1968年イギリス。ヨットによる単独無寄港世界一周のゴールデン・グローブ・レースが開催された。輝かしい経歴を誇るヨットマンたちが参加する中で、航海計器を扱う会社を経営するビジネスマンのドナルド・クロウハースト(コリン・ファース)が参加すると名乗りをあげた。
レース用のヨットも持っていないアマチュアだが、物珍しさもあってスポンサーも現れ、周囲の期待を受けてドナルドは妻クレア(レイチェル・ワイズ)と子供たちを残して出発。
だが、彼を待ち受けていたのは、厳しい自然と耐えがたい孤独、そして予想もしなかった自分の行動だった……。
これを観て、ずいぶん前に箱に風船を括り付けて空高く飛んで行った男性を思いだした。風船おじさんよりはうんと知識や覚悟はあったと思うが、赤字経営の会社をこのヨットレースで宣伝して再起を図りたい強い気持ちと、「やめたい」と思っても引っ込みがつかない男の意地というものが見え隠れしているようにも感じた。
ヨット部品の技術者であり経営者で多少の経験があっても、レースの厳しさを甘く見ていたのは否めない。観ていて無謀さにハラハラしたが家族ならなおさらだ……妻は今なら止められると何回も口にだそうとするが、夫の「あとに引けないだろうプライド」に沈黙してしまう。
彼には2人の男の子がいた。映画の始めのヨット用品展示会場では実践販売して父親に協力していた良い子たちだった。そして出航が近づくにつれて父親が徐々に焦りが出てきて近寄り難くなって来る。家族の心配や苦労が手に取るようにわかった。
コリン・ファースさんのファンからすれば、観たぁ〜いけど、観たくない作品でもある。