これは1980年5月に起きた「光州事件」を背景とした実話に基づいて作られた映画で、ドイツ人記者を乗せて光州へ行った主人公のタクシー運転手が、軍隊が市民を武力で鎮圧している光景を目の当たりにして、記者と共に軍の追ってをかわして、世界に向けて真相を報道する内容。
始めこそコメディータッチだが最後にかけて「命がけ」の攻防戦だった。
試写が終わってから新宿に出て、リリー・フランキー主演の『blank 13』(13年前に蒸発した父親が、余命3か月の身体で帰ってきた家族の話)が観たかったが、満員札止めで、ちょうど名古屋のスコーレで観ようと思っていた『殺人者の記憶法』を観ることにした。
🎬『殺人者の記憶法』ウォン・シニョン監督/韓国/シネマート新宿にて
昔、殺人を犯したが捕まることもなかったビョンス(ソル・ギョング)はアルツハイマー病と宣告された。彼は愛娘と2人暮らしで小さな動物病院を経営していたが、猫に2度も薬をあげたせいで死なせたのを機に病院を閉めてしまう。
そんなある日、他ごとを考えていて、若者テジュ(キム・ナムギル)の車に追突してしまう。妙に落ち着き払った雰囲気と車から滴り落ちる血で、最近起きている連続殺人鬼と直感した。
ビョンスは警察に通報したが、テジュが警察の人間だったので誰もが笑い、まともに取り合ってくれなかった。
韓国の作家であるキム・ヨンハの小説を映画化した作品。
5月初旬公開『名もなき野良犬の輪舞』ではかっこいいヤクザを演じるソル・ギョングさん。目つきが鋭くてビシッとスーツを着た優男ぶりとうって変わって、この『殺人者の記憶法』では、初老の男でまだらアルツハイマーの「昔」の殺人鬼。同じ俳優さんとは思えない。お顔の長さも違うように感じた。
それに対して、今、殺人を犯している若者テジュ。彼の一見、温和そうな顔立ちの中にやどる不気味さも半端ではない。この方も『ワン・デイ 悲しみが消えるまで』とは別人のようだった。
双方ともに殺人を犯すようになった理由も解き明かされるが、記憶は消えても「殺す」ことを身体が覚えているという言葉に身震いした。