経済成長が著しいインドの北西部グジャラート州にある巨大な紡績工場。工事内部は大きな機械が並んでいて、機械を操作する出稼ぎ労働者たちの姿を映し撮っている。カメラは巨大な繊維工場の劣悪な環境で働く労働者たちの姿を捉える。
これは去年の山形ドキュメンタリー映画祭で観て、監督さんは祖父が紡績工場を所有していた家柄で、カリフォルニア芸術大学で映像技術を学んだ方。黙々と働く人々とは当然、身分の違う方。監督自身も「私がホテルで飲むワインの値段は、運んで来たボーイの1ヶ月分の給料」と言っていた。そういう国といいたかったのだろう。
撮影した工場は祖父のものだから、監督さんなら踏み込めない場所ではない。しかし労働者たちはそんなことなど知らない。
少ない賃金で働くしかない労働者、大人に混じって少年の面影が残る若者は疲れから居眠りしながら作業している。
改善しようとストを主導すれば消されてしまう恐怖のなかで、労働者たちは「俺たちを撮ってどうする?上にかけあって12時間労働を8時間にしてくれるよう言ってくれ、言ってくれるなら俺たちはなんでも協力する」と口々に懇願されてドキュメンタリーは終わっていた。その終わり方は悪くないし監督に向けられた願いが簡単に叶うとは思わない。
インドの繊維工場の過酷な長時間労働を驚異的な音響と映像美で描き出しているドキュメンタリー自体は撮影技術といい、照明といい、音声音響の整音がしっかりしていた作品だが、監督さんの両手に燦然と光る大きな指輪になぜか作り手としての傲慢さが漂っているように感じた。