モントリオールの小学校で、担任の女性教師が教室で首をつって自殺した。それも授業が終わり、帰るために生徒たちが運動場で集合しているさなかだった。ある子どもは現場をみてしまい、学校全体が動揺を隠せずにいた。
数日後、先生が足りなくなって困っているところに、校長室に突然訪ねてきたアルジェリア出身の中年男性バシール・ラザールを自己申告だけで、教員として採用することになった。
ラザールの指導方法は一風変わっていたが、生徒に真剣に向き合う姿勢に、生徒も周りの先生も少しずつ親しくなっていく。だが、ラザールには誰にもいえない秘密と深い傷を抱えていた。
新しい担任と生徒たちの交流を描いたほのぼの系作品かと思っていたが、最初のシーンからぞわぞわっと鳥肌がたった。教師ともあろうものが、なにも教室で、生徒のいる時間に、首をつらなくてもと嫌な気分になった。
これを見た子ども2人(シモンとアリス)がこの作品の鍵となるわけだが、なんとも言いようのない気持ちにさせられた。この気持ちを最後まで引き摺ってしまうのだが、ここまで書いて「オススメ作品」と言い切ってしまう私もなんだけど、観ていただきたい作品。
学校がてんやわんやの時にふらぁ〜っ(なんだかそう見えた)と「新聞の記事を読んで、僕ができることなら」と現れたのがラザール先生。「こんなタイプの先生いる、きっと、人生の辛苦を経験済みで親身になってくれそう・・・」などと思ったのは校長先生ばかりでなく、ミッキーもそう思った。
だが、このラザール先生の自己申告だけで、意外に簡単に教師になれてしまう。
日本だって教師はともかくも、何年もニセ医者が診療していたっていうのがたまにあるから他の国を笑えない。
このアルジェリア難民で異文化のラザールの抱える事情と、若い女教師自殺の原因が分かってくるにしたがって、私の苛立ちも半分氷解した。
※男の子シモン(エミリアン・ネロン)と女の子アリス(ソフィー・ネリッセ)はケベックのアカデミー賞といわれているジェトラ賞で助演男優・助演女優賞をうけている。