ブエノスアイレスに住む88歳の仕立屋アブラム(ミゲル・アンヘル・ソラ)は、子どもたちに自分の家を処分されて、自分は設備の整った養老院に入れられると決まったが、そんなことおかまいなく大金を持って、故郷ポーランドへと黙って一人旅を決行した。
ポーランドへ行く目的は、戦時下にユダヤ人である自分を救ってくれた友との再会と約束を果たすためだった。
パブロ・ソラルス監督の祖父の前では「ポーランド」という言葉が禁句だった。そのことが心の隅に引っかかっていた監督は、ある日、喫茶店の隣り席の話「ナチスから自分を救ってくれた恩人に会いに90歳の祖父がハンガリーに行ってめでたく会えた」という感動の話を聞いたのがきっかけでこの作品が出来上がった。
老人のひとり旅は「ここからドイツの地を踏まないでポーランドに行きたい」と旅行社に言って笑われたり、言葉がうまく通じなかったり、大金を盗まれたり、病気になって入院したりと、生きて目的の地や逢いたい人にたどり着くのかとハラハラさせるロードムービー。
最後の3分……いまでも思い出す感動の幕切れだった。
⭐️宿屋の女主人にアンヘラ・モリーナさんが出ていた。ちょっと意地悪な中年女に見えたが心は熱くアブラハム爺さんに適度に手を差し伸べてくれる。ミッキーはこの女優さんの『靴に恋して』が記憶にある。
高級官僚の妻だが夫婦仲は悪く、いつもその痛みを忘れるためにワンサイズ小さい靴を履いているという哀しい女を演じていた。『靴に恋して』も『題名のない子守歌』(どの役で出られたかは忘れたが映画はとっても良かった)もDVDで観賞してみたい。