東京の下町の隅田川に面した貧民街。そこにある若水医院は、老院長・若水甚作の温厚な人柄で貧しい住民から慕われていた。娘のおヤエも看護師として父の助手をテキパキとこなしていた。
しかし、年老いた父も他界。おヤエは看護師の免許だけで患者さんを診るわけに行かず廃業して故郷の福島に帰ろうと思っていた。ところが何かと頼りにしている患者さんたちから「お願いですから医者を続けて下さい」と言っておヤエを困らせているところにフグ中毒にあたったと往診を頼まれて……。
🎬『おヤエの初恋先生』春原政久監督/57分/1959年/モノクロ
東京近郊の高校にヤエ子は新しい体操教師として赴任した。全校生徒が整列している壇上にトレパンに鉢巻という勇ましく姿で立ったヤエ子に生徒は大喝采。
受け持たされたのは三年B組で問題児をかかえるクラスだった。特に前任の先生をノイローゼにした5人がその中心で、体育の授業なのに大声で歌いながらダンスを踊っていた。
よくよく理由を聞いたら「5人は今日限り学校を止めて、家の手伝いをする」と言うのだ。校長を始め教師たちは5人がいなくなるのでホッとしているありさま。
先の水害で大きな被害が元で生活ができなくなったのが退学の理由だが、ヤエ子は校長と掛け合ってアルバイトを許可してもらい、ひとまず学校を続ける方向になったが……。
補助椅子が出るほどの人気ぶりだった。ズーズー弁とクルクル回る目で、いつも元気づけてくれる若水ヤエ子さん。もぐり医者では父親のやっていた手術を手伝っていたのでメスさばきも確かで、最後は恋話もあって幸せそう。初恋先生は5人の生徒さんと気持ちが通じ、恋はグロークンハートに終わったが、どんな時でもその場で一番良い言葉でヤエ子の気持ちを正直に伝えている。