精一杯働くチャーリーにデルは賃金以外に腹一杯食べさせてくれて、女騎手のボニー(クロエ・セヴィニー)も競走馬ピートをかわいがる彼に「競走馬を愛してはダメ、ペットではないよ」と忠告してくれた。
そんな大人たちのおかげで生活に明るいきざしがさした頃、女性関係の諍いが元で父親が死んでしまう。と同時に結果を出せないピートの殺処分が決まる。
この時から彼はピートと共にあらゆる困難の場から逃げる。15歳の少年に「そこに留まれ」というのは酷だ。確かに辛いストーリーだが湿っぽくならない楽曲とアメリカ北西部の原風景と馬、そして少年の走る[=逃げる]姿の瑞々しさで深刻さは半減する。
第74回ベネチア国際映画祭でマルチェロ・マストロヤンニ賞(新人俳優賞)を受賞したチャーリー・プラマーを是非とも劇場で見守っていただきたい。
⭐️数多くの映画を観てきて「この新人はきっと成長するぞ、注目していこう」と感じることがまれにある。この作品で主役を演じるチャーリー・プラマーがその人だ。アンドリュー・ヘイ監督は何百人のオーディションの末に彼の繊細さと感受性、そして目にやどる感情の揺れを見抜き抜擢した。
⭐️監督さん前作は『さざなみ』、チャーリー・プラマーは『ゲティ家の身代金』で誘拐された孫を演じている。