大企業に勤めているボリス(アレクセイ・ロズィン)と美容院を営むイニヤ(マルヤース・スピパク)夫婦は、12歳の一人息子アレクセイ(マトベイ・ノビコフ)がいるが、どちらにも新しい恋人ができて、離婚の話し合いが進行していた。
一人息子のアレクセイの処遇で両親ともが自分を押しつけ合っているのを聞いた息子は翌日から行方がわからなくなる。
第70回カンヌ国際映画祭で審査員賞を受賞したドラマで、米国アカデミー賞外国語映画賞にもノミネートされた作品。
アンドレイ・ズビャギンツェフ監督作品はすべて観ている。
『父、帰る』
家を出てから十数年ぶりに戻ってきた父と、父を覚えていない息子たちの人間ドラマ。
『ヴェラの祈り』
妻ヴェラが夫に「赤ちゃんができたの。だけど、あなたの子ではない」と告白される
『エレナの惑い』
初老の金持ち男性と再婚した看護士エレナは、夫から家政婦のような扱いを受けていた。彼女は実の息子の生活費をこっそり援助していたが……。
『裁かれるは善人のみ』
海岸一等地に住む自動車修工場経営の男は、横暴に土地買収を進める市長に立ち向かう。
そして新作の『ラブレス』。やりきれない思いで観終わった。
この夫婦は中の上ぐらいのレベルの生活をしている。父親には妊娠中の恋人がいて、彼女には3歳くらいの連れ子もいるようだ。母親には娘が外国で暮らしている孤独な男が恋人だ。もちろん金持ちである。
この妻や夫の恋人は男に対して「幸せにしてね」という願望がとっても強い。息子が行方不明になって2日目に学校から「昨日も今日も来ていない」の電話で、始めていないことに気付く有様だ。
今までの4作品も辛い内容であったが「やり切れなさ」はなかった。
父親の方は、子を探すうちに「自分の選択した第2の結婚が本当に幸せに向かうのだろうか……」と不安げな表情を垣間見せたのが唯一、良心の表れだった。