幼い時から将棋 ひと筋で生きてきたしょったんこと瀬川晶司(松田龍平)は、「26歳になるまでに四段になれない者は退会」というプロ棋士養成機関・奨励会の規定によって、人生の目標を失ってしまう。
「しばらくゆっくりしろ」という父親に甘えて実家でボォーッとしていたが、気をとりなおしてなんとか就職もできた。そんな時、優しく応援してくれていた父親(國村隼)が急死して……。
周囲の人々の薦めや協力で、史上初めて奨励会退会からプロになった瀬川晶司五段の奇跡の実話を描いている。
音楽の世界もピアノやバイオリンを5歳前から親子一体で英才教育している姿をたくさん見てきたが、子に自我が出てくると親の力だけでは二進も三進もいかなくなる。それを思うと将棋の世界は本人が「好き」と「結果」が先に進む条件だ。
そんな勝ちと負けがはっきりしている将棋も、その度に「なぜ、負けたのか」を突き詰めるのはしんどいだろう。
瀬川も若い時は自分のアパートに奨励会のメンバーが集まってきてワイワイと賑やかにやっていたが、年齢近くなるとそうもいかず、ミッキーもハラハラして落ち着かなかった。
印象深かったのは、瀬川と対局したことのある、奨励会を去った冬木(妻夫木聡)とアマチュアの強豪(小林薫)が、「瀬川くんはいい人だ。気持ちの良い将棋がさせた」と礼を言っていた。その言葉を聞いて将棋のことなど無知なミッキーだが、奥深い人間的な世界と感じた。