第2次世界大戦の戦況悪化でウイスキーの配給が廃止となったトディー島の住人たちはひどく落胆していた。
郵便局長のジョセフ(グレゴール・フィッシャー)の長女ペギー(ナオミ・バトリック)と次女カトリーナ(エリー・ケンドリック)はそれぞれ恋人がいて、結婚したいと思っていたが「ウイスキーがない結婚式など出来っこない」と周りから言われて気落ちしていた。
そんなある夜、島の近くで霧と嵐で貨物船が座礁。その中にウィスキーが5万ケースもあって……。
静かだがユーモアたっぷりで味わいのある作品だった。そんなにウィスキーって美味しいのだろうか。お酒にはとんと縁のないミッキーには出てくる人たちの右往左往ぶりが大袈裟のように感じた。
村民のほとんどが協力して知恵を出し合って、座礁した船からウィスキーを盗み、島の至る所、自分たちの家に隠していて、誰もいないところでこっそりと、「クィーッ」と飲んだ後で、口から息をカーッ出す様子がおかしくておかしくて、その度に笑ってしまった。
ラーメンの映画を観たらラーメンが食べたくなったが、美味しそうに飲むウィスキーばかりは飲みたくはならなかった。
時折聴こえてくる音楽がとても気が利いていて、島の雰囲気とウィスキーの味わいにぴったりな曲だった。
これは実話。最後の字幕で「撮影中にお酒は飲んでいません」と書いてあった。会場の方々は声をあげて笑っていた。
🎬『サニー/32』白石和彌監督/110分/ミッドランドスクエアシネマ2にて
雪が降る新潟のとある町で、中学校教師・藤井赤理(北原里英)は、24歳の誕生日の夜に自分のアパート前で、見知らぬ男2人に誘拐される。
その見知らぬ男は柏原勲(ピエール瀧)と小田武(リリー・フランキー)。山奥の廃屋に赤理は監禁されたが、自分のことを「2003年に工作用のカッターナイフで同級生の首を切って殺害した少女サニー」と言い張る。
彼らは赤理にピンクのドレスを着せ、サニーを神聖化する者たちからお金を取って、いろんな条件のもとで一対一の時間を過ごさせるが……。
監督さんはじめ脚本の高橋泉さんも、出ている俳優さんたちも、1人として力を出し切れていない。
「相乗効果」という言葉があるが、その反対の意味(どんな言葉か浮かばない)で、せっかくのものが台無しになっている。楽しみにいていただけに残念でたまらない。