昨日、名古屋も久しぶりに大雨が降った。時間帯から土日しか観られない映画を今池シネマテークに行った。観たのは想田和弘監督の『港町』。
『牡蠣工場』の風景を撮るために、岡山県の牛窓の港町をふらふら歩いていた想田和弘監督は、耳の遠い漁師のワイちゃんやおしゃべりなお年寄りクミさんらに出会う。
ふっと眠くなったが寝癖がついているミッキーにしてはほぼ観ていた。小さな港町の住民たちの生活模様が静かな佇まいではあるが、人間の生き抜く姿が自然な中で映されていた。
ひとり暮らしのクミさんは「あっちに行けば神社がある」「明日は喫茶店に連れて行ってあげる」「干した魚を持っていけ」など盛んに監督さんに話しかける。
人のことばかり気になっているクミさんが、急に不穏なことを監督さんに打ち明ける……この場面で「誰も予期しない」ドキュメンタリーになっていく。
ドキュメンタリーは中心人物が命、だがカメラを、回してからでないと誰が中心になるかは見えてこない。その根気よさに映画の神様が微笑んだに違いない。
監督の初期の『選挙』『精神』、最近の『牡蠣工場』よりクミさんの告白で『港町』が忘れられない作品になった。