自転車とともに転んだ方は青年だったが起き上がるのに数分かかっていた。だれもいない夜道でミッキーは声をかけたが、声は元気で「大丈夫です。ブレーキがきかなくて」と言っていた。転んでいる道の中央までいけないので声がけだけだったが他人事ではないと思ってすごすごと帰った。
🎬『デトロイト』キャスリン・ビグロー監督/アメリカ
アメリカ・ミシガン州デトロイトで1967年の夏、大きな暴動が起きた。街は厳戒態勢になったが2日目の夜、州兵集結地の付近で銃声が鳴り響いたという通報が入った。
地元警備隊は通報のあったアルジェ・モーテルの別館に入るが、警官がモーテルの宿泊客に残酷な尋問をした。自白を強要された宿泊客たちは……。
1967年に起きたデトロイトの暴動を題材にした実録サスペンス。監督は『ハート・ロッカー』『ゼロ・ダーク・サーティ』のキャスリン・ビグローさん。
暴動の発端は警官が黒人青年を殴ったことから始まった。2日後の夜にモーテルで白人女性も入れてパーティを開いていた黒人の男が、日頃からの鬱憤を晴らすために警備に当たっている警察たちに向かって、窓からオモチャの銃をぶっ放したのが、この話の始まり。
モーテルの中の取り調べは屈辱的でまるでリンチだ。戦争映画の捕虜を拷問するほどの勢いだ。まさにこれは「人種差別戦争映画」と言える。
「今は当時のようなことはない」と言いきれないもどかしさも感じた。
☆『レヴェナント 蘇えりし者」『なんちゃって家族』のウィル・ポールターの成長ぶりが嬉しかった。
🎬『ロング、ロングバケーション』パオロ・ヴィルズィ監督/イタリア
元文学教師でまだらボケのジョン(ドナルド・サザーランド)と末期がんの妻エラ(ヘレン・ミレン)の結婚生活は50年以上だ。子たちはすでに独立している。
まだ身体が動く今の内に旅に出ようと愛車のキャンピングカーで旅に出る。最終目的地はジョンが大好きな作家ヘミングウェイの家があるフロリダ。
アメリカ映画だとばかり思っていたが、イタリア映画だった。監督さんは『人間の値打ち』のパオロ・ビルツィ監督。ひき逃げ事件をめぐって2組の家族をミステリータッチで描いていた。
新作は老夫婦のロードムービーで、行く先々の人間描写がさらっと描かれているが味わいは深い。
ミッキーもこのご夫婦と同年代だ。愛が溢れている眼差し、会話、いたわり合う肌の温もり、誤解や隠された嘘も暴かれるがそれも収まるという展開に「すべて、すべて夢物語」という反語の題をつけたい、ひねくれ者の私。
同年代が観るより若い方ならきっと「私たちもこんなご夫婦になりたい」と思う率は高いと思うが……。