田代壮介(舘ひろし)は東大を出て大手銀行に入ったが、出世コースから外れて子会社に出向させられ、そのまま定年になった。仕事ばかりの人生で趣味もない壮介は、何もすることがなく、途方にくれる。
このままではいけないと公園やスポーツジム、図書館に行くがみんな年寄りばかり。妻・千草(黒木瞳)は美容師として自分の店を持ちたいと希望に満ちていて、夫の愚痴など聞いてもらえない。
それなら、もう一度仕事を探そうと職業安定所に行くが、高学歴と立派な職歴が邪魔をして思うように仕事が見つからない。だったら勉強しようとカルチャースクールに行くと受付の魅力的な女性(広末涼子)と文学を通して親しく言葉を交わす間柄になって……。
結構ハイレベルな生活で、お金には困っていない。で、何が問題かと言えば「暇」の潰し方がわからないという、今どきお幸せな「終わった方」だ。
そんな男をホラーの中田秀夫が、ダンディの代表ともいえる舘ひろしさんを主役に、辛口ホームドラマを製作。原作の小説・内館牧子著「終わった人」に惚れ込んでの映画化。
ミッキーなら「壮介さんはかっこいい紳士なんだから、今から映画のエキストラでもやってみたら ?」と助言したいなど妄想していたら、この映画にはそんな方々がたくさん出ていた。
エキストラの平均年齢が65歳で、その中でも86歳の菅登未男氏は70歳からエキストラデビューしたという「終わったが、終っていない人」が大活躍。
壮介さんも、思わせぶりな女人に出会ったり、おだてられた( ? )末に責任を取らされたり散々だった……でも彼が完全に終わった人にはならずにすんだのは、やはり妻や友だちの関係がものをいった。
ホラー度は内容からして期待してはいなかったが、監督さんの名前を伏せて、たくさんの映画ファンに「この作品の監督さんは誰でしょうか ?」と聞いて、いったい何名が正解するかなと思った。