中国北方の炭鉱の村で鉱山労働者の張保民(ソン・ヤン)の息子が行方不明になってしまった。張はある事故によって耳は聞こえるが話すことができない男。彼はわが子を捜し求めるうちに、この失踪事件が違法採掘をしている鉱山主と深く関わっていることを突き止めるが……。
素晴らしい作品だった。是非、公開してほしい。主演の男の目力、彼の家庭の状況、悪辣な鉱山主とその手下たちの行動から一瞬も目が離せなかった。
きっとこんな風に終わるのか……と想像していたものではなかった。
☆喧嘩が強い男だから生傷が絶えないが、その治り具合が非常に適切かつ自然だった。これはアカデミー賞メーキャップ部門級。
☆日本語字幕で、仏事の後に出る料理のお下がりを「お斎(おとき)」と記してあった。日本人でももうお年寄りしか使わない言葉だが、この中国映画にはぴったりの日本語字幕だった。担当者のお名前(かなこ というお名前だけおぼえているが)を書き留めた紙を紛失したのが悔やまれる。
🎬『ライスフラワーの香り』ポンフェイ監督/日本初上映/中国未公開作品
葉楠(イエー・ナン)は長年の出稼ぎから、雲南省とミャンマーの国境にある故郷に戻った。年老いた父親と13歳の娘の面倒を見るためだったが、娘の感情が読み取れないもどかしさもあって母娘の間はギクシャクしていた。
娘は学校の成績もよくなくて、行動も問題ありで、とうとう友だちの女の子とお寺の賽銭箱からお金を盗んだとして警察沙汰になる。
連れの女の子は重い病気に罹って倒れてしまう。村人たち悪霊に取り憑かれたと信じて、悪霊を退治するために山神の指示に従う。
たおやかな女性が主人公。村には両親が出稼ぎで寂しい思いを抱えている子らがたくさんいる。葉楠は背がスラリとしていて理知的な美人だから「街で人に言われない仕事をしていた」などと陰口を言われていたが、年老いた父親は常識のある人で、娘もはじめこそ、つんけんしていたがやはりお母さんが帰ってきたことが嬉しそうだった。
村の風習、習慣が丁寧に写し撮られていて、緩やかに過ぎゆく時の流れを感じさせてくれた。
☆シドニーに住む娘の会社でも中国の人は1年間手元で育てて、その後は中国の祖父母に育ててもらうようだ。娘は不思議がっていたがそういう風習が色濃く残っているのだろう。